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著しい非行のある推定相続人の排除著しい非行のある推定相続人の排除

レッツプラザ2015年5月号/執筆者:江口 正夫

Q.お客さまからのご質問 Q.お客さまからのご質問
私には妻と3人の子がありますが、このうち長男が何かと言っては金品を持ち出したり、貸金業者からも多額の借金をしてはその返済に私が走り回るという状態であったため、生活を改めるよう注意したところ、私に暴力をふるい、現在では家を出て所在不明となっている状態です。このような長男には私の財産を相続させたくないのですが、法律が定めている相続人に相続させないということは可能なのでしょうか。

A.お答え

被相続人が、被相続人の意思にもとづいて、民法が規定している推定相続人(相続が開始したときに相続人となる者を言います。)の相続資格を奪うことは認められているのかということですが、民法は、推定相続人の廃除という手続きをもって、これを許容しています。

民法第892条は、「遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる」と定めています。

すなわち、民法は、将来、相続が開始した際に、相続人となることが予定されている者(推定相続人)が、 ①被相続人に対して虐待をしたとき、 ②重大な侮辱をしたとき、 ③推定相続人にその他の著しい非行があるとき、のいずれかの要件を満たした場合は、被相続人は、その者の相続資格をはく奪することを家庭裁判所に請求することが認められているのです。

「遺留分を有する推定相続人」とは誰を指すのかですが、被相続人の兄弟姉妹は遺留分を有しませんので、それ以外の推定相続人、すなわち、①配偶者、②第1順位の血族相続人(子とその代襲相続人)、 ③第2順位の血族相続人(被相続人の直系尊属)がこれに該当します。従って、ご質問のご長男は「遺留分を有する推定相続人」に該当します。

推定相続人の廃除は、被相続人の意思にもとづいて相続資格のはく奪を認める制度ですが、これが認められるためには、前記の①虐待、 ②重大な侮辱、 ③著しい非行の要件に該当することが求められます。判例では、子が親に対し魔法瓶や醤油瓶を投げつけ、灯油をまいて放火すると脅したケースは虐待に該当するとしたものがあります。また、金品等の持ち出しを繰り返し、意見しようとする被相続人に対し暴力をふるい、所在不明となった後、被相続人にサラ金業者や以前の勤務先に対する借金返済の対応に苦慮させている場合に「著しい非行」と認めた例があります。廃除は被相続人の生前に家庭裁判所に申し立てをする場合以外にも、遺言で廃除をおこなうことも可能です(民法第893条)。

※本記事は2015年5月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

江口 正夫
海谷・江口・池田法律事務所 弁護士 江口 正夫
東京大学法学部卒業。弁護士(東京弁護士会所属)。最高裁判所司法研修所弁護教官室所付、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員、民事訴訟法改正問題特別委員会副委員長、NHK文化センター専任講師、不動産流通促進協議会講師、東京商工会議所講師等を歴任。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事。

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