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Date:2010年11月22日/執筆者:川上由里子

ケアは心と心のつながり

ケア(care)はラテン語で「痛みや悲しみを共有する」こと。
そこには単に看護・介護するだけではなく
不安や痛みを抱える人を気遣い、
代わりに希望や安らぎを差し出すという意味が込められています。
そう、ケアは誰にとっても特別なものではないのです。

ケアコンサルティングという仕事は、一見、差し出すばかりに見えますが、実はいただくことがたくさんあります。

加齢による暮らしの変化が始まると、支える人も支えられる人も最初は困惑し、苦しみます。大きかった親や自分がいつの間にか小さくなり、“人のお世話になる”という切なさを初めて体験するからです。社会的に恵まれた立場にいた方、失敗や喪失体験のなかった方ほど、大変なことだと思います。

この現実を直視できず、ケアをお金に換算する、自分の都合に合わせるなど、逃げてしまう方もいらっしゃいます。でも、コンサルティングするうちに心を開き、勇気を持ってさまざまなことを話し、人のお世話になるという変化にまっすぐ向き合い始める方がいらっしゃいます。

「元気だった親父の介護はつらかったけれど、あの時間がなかったら親父の背中しか見ないで後悔したと思う。向き合うことができた。ありがとう」「施設に入れたかったわけじゃないんです。でも自分の人生には守らなければならないものが親以外にもあって、その中で折り合いをつけるしかないんです。つらいことですが最善を尽くします」

相談者の心の底からの言葉は、私の心の底に深く響きます。私はケアのある暮らしをデザインしながら、自分の言葉で提案できるよう精一杯の努力をします。

ケアコンサルティングは心と心がつながる時間、そしてお互いに知恵を出しながら問題解決をしていく時間。こうして心と心が向き合う過程を重ねていくと、いつしか相談者は、逆に私を応援し励ましてくれる温かい存在に変わっていくのです。

文豪ゲーテがファウストに託した言葉、「心の底から出たものでなければ、決して心から心へ伝わるはずがない」は、ケアの場でも光を放っています。

近ごろ講演させていただく回数がふえました。元来、人前に立つことが苦手な私が講演から逃げないのは、一人でも多くの方に「ケアのつながり」を伝えたいという思いがあるからです。まるで相談者の心の底からの声に動かされているようにも思えます。

いま私は、親のケアや相談者との会話の中で心のつながりを実感し、感謝しながら学んでいます。

これからも心の底から出たものをひとつ、またひとつとつなげていきたいと思っています。

川上由里子
ケアデザインプラザ ケアコンサルタント
川上由里子
ケアマネジャー・看護師・産業カウンセラー。三井不動産(株)ケアデザインプラザで、介護を含めたシニアライフのコンサルティングを行っている。

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