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Date:2012年10月3日/執筆者:川上由里子

希望をはこぶコミュニケーション

「一生のおわりに残るものは、我々が集めたものではなく、我々が与えたものだ」(ジェラール・シャンドリー)
という私の心に響く名言があります。
与え続けたからこそいぶし銀の輝きを放つ高齢者とのコミュニケーションを考えます。

最近、高齢者とのコミュニケーションについて講演をする機会が増えました。私たちとは異なる行動や心を表す高齢者とのコミュニケーションに戸惑いを感じている方は多いのではないでしょうか。

加齢は個人差が大きいので、高齢者との接し方は一人ひとり異なります。眼の前にいる人に合わせて、思いやる気持ちを大事にしながら、わかりやすく丁寧な言葉を使いましょう。相手のペースに合わせ、見守りや待つことも必要です。

介護や医療の専門職はもちろんですが、一般の方々も身近な高齢者の身体や心理をよく理解したうえで、高齢者とコミュニケーションをとることが望まれます。

相手に与える印象は、非言語表現によるものが70パーセントを占めるといわれます。笑顔などの表情、服装、色彩、身振りなどの身体表現にも配慮しましょう。

体が不自由になるというのは想像だけでは限界があります。高齢者を理解するために、高齢者疑似体験(※1)で不自由な「高齢者の世界を体験」し、コミュニケーションに活かす方法もあります。

心にも思いを寄せましょう。高齢期は喪失感を抱くステージです。いままで自信のあった健康や暮らし・仕事を病気や障がい、人間関係の変化などで失います。指導を受けたり見守られたりする側になることで、高齢者のプライドは傷つき、心を閉ざしてしまう人もいます。その人の個性や人生のありのままを受け止め、希望を語ってもらい、それをかなえられるように支援することが、喜びにつながります。

介護や医療の現場では、身体機能だけでなく、生活や社会参加など、個人の総体をみてケアマネジメントする視点が用いられています(※2)。そんなところからもコミュニケーションのヒントがあるかもしれません。

74歳のAさんは健康、住まいなどに大きな不安を抱え相談にみえました。私は問題や不安ばかりでなく、 Aさんの与えていることや希望もうかがいました。希望を語り始めたAさんと私の表情は輝き、心と心の通う時間となったのです。

私には二人の祖母がいました。長く生きた二人の笑顔と温かさ、そして哀愁から私は何か大切なものを受け取り、年齢を重ねることで得られる不思議な魅力を知りたいと思いながら大人になりました。

希望は夜空の星と同様に、薄暮から夜に向かいよりいっそう輝きをましていきます。私たちはその希望…"磨かれた個性"や"その人らしさ"…を受け取り、未来にはこぶ役割を持っています。

  1. ※1 高齢者疑似体験
    • うらしま太郎/長寿社会文化協会(WAC)
    • インスタント・シニア/日本ウエルエージング協会(WAJ)
  2. ※2 国際生活機能分類(ICF)/(WHO)
川上由里子
ケアデザインプラザ ケアコンサルタント
川上由里子
ケアマネジャー・看護師・産業カウンセラー。三井不動産(株)ケアデザインプラザで、介護を含めたシニアライフのコンサルティングを行っている。

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