三井のレッツコンサルタントだより三井のレッツコンサルタントだより

老朽化した賃貸マンションの将来設計老朽化した賃貸マンションの将来設計

Date:2014年9月号/執筆者:宮田 敏雄

B様(男性:60歳)からのご相談 B様(男性:60歳)からのご相談
母親(86歳)との共有資産である築25年・総戸数25戸の賃貸マンション
の将来設計に悩んでいます。建物が老朽化し、空室も出はじめている状況で、
今後に向けてどのような対策を実施するのが最適でしょうか。
母親にとっては想い入れのある資産ですので、
売却をしない方向で考えています。
コンサルタントからの回答 コンサルタントからの回答

築20年を超えた賃貸マンションに潜む様々な問題と解決策

近年増加し続ける住宅ストック、建物老朽化による空室の増加や賃料の下落、さらには復興需要、オリンピック需要による建築費高騰などを背景に、「古くなった賃貸マンションをどうすべきか?」というご相談が多く寄せられるようになってきました。

一般的には築20年を超えた賃貸マンションについては、 ①市場競争力の低下、②修繕費などの支出の増加、 ③設備の減価償却期間の終了などの理由で、キャッシュフローが悪化するといった様々な問題が発生してきます。

こういった老朽化した賃貸マンションが抱える問題に対する有効な解決策が、建替え、リノベーション、資産の組み換えという手法です。では、今回のケースをもとに、各対策のメリット・デメリットと事業性について検討してみましょう。

事業性や資産に対する想いまでしっかり考慮した対策を

まず、「建替え」については、老朽化という抜本的な問題の解決に加え、新たな減価償却費の計上、借入れによる相続対策、という観点では他の選択肢よりもメリットがあります。しかし、近年の建築工事費の高騰により、事業性としては低い結果となりました。

また、工事着手までの大きな問題として立ち退き対応があります。原則、立ち退きには 「正当事由」が必要で、「老朽化」という理由だけでは正当事由には該当しません。そのため、相応の立ち退き料が必要になるケースが多いのが実情です。また、最後の一軒が退去しないと工事がスタートできないため、その間、空室部分の賃料収入はありませんし、工事期間中も収入は得られません。このように、単なる事業収支の観点からは見えない部分についても十分な検討が必要となります。

次に「リノベーション」については、物件の状況と将来の事業期間をしっかり見すえた工事内容を検討することが非常に重要になります。今回のケースでは、室内の大規模な改修とあわせて、共用部分の大規模修繕とバリューアップ工事も含めた工事費を想定しています。リノベーションは躯体部分を活かしますので、投資金額を抑えられ、建替えより高い事業性となりました。

また、リノベーションは、建替えと比較して、無収入となる工事期間が短くすむメリットもあります。空室を工事し、入居者に改修後の部屋へ移っていただき、空いた住戸を工事する、という建物内住み替えをおこなうなど、入居者が居ながらでも工事できる方法もあります。そして、何よりのメリットは、想い入れのある資産を再生する、ということかもしれません。

なお、昭和56年以前に建てられた物件では、耐震補強工事が必要となるケースがあります。工事の方法によっては、専有部が狭くなったり、入居者に一時退去をしていただくか、または他の空室に移動していただく必要がありますので注意が必要です。

最後に、今回のケースでは検討しませんでしたが、ご所有資産を売却し、新たな資産に組み換えるという方法も考えられます。資産そのものを新たな資産へ組み換えれば、事業性の向上や立ち退きの心配もないというメリットはあります。しかしながら譲渡税の負担や、何よりも愛着ある資産を手放すというデメリットもあるので慎重に判断する必要があります。

それぞれの対策のメリット・デメリットを把握することが大切

このように、老朽化資産の具体的な対策を検討するには、収益性だけでなく事業リスクなども十分考慮して比較検討する必要があります。また、賃料相場や都市計画上の制限などの立地条件や、対策後の事業期間によっては建替えや資産の組み換えのほうが有効となるケースもありますので、老朽化資産の今後を検討される際は、ぜひレッツにご相談ください。

※本記事は2014年12月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

宮田 敏雄
三井不動産(株) レッツ資産活用部 宮田 敏雄
2011年三井不動産入社。レッツ資産活用部では、前職でのリノベーション分譲事業の経験を活かし、老朽化不動産全般を主に担当。老朽化分譲マンションの建替え事業や老朽化賃貸不動産のリノベーション、コンバージョン事業を得意とする。

コンサルタント紹介

ページの先頭へ