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大切な「土地」の生前確定測量のすすめ大切な「土地」の生前確定測量のすすめ

Date:2010年11月10日/執筆者:高橋一雄

境界はなぜもめるのか?

地球上に一人しかいなければ、境界でもめることはありません。境界でもめる時には必ず相手がいます。つまり、境界がもめているのではなく、人がもめているのです。

他人は、自分と同じ知識や価値観、同じ道徳心を持っている訳ではありません。しかし、相手のことを考える時、私たちはこのことを忘れています。

自分が見ている物と同じ物を相手も見ていると思ってしまいますが、実は違う物を見ていることがあるのです。人は皆、色付きレンズを透して物事を見ています。「事実は一つですが、真実は人の数だけある」と言われるのはこのためです。

スポーツは相手と試合をしても、あまりもめません。それはルールがあるからです。自分も相手も同じルールを納得して試合をするから、もめないのです。もしルールが無かったら試合になりません。喧嘩です。

日本には、境界を決めるルールがありません。ルールが無いので、同じ土地を見ても、人によって見えている物が違ってしまうのです。このことが、境界でもめる原因なのです。

1.もめる原因とは?

それでは、土地は人によってどのように見えているのか、もめる原因を具体的に見ていきましょう。

(1)土地の高騰

戦後、日本経済の急速な成長に伴い、土地の価格も上昇し、土地が資産価値を持つようになりました。まさに「土地一升金一升」の時代です。このため、土地に対する権利意識が高まり、資産価値のある土地を減らしたくない、あわよくば少しでも面積を増やしたいと思うようになってきたのです。中には人の弱みにつけこんで来る方がいます。1m2数千万円もするような土地の場合は、この傾向が顕著に現れます。

(2)境界は見えない

境界は現地で見えるわけではありませんので、勝手なことを言ってもそれが本当のことなのか、不当なことなのかが直ぐには分かりません。また、地中から境界標が出てくると、それが正しい境界だと盲信して、直ぐ相手に主張する方がいます。

しかし、現地の境界標が何かの理由で移動していないとは限りません。現地で目に見える物は、境界を確定するための一つの資料なので、他の資料等と照合して判断する必要があります。ただ、決め手となる資料が無いような場合などは、現地にある境界標は有力な資料となることは、間違いありません。

(3)都合の良い図面

自分にとって都合の良い図面で境界を主張する方がいます。現地で境界の確認作業などをすると、いろいろな図面の中から、自分に最も都合の良い図面を選んで持参される方がいます。

しかし、図面に表されている線が境界線とは限りませんし、正確性も問題になります。隣接地の所有者さんと境界の確認をしないまま、依頼者の指示により現況を測ったような図面や、建物の建築をするためだけに作成した建築図面などもあります。図面も境界を確定させるための一つの資料なので、図面に表されている線が、「筆界」なのか、「所有権界」なのか、「それ以外」なのか等、その有効性を判断しなければいけません。

(4)面積にこだわる

登記簿(登記記録)に載っている地積(面積)を主張する方がいます。地積(面積)を主張される、ほとんどの方が『固定資産税を払っているんだから、国が面積を認めている』と言われます。

しかし、登記簿(登記記録)に載っている地積(面積)は、もともと明治6年の地租改正事業により作成された地券台帳を引き継いでいますので、ほとんどの場合、今の測量技術で測った面積とは違ってきます。当時は300坪で10坪の誤差が認められていたようです。

隣接地の所有者さんと境界の確認を行うようになったのは最近のことですから、過去に分筆登記をしたような土地でも登記簿面積が当てにならない場合もあります。ちなみに登記簿(登記記録)に載っている地積(面積)は、公的に保証されている訳ではありません。土地を特定するために記載されているのです。

(5)思い込み

最初は『~かもしれない』と思っていたものが、『~だ』、『~きっとそうだ』、『~に違いない』と考えが変化して行き、最後は信念となってしまう方がいます。正しければ良いのですが、間違っていた場合、信じている人の考えを変えることは、なかなかできません。理屈ではないので、裁判をしても納得されないかもしれません。

(6)隣人と仲が悪い

お隣同士で何年にも渡っていがみ合っている方がいます。境界が直接の問題ではない場合など、境界に納得されていても協力はしていただけません。お隣がすることには全て反対なのです。親同士がいがみ合っていると、親が亡くなった後、子供が引き継ぎます。親同士は当事者なので、仕方がないとしても、親の恨みを相続した子供は可哀想です。特に、お隣が兄弟姉妹や親戚の場合は、遠慮がありませんから悲劇です。

以上の6つが代表的な色付きレンズの正体です。そしてこれがもめる原因なのです。しかし、土地は一つとして同じものはありません。土地の数だけもめる原因があると言っても過言ではないでしょう。

2.杭を残して、悔いを残さず

人の歴史は戦いの歴史と言われます。現在の日本は法治国家ですから、武力によって自分の土地を増やすということはありませんが、境界の争いは規模が大きいか小さいかの違いだけで、太古の昔からあるのです。もしかすると人間のDNAの中に組み込まれているのかもしれません。

境界はもめてから解決するのではなく、もめる前にもめないように予防することが大切です。必要なのは『杭を残して、悔いを残さず』です。

次回は、万が一境界でもめてしまった場合の解決策についてお話したいと思います。

高橋一雄
(株)測量舎 高橋一雄
ADR認定土地家屋調査士、測量士。平成9年測量舎を、平成18年に土地家屋調査士法人登記舎を設立し、誠実・確実・迅速を合言葉に年間100現場以上の境界確定測量を実施。

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