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ちょっとお得な資産経営の新常識ちょっとお得な資産経営の新常識

Date:2008年10月30日/執筆者:田村誠邦

相続対策の考え方の基本の話

相続対策というと、大半の人が、相続税をいかに安くするかという節税対策のことを思い浮かべるようです。確かに、相続税は、最高税率が50%もの累進課税ですから、多くの資産家にとっては、きわめて大きな問題となっています。しかし、相続対策で一番大切なことは、節税対策、すなわち相続税の節税ではありません。重要度から言うと、一に分割対策、二に納税対策、そして、三、四がなくて、五に節税対策といったところでしょうか。

分割対策とは、残された財産を相続人の間でどのように分けるかという問題です。これがうまくいかないと、いわゆる相続争い(よく、「争族」と呼ばれます)が起きてしまい、せっかくの財産が争いの元になってしまいます。これでは、多少の節税ができたところで、何の意味もないことは明らかでしょう。そして、多くの場合、相続争いがあると、遺産分割協議が整わない等の理由により、節税もできないことになります。ですから、相続対策として最も重要なものは、この分割対策ということになります。

納税対策とは、いうまでもなく、相続税をどう納めるかという問題です。実は、この問題は、分割対策と表裏一体の関係にあります。すなわち、各相続人が、それぞれの相続財産の中から納税を考えないといけないからです(厳密には、各自が相続前に持っていた金銭等で納税することも可能ですが、普通は、相続した財産の中で納税することを考えるはずです)。ちょっと前までは、物納制度が利用しやすい制度だったので、この納税対策も考えやすかったのですが、現在の制度では、物納は相続の発生前から周到な準備をしておかないと実行するのが難しく、結局、事前に各相続人にどう分割して、その分割された財産の中からどう納税するかということを、しっかりと検討し、準備をしておく必要があるということになります。

こうした分割対策と納税対策は、被相続人(財産をお持ちの方)がただ単に遺言書を書いておけばそれでいいという話ではありません。お持ちの財産を、(1)ぜひ保有し続けたい財産(多くの場合、自宅敷地などがこれに当たります)、(2)継続的な収入源として保有しておきたい財産、(3)相続税の納税など、いざというときには売却や物納などで手放してもいい財産、の3つに区分し、その上で、各相続人に、(1)~(3)のバランスを考えながら、各自が納得するように分割を考え、できれば、その内容を生前に相続人全員に伝え、理解しておいてもらうことが大切です。当然、財産評価や税務の専門的知識が必要となりますので、信頼できる専門家のアドバイスを受けながら検討することが必要でしょう。また、相続人の理解を高めるためには、相続時精算課税制度を利用して、(2)の財産等を中心に、財産の一部を生前贈与しておくことが効果的かもしれません。さらに、少なくとも(3)の財産については、いつでも売却や物納が可能なように、境界確定などの事前準備をしておく必要があります。こうした、対策を検討した上で、はじめて相続税の節税を考えるという順番になるのです。

さて、こうした相続対策は、ともすると、多額の相続税を納税する必要のある資産家だけの問題のように思われがちですが、実は、多少の財産をお持ちの方であれば、誰でも、(1)の分割対策については検討する必要があるのです。むしろ、分け与える財産が限られているので、もめないように分けるのが難しいというのが現実です。一番厄介なのは、残された財産の大半が自宅の敷地と建物という場合です。配偶者が健在のうちは大丈夫でしょうが、子供たちだけの代になると、多くの場合は、自宅を売却して換金して分ける必要が生じます。このことについては、前回のコラムで二世帯住宅の悲劇を題材に詳しく書きましたので、そちらもご覧ください。

二世帯住宅は争族の始まり?

相続税については、次の税制改正で、その計算方法についての大改正が行われる可能性があります。簡単に言えば、相続人全体で相続税を計算する現在の仕組みから、相続人ごとに相続税を計算する仕組みに改められるというものです。総じて言えば、増税方向になることは明らかであり、課税対象者も広がるでしょう。今後の税制改正の動きには、ぜひ、注目しておく必要があるでしょう。

田村誠邦
(株)アークブレイン 田村誠邦
不動産鑑定士、一級建築士。東京大学卒。三井建設、シグマ開発計画研究所を経て独立。建築再生や建替えといった各種建築プロジェクトのコンサルタントとして活躍中。

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