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Date:2008年12月25日/執筆者:阿藤芳明

定期借地権の設定をした時は

平成4年の借地借家法の改正により定期借地権制度が創設されています。これにより、土地所有者は契約更新の心配をする必要が無く、安心して土地を賃貸することが出来るようになりました。これから定期借地として土地を賃貸しようとしている方も、すでに定期借地を行っている方も税務上の取り扱いは気になるところだと思われます。そこで今回は一般定期借地権に係る土地所有者側について主な取り扱いをまとめてみました。

1.所得税法上の取り扱い

定期借地権の設定をする場合には、通常は何らかの対価を収受するはずです。所得税法では、定期借地権であろうとも普通借地権であろうとも、この収受した設定の対価の取り扱いについては差異を設けておらず、次のように取り扱われます。

なお、この設定の対価とは土地所有者が受けた経済的利益のことを指しており、具体的には次の金額をいいますので注意してください。

設定の対価の金額の範囲

  1. 1.権利金(返還不要)を受け取る場合……権利金は全額該当します。
  2. 2.保証金(返還必要)を受け取る場合……保証金の運用利益相当が該当します。
    ※計算式で示せば、「保証金の額×(1-複利現価率)」となります。なお、複利現価率は、設定時の基準年利率の半分の利率、期間は定期借地契約期間によります。
  3. 3.前払賃料を受け取る場合……前払賃料は一切該当しません。

また、上記1~3を組み合わせて定期借地権の設定をした場合には、それぞれに該当するものを合計した金額となります。

したがって、土地所有者は設定の対価の多寡により適用される所得区分・税率が異なる結果となりますので注意する必要があるでしょう。なお、譲渡所得に該当した場合には事業用資産の買換えの特例を利用することもできます。
しかしながら、定期借地権の場合には土地の更地価額の2分の1を超えるまでの権利金等を収受することは通常は考えられませんから、現実的には不動産所得に該当することでしょう。

2.相続税法上の土地の評価の取り扱い

定期借地権が設定された土地の相続税法上の評価額は、簡単に言えば、更地の土地評価額から定期借地権相当の価額を控除して計算したものです。すなわち、土地の評価額は更地に比べて減少することになります。
なお、定期借地なのですから土地の評価額の減少幅は、期間の経過とともに逓減することになります。つまり、契約期間満了時には更地評価に戻ることになります。
また、権利金等を収受すれば当然に財産も増加しているはずですから注意してください。

  • ○権利金……預金等が増加します。
  • ○保証金……保証金の一定額は債務となりますが、預金等も増加します。
  • ○前払賃料……預金等が増加します。

したがって、上記1も考慮すると土地所有者としては次のことが言えるでしょう。

  1. (1)所得税の見地からは、収受した権利金は不動産所得として高税率による所得税が課税される恐れがあるため、保証金方式か前払賃料方式が検討材料となる。
  2. (2)相続税の見地からは、相続財産減少効果が比較的高い保証金方式が検討材料となります。ただし、保証金の場合には後日返還が必要となり、下記記載のとおり物納財産として考えている場合にも注意が必要となります。

3.物納財産としての有効性

相続税の納税にあたり、定期借地権が設定された土地を物納することは可能です。しかしながら、定期借地権が設定されている土地は、以下のような問題点を解決する必要がありますので留意してください。

  • ○保証金を収受していた場合には、この保証金を精算する必要があります。
  • ○借地人が土地に抵当権を設定している場合には、これを抹消する必要があります。
  • ○定期借地の賃料は一般的にはかなり低額ですので、賃貸料の引き上げをする必要があります。

4.広い視野で活用を

定期借地権の設定にあたっては、実際には様々なことを考慮する必要があるでしょう。土地の所在場所にもよりますが、安定的収入の確保、固定資産税の軽減などを考慮して住宅用の定期借地権を行うことも考えられます。また、設定時に収受したまとまった金銭を利用して新たな建物の建築資金等へ充てる(投資)ことを考えてもいいでしょう。ただ、必ずしも評価の面で相続税対策にはならない事もありますので、幅広い観点からの検討が必要です。

阿藤芳明
税理士法人ATO財産相談室 阿藤芳明
税理士。早稲田大学卒。国税専門官として税務調査を経験後、アーンスト&ヤング会計事務所、タクトコンサルティングを経て独立。資産税のスペシャリストとして活躍中。

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