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平成11年度入社式挨拶(要旨)

平成11年4月1日 三井不動産株式会社 代表取締役社長 岩沙 弘道

 日本は、これまでに経験したことのない資産デフレという局面を経験し、このことが不良債権の増加による貸し渋りや、多くの企業の業績悪化を招き、この業績悪化が賃金引き下げや雇用不安となって個人の消費を鈍らせ、また更なる業績の悪化を引き起こす、という悪循環を招いており、現状の日本経済は相当痛んでしまっているといえます。経済全体への波及効果が大きい住宅投資については、住宅金融公庫等の低金利や大幅な住宅減税措置などの要因により昨年以来、販売状況に明るさが出ているものの、経済全体としてはまだまだ予断を許さない状況にあります。

 我々をとりまく社会は、情報インフラの発展と相俟って、今後も一層グローバル化とボーダーレス化が進展するものと思われ、その結果としてグローバルスタンダードのもとでの競争は一層激しくなります。まさに社会に受け入れられる価値を創造したものだけが生き残ることができる、優勝劣敗の大競争時代が到来します。つまりこの時期こそ、我々が真のプロフェッショナルとして、力量を発揮できる、新たな飛躍のチャンスです。新しい価値基準に向け、我々は躊躇することなく変革していかなければなりません。

 こうした状況の中で、皆さんに求められているものは、ひとつは「顧客志向」であり、もう一つが「価値創造」です。顧客の評価こそが唯一、そして最終の評価です。従って、我々の提供するものに対価を払う顧客に対しては、顧客が求めているもの、つまりノウハウ、企画力、プロジェクトマネジメント力、資産の運営管理力といったものを、高い評価が得られるよう提供できなければならないのです。すなわち、顧客のもとめるものを先取りし、新たな価値を提案することが何よりも重要なのです。

 皆さんが活躍する21世紀は、右肩上がりの経済環境に恵まれ、過去の経験則・成功体験で乗り切れる時代ではありません。皆さんが若いみずみずしい感性を一層研ぎ澄まし、不動産のプロフェッショナルとしての素養を磨き、企業人・社会人として凛乎たる自己の確立に努めることを願います。そして当社の担っている社会的使命を自覚し、大いなる「志」をもって、明るく生き生きチャレンジし続けてもらうことを期待しています。