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Date:2012年1月23日/執筆者:川上由里子

「人と人」支え合う意味を考えましょう

ドイツの詩人ヘッセは
「年をとっていることは、若いことと同じように美しく神聖な使命である」と言い、
老年の成熟を賛美しました。人生の旅路をともにする
希望や哀しみ、追憶……それらを抱きながら私たちはどう支え合うのでしょうか。

2030年には65歳以上の高齢者が人口の約3分の1を占めると試算されています。介護する側・される側……日本人のほぼ全員が、介護を暮らしの一部として受け止めなければならない時代となりました。

福祉先進国デンマークでは、「それまでの生活をできるだけ継続しながら、残っている能力を活かし、自分の暮らし方を自分で決める」という高齢者ケアの理念※1が浸透しています。この理念のもと、自立し、お互いを尊重しながら支え合います。

日本でも、様々な介護の形が生まれていますが、"支え方の理念"は置き去りにされているように感じられます。過剰に手をかけることが「やさしさ」と誤解され、介護の真の目標である「自立を促すこと」を意識していない介護者を多く見かけます。

ケアする側の"見守り"や"待ち"を「手抜き」「冷たさ」と受け取る人もいますが、介護とは、手を出すことよりも寄り添って見守ることなのです。

過剰なやさしさに依存してしまい、本人のできることまで奪ってしまったケースを私はたくさん見てきました。

歩くことができたのに、車椅子で介助されることに慣れてしまい、やがて一人でトイレに行くことも困難になり、尊厳を失ってしまった人。得意の家事を危ないという理由で取り上げられ、家での役割と家族からの「ありがとう」を失って、認知症になってしまった女性。頼りにしてきた夫を亡くしたとたん、生きる支え、生活の術をなくし死を選んだ妻。

間違ったやさしさが希望の芽を摘んでしまったのです。

「夢のみずうみ村」代表の藤原茂さん(作業療法士)※2 は、山口県、千葉県などに自己決定・自己選択方式のデイサービスを実現させました。彼は、「弱い人間は強くならなくていい、弱くない生き方をすればいい」とうたい、弱さや不自由があってもそれに勝るプラスの要素を増やすケアを実践し、多くの人の共感を呼んでいます。

私は、介護を通じて支える側・支えられる側がともに得られる大切なものを伝え続けています。

人と人が関わり合い、得るもの、失うもので織り成される人生、介護からも得られる人生の豊かさを心で感じ続けたいと思っています。
私達は大切な人を介護しながら、実はいつかは必ず訪れる自分の老いの生き方を学んでいます。

  1. ※1:高齢者ケアの3原則
    (1)継続性の尊重(2)残存能力の維持・活用(3)自己決定の尊重
  2. ※2:『強くなくていい「弱くない生き方」をすればいい』藤原 茂著 東洋経済新報社刊
川上由里子
ケアデザインプラザ ケアコンサルタント
川上由里子
ケアマネジャー・看護師・産業カウンセラー。三井不動産(株)ケアデザインプラザで、介護を含めたシニアライフのコンサルティングを行っている。

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