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Date:2008年11月27日/執筆者:阿藤芳明

文言一つで相続財産が増加?

賃貸物件をお持ちの場合、避けて通れないのは税務上の修繕費の取扱いです。この修繕費、払ったときの経費になるものもあれば、新たな資産の取得(「資本的支出」と言います)として減価償却資産の対象となるものもあります。家屋は当然ながら相続財産に該当します。そして家屋は固定資産税評価額で評価されます。では、資本的支出が行われた場合、その固定資産税評価額はどうなるのでしょうか。今回は、この資本的支出に注目し、相続税法上の取扱いについてお話をします。

1.資本的支出とは

(1)修繕費との区分

一口に修繕費といっても、その修繕の内容によって、税法上取扱いが異なります。税法上の修繕費に該当すれば、支払った年の経費となりますが、新たな資産の取得(「資本的支出」と言います)に該当すれば、減価償却資産の対象となります。

修繕費とは、その資産の通常の維持管理のため、又は災害等により毀損した資産につきその原状を回復するために要した費用を言います。資本的支出とは、その資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額を言います。

(2)資本的支出の例示

資本的支出には、下記に掲げるような金額が該当します。

  • 1.避難階段の取付け等、物理的に付加した部分にかかる金額
  • 2.用途変更のための模様替え等の改造又は改装にかかる金額

2.資本的支出がある場合の相続税法上の評価の取扱い

資本的支出については、その内容に応じて、下記の区分のように取り扱われます。

(1)資産の物理的な増加に該当するものである場合

この資本的支出が、増築・増床等、資産の物理的な増加に該当するものである場合で、

  • 1.その増加された部分について固定資産税評価額が既に付されている場合には、その固定資産税評価額×1.0が評価額となります。
  • 2.固定資産税評価額が付されていない場合には、増改築等に係る部分と状況の類似した付近の家屋の固定資産税評価額を参考とした価額が評価額となります。
  • 3.固定資産税評価額が付されておらず、付近に状況の類似した家屋が存在しない場合には、下記の算式により評価した金額が評価額となります。
    (再建築価額-減価償却累計額)×70%

上記2、3の場合において、申告期限までに固定資産税評価額が付された場合には、当然その固定資産税評価額を基礎に評価することとなります。

(2)既存の資産を除却した上で新たに資産を取得した場合

この資本的支出が、給排水設備の入替え、壁紙の張替え、部屋割りの変更等、既存の資産を除却した上で新たに資産を取得した場合には、原則、別個に評価の対象とはなりません。なぜなら、その修繕が既に存在する資産(固定資産税評価額が付されている資産)を同等のものと入れ替えただけのものであれば、新たに固定資産税評価額を付す必要がないからです。そして、その修繕が新たに固定資産税評価額を付す必要のない修繕であれば、その修繕は既に建物本体の固定資産税評価額に含まれていますので、別個に評価の対象とする必要がないのです。

所得税法上の家屋の取得価額は、当初の取得価額は勿論、後日発生した資本的支出の金額とともに積算され増加していきます。しかし、家屋の固定資産税評価額は、その建物の構造・材質を基礎に計算しますので、その構造・材質が変わらなければ、いくら資本的支出があったとしても、固定資産税評価額が増加するとは限らないのです。そして、家屋の固定資産税評価額が増加しないのであれば、相続財産である家屋の評価額も増加しないのです。

つまり、所得税法上の資産として計上することと、相続税法上の資産(財産)として評価することは別の話なのです。固定資産税評価を付す必要のない修繕であれば、その資本的支出は、別途資産として計上する必要はないのです。

3.帳簿にあるもの=相続財産?

ご自身の確定申告書を御覧ください。どこの建物の附属設備なのか、どこの建物の修繕なのか、よく判らない資産があるかもしれません。場合によっては、そもそも資産に計上する必要のないものまで資産に計上しているかもしれません。

資産に計上されていれば、何らかの経済的価値を見出そうとするのが税務署です。その資産がどの建物に帰属するものなのか、家屋の固定資産税評価額に含まれているのかいないのかが確定していれば、要らぬ詮索を受けることもないでしょう。

阿藤芳明
税理士法人ATO財産相談室 阿藤芳明
税理士。早稲田大学卒。国税専門官として税務調査を経験後、アーンスト&ヤング会計事務所、タクトコンサルティングを経て独立。資産税のスペシャリストとして活躍中。

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