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相続人と長年にわたり同居して世話してきた子の寄与分相続人と長年にわたり同居して世話してきた子の寄与分

レッツプラザ2015年1月号/執筆者:江口 正夫

Q.お客さまからのご質問 Q.お客さまからのご質問
私は30年以上にわたり父親と同居し、父親の食事を作ったり、毎日の散歩の際には同行して父親が怪我することのないよう見守り、父親が風邪をひいたりしたときなど、病気の時には同居している私だけが父親の看病にあたり、ずっと世話をしてきました。私には姉と弟がいますが、二人とも別に家を構えており、たまに実家を訪問するくらいです。この度、父が亡くなったのですが、被相続人の世話をした相続人には寄与分が認められて他の相続人より多く遺産を受け取る権利があると聞いたのですが、私の場合には、寄与分はどれくらいになるのでしょうか。

A.お答え

民法は、相続人の権利については、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」(民法第898条)と定め、「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する」(民法第899条) としており、「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする」(民法第899条)と定めています。つまり、被相続人が死亡した場合、子が複数いる場合は子らの相続分は同一とされています。

ただし、民法には「寄与分」が規定されており、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算出した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする」(民法第904条の2)と定めています。

寄与分は、「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき」に認められるものですので、被相続人に資金、資産を提供したり、被相続人の借財を弁済した場合のように、被相続人への財産の給付が行われた場合に認められることは明らかです。

これに対して、被相続人の世話をしたという場合は、これによって被相続人の財産が増加することはありませんから、少なくとも療養看護をしたことにより被相続人が費用の支出を免れ、被相続人の財産の維持または減少の防止がなされたということが必要になります。

また、寄与分が認められるためには、「特別の寄与」が必要とされていますので、親族としての身分関係から当然なすべきと考えられているような療養看護は該当しないと解されています。ただし、本来付添人が必要な場合に、子が療養看護して付添人の費用の支出を免れた場合など、その程度が顕著で長期間にわたるような場合は「特別の寄与」と認められる場合があります。

※本記事は2015年1月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

江口 正夫
海谷・江口・池田法律事務所 弁護士 江口 正夫
東京大学法学部卒業。弁護士(東京弁護士会所属)。最高裁判所司法研修所弁護教官室所付、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員、民事訴訟法改正問題特別委員会副委員長、NHK文化センター専任講師、不動産流通促進協議会講師、東京商工会議所講師等を歴任。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事。

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