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03−08年度三井不動産グループ長期経営計画
「チャレンジ・プラン2008」策定についてのお知らせ

平成15年5月1日 三井不動産株式会社

〜はじめに〜

 当社は、2002年度までの3カ年間における「グループ中期経営計画」において経営資源の選択と集中を進めるとともに、顧客志向に徹した空間とサービスの提供に努めてまいりました。
 さらに、日本ビルファンド投資法人の上場に代表される、J-REIT市場創設への取り組みや、汐留シティセンターをはじめとした機関投資家との共同投資事業など、国内外の様々な投資家から資産を預かり、プロフェッショナルなノウハウやサービスを提供していくという、不動産市場のパラダイム転換を前提に描いてきた、新しいビジネスモデルを着実に実現してまいりました。
 「チャレンジ・プラン2008」は、この「グループ中期経営計画」において確認した経営の方向性をより明確にしたものであり、自らを不動産に関するソリューションとサービスを提供する「不動産ソリューション&サービス・プロバイダー」へ進化させることにより、「成長性と収益性に富んだ三井不動産グループ」の実現に向けて、さらなる飛躍をめざしていくものであります。

1.不動産ソリューション&サービス・プロバイダーへの進化

 パラダイム転換後の不動産市場では、「不動産の価値を高める知恵と力」が利益の源泉であり、また、この「知恵と力」が基点となって、国内外の有利な運用を求める資金が不動産と結び付き、不動産と金融が融合した新しいマーケットが拡大しています。今後さらに企業や公的機関による不動産売却が進むと予想されることから、この動きはますます加速するものと認識しております。
 このマーケットの新たな広がりを積極的にとらえ、オフィスビル、商業施設、住宅を利用・購入するエンドユーザーや不動産を所有するオリジネーターに加えて、投資家(インベスター)を顧客として明確に認識し、これら3方向の顧客に対して、「不動産に関するソリューションとサービスを提供する」ことにより、「継続的な利益成長」を遂げていくことが、本計画における我々のミッションであります。

2.2008年度に向けて目標とする経営指標(連結)

  2008年度計画 2002年度実績(参考)
売上高 1兆3,000億円 1兆824億円
営業利益 1,600億円 1,033億円
売上高営業利益率 12.3% 9.5%
営業キャッシュフロー 1,300億円 1,185億円
総資産残高 2兆7,000億円 2兆9,291億円
有利子負債残高 9,900億円 1兆3,972億円
ROA(*1) 6.0% 3.8%
D/Eレシオ 1.2 2.2

(*1)ROA=(営業利益+営業外収益)/期末総資産残高

3.計画達成に向けてのストラテジー

 「不動産ソリューション&サービス・プロバイダー」として求められる「知恵と力」を、顧客志向に徹した「マーケティング力」と「ネットワーク形成力」を基盤とした、「トレーディング力(*2)」、「デベロップメント力」、「マネジメント力(*3)」であると確認したうえで、以下に掲げる「顧客志向の経営」、「ビジネスモデルの革新」、「効率性の高いグループ経営」の3つのストラテジーを遂行するとともに、相互作用を生み出すことによって「継続的な利益成長」を達成していく考えであります。

◆「不動産ソリューション&サービス・プロバイダー」として求められる「知恵と力」

(*2)ここでいう「トレーディング力」とは、広く不動産取引を成立させる能力を総称しています。
(*3)ここでいう「マネジメント力」とは、企画開発、賃貸営業、運営管理などの、不動産事業の各段階での業務監理能力を総称しています。個別に、デベロップメントマネジメント、リーシングマネジメントプロパティマネジメントなどと呼ぶ場合や、これら複数を括ってアセットマネジメントと呼ぶ場合があります。

