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Date:2010年4月21日/執筆者:阿藤芳明

事業承継税制による家督相続(隠居制度)の復活か?

非上場株式等についての贈与税の納税猶予

家族経営による会社では、代表者はお父様、ご子息は役員だけれども、株式はすべて代表者であるお父様が所有という形態が多いのではないでしょうか。新しい事業承継税制は、この様な同族会社の非上場株式等の贈与につき、贈与税の納税猶予の特例を設けています。この制度を上手に利用することにより、贈与税の免除という形で生前に相続対策を図ることが可能となります。

1.制度の概要

次世代への円滑な事業承継を目的として、贈与前に「経済産業大臣の確認」を行い、贈与発生後において「経済産業大臣の認定」を受け、贈与税の申告期限までに「申告書及び一定書類」を提出し、贈与税額に見合う「担保を提供」(注1)することにより、贈与税の納税猶予制度の適用が可能(注2)となります。

さらに、納税猶予後においても5年間は、(1)経済産業大臣に「年次報告書」(2)税務署に「継続届出書」の提出が必要となり、これらを経て贈与者の死亡時においては「免除届出書」を提出することにより、猶予されている贈与税が免除されることになります。

(注1)この適用を受ける非上場株式等のすべてを担保として提供することにより猶予額に見合う担保の提供があったものと見なされます。

(注2)発行済み株式等の総数の3分の2までが対象です。

2.適用条件

【1】先代経営者の要件
  • (1)会社の代表者であったこと
  • (2)贈与の時までに役員を退任すること
  • (3)先代経営者と同族関係者で発行済み議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ、同族内で筆頭株主であったこと
【2】贈与の時において後継者の要件
  • (1)会社の代表者であったこと
  • (2)贈与の時までに役員を退任すること
  • (3)先代経営者と同族関係者で発行済み議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ、同族内で筆頭株主であったこと
  • (4)役員就任から3年以上経過していること
  • (5)後継者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ同族内で筆頭株主となること
【3】認定対象会社の要件

次のいずれにも該当しないこと

  • (1)上場会社
  • (2)中小企業者に該当しない会社
  • (3)風俗営業会社・資産管理会社
  • (4)総収入金額が零の会社・従業員が零の会社
【4】5年間の事業継続要件
  • (1)代表者であること
  • (2)雇用の8割以上を維持
  • (3)贈与した対象株式の継続保有

3.先代から後継者への世代交代

家督相続(隠居制度)とは、死亡せずに発生させる相続であり、今回の事業承継税制は、まさにこの生前相続の復活として定義することもできるのではないでしょうか。

4.実は昔ながらの相続?

制度の概要や上記2.の適用要件を見ると、煩雑な手続きが必要で、要件も複雑に見えるかも知れません。しかし、実は昔ながらの家督相続そのものに置き換えて読んでみると、意外と簡単に理解することができるのではないでしょうか。

  • 戸主は一族で家督支配権を確保し、かつ、家督の筆頭者 →【1】(3)・【2】(5)
  • 家業を譲った戸主は隠居 →【1】(2)・【2】(1)
  • 若旦那(新社長)は成人である必要 →【2】(3)・(4)
  • 若旦那は家業を維持し、番頭、手代、丁稚の雇用を守る →【4】(2)
  • 若旦那は一生について家督を維持 →【4】(3)

5.株式はひとりにまとめて相続させましょう!

相続人である子供が複数いる場合など、株式を分散して皆平等に相続させたいとお考えになるかも知れません。しかし、家督を譲るという意味においても、この制度の特例を受ける上においても、経営権の安定的な確保として、株式は分散せずに1人に集中して相続させるのが懸命な対策ではないでしょうか。

昔からの本来の生前相続の形を取ることにより、この事業承継税制の制度を有効活用することで、一族子孫の繁栄を守りつつ、節税対策を考えてみてはいかがでしょうか。

阿藤芳明
税理士法人ATO財産相談室 阿藤芳明
税理士。早稲田大学卒。国税専門官として税務調査を経験後、アーンスト&ヤング会計事務所、タクトコンサルティングを経て独立。資産税のスペシャリストとして活躍中。

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