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「日本ビルファンド投資法人」上場にあたって

平成13年9月10日 三井不動産株式会社
代表取締役社長 岩沙弘道

 本日、当社が設立企画人として組成に向け尽力した「日本ビルファンド投資法人」が東京証券取引所の不動産投資信託証券市場へ上場し、我が国の不動産投資信託が名実ともにスタートした。

 このことは、国民の資産運用ニーズが高まる中、新たな金融商品として多様な運用先を模索する機関投資家だけにとどまらず、幅広く個人に対しても新たな運用機会を提供することとなりその意義は大きい。しかしながら不動産投資信託の真の意義は、今後流動性を持った投資証券としての取引が、優良な収益不動産と資本市場の資金を直接結び付け、不動産市場への投資の流動性を高め、近い将来には土地に付加価値を付けて収益力を追求する開発型プロジェクトの増加も促しながら、不動産市場全体の活性化や都市再生に寄与し、ひいては日本経済全体の活性化を後押しする重要なひとつの手段になるところにある。

 同市場をはじめとした不動産証券化全般に関する制度整備は、本日まで極めて速やかに進められてきたが、これはそういった観点から不動産投資信託を通じて不動産投資市場が健全で開かれた市場として再生することの国民経済的意義についてのコンセンサスが得られた結果と理解するとともに、関係各位におけるご努力ならびにご尽力によるものと考え、改めて感謝を申し上げたい。

 さらに、実際今回の上場にあたって募集がなされた新規投資口における個人投資家の方の割合は、想定していた80%を超えているとも聞いており、このことをもってしても、これらの意義に関して一定の評価が広く得られたものともいえる。

 不動産のパラダイムは大きく転換してきており、今後も所有とマネジメントの分離が加速する中で、私どもは自らの役割を不動産の価値を創り出すサービスプロバイダーと位置付けている。不動産投資信託の市場創設により今後は、稼動資産のアセットマネジメント・プロパティマネジメントをはじめ、未稼動資産を稼動させるデベロップマネジメント、コンサルなどの事業機会は飛躍的に増えていくと考えるが、当社はコンプライアンス・情報開示等の重要性に充分留意しながら、ファンドに対してより高いサービスを提供するということを通じて、新しい不動産投資市場の健全な発展・拡大に最大限の貢献が出来るよう努力していきたい。

 なお、不動産投信がその意義どおりの機能を充分に発揮するためには、市場規模を早期かつ健全に拡大することが喫緊の課題であり、それには何といっても税制上のバックアップが不可欠である。不動産取引に対する抑制的な税制全般を改めることはまずもって必要であるが、さらに幅広い参加が見込まれる個人投資家にとって、不動産証券化商品が他の金融商品に比べ税制上不利にならない措置を講ずることや、先行的に整えられた法制度についても実務に則した機動的見直しをしていくことが極めて重要である。

 以上のことから早急に不動産証券化を含む税制の見直しや都市再生策が実現していくことを改めて強く切望する次第である。