(1)顧客志向の経営

■顧客から高い評価を獲得し続ける「スーパー・パワー・ブランド」の構築

 オリジネーター、インベスターにソリューションや投資機会を提供するうえでも一番重要なのが、エンドユーザーに対するマーケティング力であるとの認識のもと、ビル、商業施設、住宅の各事業において、お客様の目線で見たあるべき姿を、「ブランドコンセプト」として打ち出し、より一層の顧客満足度の向上をめざした施策を展開してまいります。
 また、お客様をビジネスの創造ならびに進化・発展の基盤であると認識しており、ビルのテナント3,000社、商業施設のテナント1,000社、分譲・賃貸などの住宅事業で約50万世帯といった、大きな顧客ストックをベースに、本計画期間中には、ITを活用した顧客プラットフォームを構築し、グループの全事業を好循環に成長させる基盤を確立してまいります。
 さらに、オフィス、商業施設、住宅、ホテルなどの複数の機能と、文化、教育、健康、医療などの異業種が持つコンテンツを融合させ、グローバルなレベルで多様化・高度化する顧客ニーズに応え、資金や人材が好んで流入してくる「魅力溢れる新しい都市づくり」に取り組んでまいります。こうした取り組みは、既に汐留プロジェクトで成果を上げておりますが、六本木プロジェクト、赤坂TBSプロジェクトなどで大きく開花させていく考えであります。

(2)ビジネスモデルの革新

■トレーディング、デベロップメント、マネジメントの力を軸に、「非資本集約的なビジネスモデル」に転換

 自己資本を投じる「保有事業」については、量を増やさず質を高める一方、「開発事業」については、一般の住宅分譲に加えて、投資家向けに、オフィスビル・商業施設・賃貸住宅の分譲を拡大し、また、「マネジメント事業」については、インベスターやオリジネーターからマネジメントを託される預かり資産の増大を図ることで、非資本集約的なビジネスモデルに転換してまいります。
 具体的には、「共同投資型D&A事業(*4)」、「T&A事業(*5)」、「バリューアップ型T&A事業(*6)」、「投資家向け分譲事業」、「事業受託・定期借地による事業」など、100%自社保有にこだわらない事業手法を展開・強化することにより、「開発事業」、「マネジメント事業」にウエートをおいた利益成長をめざしてまいります。

(*4)D&A…デベロップメント・アンド・アセットマネジメント
(*5)T&A…トレーディング・アンド・アセットマネジメント
(*6)ここでいう「バリューアップ」とは、リニューアルやテナント稼働率の改善などにより、物件の収益力を向上させる行為を総称しています。

<主なプロジェクト実績>
  • 共同投資型D&A事業
    • 汐留シティセンター
      (シンガポール政府投資公社との共同事業。開発、管理におけるマネジメントを受託。)
    • 銀座並木通りビル
      (日立製作所年金基金との共同事業。開発段階からのアセットマネジメントを受託。)
  • T&A事業
    • 旧NKK本社ビル
      (日本ビルファンド投資法人への仲介ならびにアセットマネジメントを受託。)
  • バリューアップ型T&A事業
    • ランディックプロジェクト
      (機関投資家とプライベートファンドを組成し13棟の低稼働ビルに投資。バリューアップ後に売却。)
  • 投資家向け分譲事業
    • 中目黒GTタワー
      (開発後に日本ビルファンド投資法人へ売却。同時にアセットマネジメントを受託。)
    • パークアクシス四谷ステージ
      (開発後にプレミア投資法人へ売却。同時にプロパティマネジメントを受託。)
  • 事業受託
    • ガーデンエアタワー
      (日本貨物鉄道(株)より旧飯田町貨物駅跡地開発の一部を事業受託。)
  • 定期借地
    • 横浜ベイサイドマリーナショップス&レストランツ(横浜市から定期借地。)
    • 南青山一丁目団地建替えプロジェクト(東京都から定期借地。)

(3)効率性の高いグループ経営

■「より顧客志向で市場競争力のあるグループ組織の構築」と「ビジネスプロセスのリエンジニアリング」

 先の中期経営計画をとおして、グループの機能を資産保有とオペレーションに分離し、資産保有機能を三井不動産(資産保有子会社を含む)に一元化するとともに、グループ会社にオペレーション機能を集約し、より顧客志向に徹したものとしてまいりました。既に、賃貸住宅事業や商業施設事業における再編を完了させておりますが、オフィスビル事業についても、今上期中に子会社(株)エム・エフ・ ビルマネジメントを三井不動産ビルマネジメント(株)に改称した上で、当社からプロパティマネジメント機能を分離して同社に順次移管することにより、2005年度末までに業務の統合・再編を完了させます。

