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相続対策での認知症のリスク相続対策での認知症のリスク

Date:2015年5月号

D様(男性:60歳)からのご相談 D様(男性:60歳)からのご相談
父親所有の自宅不動産を利用した相続税節税対策について
検討したいと思っていますが、父親が現在88歳です。
身体は元気ですが、最近はもの忘れが激しく、認知症も心配です。
相続対策を検討するにあたって認知症はどのように関わってきますか?
注意点を教えてください。
コンサルタントからの回答 コンサルタントからの回答

確実に増加する認知症

厚生労働省の推計値によりますと、全国で認知症を患う人の数は、2025年には700万人を超えるそうです。これは65歳以上の高齢者の5人に1人という数字です。今後さらに増加していくことが予想されます。そのため、厚生労働省も認知症対策を急いでいます。さて、お父様の相続対策を検討されているD様にとっても、もちろん他人事ではありません。いつお父様の認知症が発症してもおかしくありません。今回は、D様のご相談事例をもとに相続対策における認知症に対しての注意点と考え方を整理してみました。

相続対策における認知症リスクとは

相続対策を検討、あるいは実行している段階で、本人が認知症になってしまうと、必要な各種契約行為ができなくなります。これは、意思能力が十分でない方との契約は、無効になるリスクがあるためです。しかしその場合でも、成年後見制度を利用すれば、本人に代わり後見人が財産を管理し、代理で契約行為をおこなうことができるため、対策を進めていくことが可能です。 ただし、当初予定していた対策の見直しが必要となることでしょう。それは成年後見制度は、家庭裁判所の関与が強く、各種手続きに時間がかかることや、そもそも本人のためにならない相続対策、売却・賃貸等が制限される可能性があるためです。これにより、対策の内容やスケジュールを変更し、予想以上に時間を要した結果、対策完了前に相続が発生してしまった、というような事態も起こりかねません。つまり、認知症発症リスクも考慮した相続対策であるかどうかが、成否を大きく左右する可能性があるのです。

D様の検討メニュー

さて、D様のご自宅は、駅徒歩5分、敷地約200坪、建物は築30年、ご売却も視野に入れていたため、レッツからは表1の資産の組み換え、等価交換、庭先活用の3案をご提案しました。各案の「相続税節税効果」や「収益性」を比較してみると、Ⅰ案、Ⅱ案が優れているのは明らかでした。しかし、認知症発症リスクを考慮すると、次の点も踏まえてご判断いただくことが必要になります。

1 対策にかかる期間は?

まず対策が完了するまでにかかる期間です。時間がかかれば、その分だけ認知症が発症する可能性も高くなります。Ⅰ案は約1年、Ⅱ案は約2年程度を要する計画です。対策検討期間を含めるとさらに数か月はかかります。一方、Ⅲ案は開始から約6か月で対策が完了しますので「確実性」が高くなります。

2 本人の負担はどうか?

次に、本人にかかる身体的、精神的負担です。Ⅰ案の場合、多数の契約手続きや、1度の引越しが、Ⅱ案は契約手続きに加え、2度の引越しが必要です。このほかに、細かな判断事項や事務手続きなども少なくありません。これらはご高齢者にはとっては、大きな身体的、精神的負担となり、認知症発症のきっかけになってしまう可能性もあります。一方、Ⅲ案では引越しはなく、契約手続きも少ないため、3案の中では比較的負担の少ない対策案といえそうです。

「確実性」も視野に入れることが大切

節税効果、収益性、流動性などはもちろん大切ですが、対策を無事完了させられなければ意味がありません。様々な状況を冷静に判断し、「確実性」も視野に入れて対策案を選択されることもご検討ください。なお、認知症発症に対する事前対策としては「任意後見制度」「財産管理委託契約」「家族信託」などがあります。これらを上手に利用すれば、認知症について心配が減る場合もありますので、ご検討の際には、レッツにぜひご相談ください。

TOPICS 注目される家族信託
家族信託は、個人的に身内に対しておこなう、誰でもできる信託です。信託法の改正をきっかけに、委任・後見・遺言などの代替策としての利用が期待されています。家族信託の主な特徴は、①受託者の権限を信託契約で比較的自由に決められることと、②不動産等の財産を、受託者名義に変更することです。これにより、資産組み換え対策の場合、信託契約締結以降は、委託者の体調に関係なく、売却、収益不動産購入、賃貸等、一連の判断や契約、名義変更までもが、受託者の権限でできるようになります。この使い勝手が、家族信託の大きな強みであり、現在相続対策の現場で注目されている理由でもあります。今後、利用される方がますます増えてくるでしょう。しかし、家族信託の専門家は極めて少ないのが実状です。

※本記事は2015年6月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

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