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大切な「土地」の生前確定測量のすすめ大切な「土地」の生前確定測量のすすめ

Date:2011年7月7日/執筆者:高橋一雄

境界紛争を未然に防ぐには?(1)

今回は、境界紛争を未然に防ぐにはどうすれば良いのかについて、お話したいと思います。

前回の最後の部分に、お隣さんと仲良くすることが大切ですと書きましたが、いつまでも仲の良いお隣さんがお隣に居るとは限りません。

ましてや土地の所有者がお隣に住んでいるとは限りませんし、お隣に住んでいなければ、境界で揉めない訳でもありません。ではどうすれば良いのか? ということをこれからお話させて頂きます。

境界を決めるためのルールはない

世の中は色々なルールによって成り立っています。何か揉め事があれば、そのルールに従って解決していけば良いのですが、こと境界に関しては、このルールがありません。

以前お話したように、境界に関してはそれぞれの所有者が自分に都合が良いように、勝手な主張をしてきます。これは、境界を決めるための明確なルールがないためです。スポーツ等は、ルールに基づいて試合が行われているので、あまり揉めることがありません。たまに審判の判断に対してクレームがつくことはありますが、大きなトラブルに発展することは稀です。これは選手も観客もルールを納得しているからです。

所有者の合意が境界の新たなルールとなる

さて、本題の境界ですが、ルールが無いのであれば、ルールを作らなければいけません。では誰がそのルールを作るのでしょうか? 境界を決める法律が無い以上、土地の所有者さん同士で作るしかないのです。

審判は誰が行うのでしょうか? それは、筆界を取り扱うことができる土地家屋調査士です。測量士は筆界を取り扱うことができないので、境界問題には不向きです。

では、土地の所有者と土地家屋調査士が集まって何をすれば良いのかということですが、結論を言ってしまえば境界の確認です。それぞれの所有者が曖昧にしてきた境界というものを、土地家屋調査士立ち会いの元でお互いに確認し、思い込みや曖昧さを無くすことなのです。ここでお互いに合意ができれば、境界に関する新たなルールができることになります。

注意しなければならないことは、声の大きな人や立場の強い人が、人の弱みに付け込んで強引に境界を押付けてくることがあります。

この時、声の大きな人や立場の強い人に境界を押し切られないように、審判(土地家屋調査士)の公平な判断が求められるのです。

境界標の設置

境界の合意があっても、現地で境界が分からないのでは仕方がありません。そこで、現地の境界点には目印として耐久性のある境界標を設置します。この際、証拠として設置した境界標の写真を撮っておくことをお勧めします。

注意しなければならないことは、境界標は工事や大きな地震等によって移動や破損してしまうことがあるので、普段の管理が重要となります。

土地境界確認書の取り交わし

こうしてできた境界のルールも、時間の経過によって風化する恐れがあります。もっとも顕著なものが相続です。境界について知っているのは、亡くなったお父さんだけで、残された奥さんやお子さん達は全く知らないというケースがよくあります。

そこで、新たにできた境界のルールを風化させないために、ルールを書面にして残しておくことが重要となります。

このお互いに合意したルールを書面化したものが、土地境界確認書です。土地境界確認書には、合意した事実を記載した書面に、合意した境界点を測量した測量図を添付します。この土地境界確認書にお互いが署名捺印をして、それぞれが1通ずつ保管してもらいます。

将来境界について何かあった場合には、この土地境界確認書が威力を発揮するのです。

現地と測量図の一致

もちろん、土地境界確認書に添付した測量図と現地が(誤差の範囲内で)一致していなければ、ルールを作った意味がありません。万が一、測量図と現地が(誤差の範囲を越えて)ずれていた場合には、将来の境界紛争の元となります。その意味で、測量図の作成と境界標の設置には、土地家屋調査士としての責任があります。

筆界との一致

ここまでできればお隣との関係においては一安心ですが、筆界との関係においてはどうでしょうか? 測量図と現地が一致していたとしても、筆界と所有権の境が違っていると、これも将来の境界紛争の種となります(コラム「境界は一つではない」参照)。

お隣さん同士が合意した新たなルール、土地境界確認書は、あくまで所有権の確認書です。筆界については以前お話したように、お互いに合意をして決めるということができません。

ちなみに、筆界を変更できるのは、裁判官の判決と登記官が行う合筆、分筆登記の3つしかないのです。

では、お互いに合意した所有権の境と、筆界を一致させるにはどうすれば良いのでしょうか? それは、登記官に筆界と一致していると認めてもらうことです。登記官には筆界を推定する能力があります。

お互いが合意した境界を登記官に認めてもらうためには、土地家屋調査士に依頼をして、登記簿記載の地積を、所有権の境を基に実際に測量した実測面積に訂正する、地積更正登記を登記所に申請する方法があります。

この地積更正登記の申請書には、土地家屋調査士が筆界と判断して作成した地積測量図を添付することになっています。

登記官がこの申請書に基づき登記簿の地積の訂正(登記原因は錯誤となります)を行えば、所有権の境と筆界が一致していると登記官が認めたことになります。

「安全」「安心」な土地

これによって、現地と測量図と登記簿が一致する、「安全」「安心」な土地となるのです。なお、この時提出された地積測量図は登記所に永久保存されます。

もし、所有権の境と筆界に違いがある場合には、分筆や合筆の登記を行い、筆界と所有権の境を一致させる手続きが必要となります。

ちなみに、筆界に関する土地家屋調査士と登記官と裁判官の関係は、土地家屋調査士は筆界を推測し、登記官は推定する(筆界特定登記官は特定する)、そして裁判官が確定するというようになっています。

次回は、境界確認の時期や相手先等についてより詳しくお話したいと思います。

高橋一雄
(株)測量舎 高橋一雄
ADR認定土地家屋調査士、測量士。平成9年測量舎を、平成18年に土地家屋調査士法人登記舎を設立し、誠実・確実・迅速を合言葉に年間100現場以上の境界確定測量を実施。

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