◆資産保有とオペレーションの分離

 さらに、再編後の当社グループが担うべき業務、グループ各社の役割分担も不断に見直し、必要な場合には、アライアンス、M&Aも実施して「最適なバリューチェーンの構築」を追求してまいります。今上期には、住友生命が保有するビルの管理業務を中心に行っている「株式会社いずみテック」を取得する計画であり、これにより関西地区・名古屋地区のプロパティマネジメント業務を強化し、不動産ソリューション&サービス・プロバイダーとして、全国レベルでプロパティマネジメントの展開を図ってまいります。
 もう一つは、進歩の著しいITの積極活用、これまでの雇用慣行にこだわらない多様な雇用形態・労働力の活用、1兆円を超える売上のスケールを発注・調達面で活かすなど、これまでの仕事の進め方を「リエンジニアリング」してまいります。これらの施策をとおして、現在のコスト構造を見直し、利益率の向上を図ってまいります。

〜ストラテジーの相互作用〜

 顧客志向を徹底し、エンドユーザーからの高い評価を得ることが、オリジネーター・インベスターにソリューションやサービスを提供する非資本集約的なビジネスモデルへの転換を支えます。また、非資本集約的なビジネスモデルへの転換が加速すれば、顧客からマネジメントを託される預かり資産は飛躍的に拡大しますが、これを直接的に利益の拡大に結びつけるのが、効率性の高いグループ経営です。さらに、効率経営の追求が新たなコスト競争力を生み出し、マネジメント事業の獲得機会を一層高めるといったように、この3つのストラテジーは、好循環に相互作用をもたらしながら「継続的な利益成長」を実現していくものと考えております。

◆ミッションとストラテジーの関係〜

5.利益成長のイメージ

 ミッションならびにストラテジーの遂行による利益成長を、「保有」、「開発」、「マネジメント」の各事業(*7)に分類すると下記のとおりとなります。

  • 「保有事業」
    資産を増やさず競争力とコスト効率性を高めることによる利益成長。
  • 「開発事業」
    インベスターやオリジネーターからの預かり資産を拡大することによる利益成長。
  • 「マネジメント事業」
    一般の住宅分譲に加えて、投資家向けにオフィスビル・商業施設・賃貸住宅の分譲を拡大することによる利益成長。
    ※2008年度末の預かり資産残高目標を、3兆円(2002年度末の2.5倍)としております。

<各事業の営業利益計画>

  保有事業 開発事業 マネジメント事業 その他
08年度計画 800億円 400億円 465億円 △65億円
02年度実績 650億円 319億円 221億円 △157億円
08計画/02実績比 +23% +25% +110%

(*7)「賃貸住宅のサブリース」「賃料保証に柔軟な考え方を取り入れたサブリースオフィス・商業ビル」「リパーク事業」は、会計上は賃貸セグメントに分類されていますが、事業の特性上ノンアセット的な色彩が強いことから、本計画においては、顧客から資産を預かり、ソリューションやサービスを提供していく「マネジメント事業」に位置づけています。よって、上表の各事業と会計セグメントの関係は以下のとおりです。
保有事業=賃貸セグメント−(賃貸住宅サブリース+リパーク+02年度以降に賃貸を開始したサブリースオフィス・商業ビル)
マネジメント事業=ノンアセットセグメント+(賃貸住宅サブリース+リパーク+02年度以降に賃貸を開始したサブリースオフィス・商業ビル)
その他=施設営業セグメント、完成工事セグメント、一般管理費ほか

以上

「チャレンジプラン2008」において、我々の目指す「不動産ソリューション&サービスプロバイダーへの進化」、ならびに昨今の社会、企業をめぐる動向や環境変化を踏まえ、「三井不動産グループのビジョン・ミッション」を改定いたしました。

本リリースで記述されている業績予想ならびに将来予想は、現時点で入手可能な情報に基づき当社が判断した予想であり、潜在的なリスクや不確実性が含まれています。そのため、様々な要因の変化により、実際の業績は記述されている将来見通しとは大きく異なる結果となる可能性があることをご承知おきください。

【「チャレンジ・プラン2008」不動産ソリューション&サービス・プロバイダーへの進化】
不動産ソリューション&サービス・プロバイダーへの進化(PDF:773KB)