資産承継資産承継

大切な「土地」の生前確定測量のすすめ大切な「土地」の生前確定測量のすすめ

Date:2012年2月17日/執筆者:高橋一雄

筆界特定制度について(1)

『お隣との境界が決まらないので、筆界特定制度で境界を決めて欲しい』という依頼が最近増えてきました。しかし、よく話を聞いてみると筆界特定制度を理解していない人がほとんどです。全ての境界紛争が筆界特定制度を使えば解決できると思っている人も中にはいます。

そこで今回は、以前のコラム『境界紛争を解決するには?』で簡単に説明しました筆界特定制度について、より詳しく見ていくことにしましょう。

境界紛争を解決するには?

ただし、ここでお話する内容はあくまで「筆界」についての話であり、一般の方が普段使用している「境界」(所有権界)とは違うということを、初めにご確認しておいて頂きたいと思います。筆界と所有権界の違いについては、以前のコラム『境界とは?』をご覧下さい。

境界とは?

1.筆界特定制度とは?

法務局または地方法務局の筆界特定登記官が、土地の所有権登記名義人等の申請に基づき、職権で必要な調査を行い、外部専門家である筆界調査委員(主に土地家屋調査士)の意見を踏まえた上で、一筆の土地およびこれに隣接する他の土地について、簡易・迅速に現地における筆界の位置について判断を示す制度です。

筆界特定とは筆界特定登記官という公的機関が、過去に筆界として定められた線を現地において特定することです。

2.筆界特定制度の意義

(1)迅速・適正な筆界の判断

従来、筆界について争いが生じた場合には、筆界確定訴訟を提起して判決により、筆界を確定する方法しかありませんでした。

しかし、裁判では隣地の所有者を訴えることになり、お隣同士が原告・被告として争わなければならなくなるほか、自ら証拠資料の収集をしなければならないなど、多くの時間と弁護士費用など多額の費用が掛かりました。また、登記官や土地家屋調査士が有する土地に関する専門的な知識や経験が、裁判に十分反映されないといった問題もありました。

そこで、筆界特定制度を新たに制定することによって、これらの問題を克服し、簡易・迅速に行政レベルで筆界の位置を明らかにすることを目的としているのです。

(2)地図整備の促進

地籍調査や不動産登記法第14条地図の整備作業にあたっては、隣接する土地所有者との境界確認を行った上で、筆界を認定し図面の作成を行っています。そのため筆界調査に時間がかかるほか、隣接する土地所有者との境界確認ができず、筆界が未定となる土地もあります。そのような土地の筆界を確定するには、最終的には筆界確定訴訟の判決によらなければならないという問題がありました。

筆界特定制度を、このような筆界未定地を解消する手段として活用することによって、地籍調査や不動産登記法第14条地図の整備作業の促進に役立たせる目的もあるのです。

(3)不動産取引の円滑化

筆界未定地など筆界が明らかでないために、隣接地所有者と境界紛争に発展する場合があります。境界に紛争がある土地は、将来筆界確定訴訟や所有権確認訴訟などを提起される可能性があり、不動産取引が難しい土地と言えます。そのため不動産の価格にも影響が出てくる可能性があります。

筆界特定制度は、将来の境界紛争を予防し、不動産取引の円滑化を図り、ひいては社会経済の活性化に繋がると考えられています。

3.筆界特定の性質

筆界特定登記官の行った筆界特定は、公的機関が筆界を判断する行為ですので、その筆界特定の内容については、公的機関が示した判断としての証明力を有することになります。つまり、土地の筆界の位置が問題となる分筆登記や、地積更正登記など様々な場面において、証拠資料として活用することができる訳です。

しかし、筆界特定の内容に不満がある当事者は、いつでも筆界確定訴訟を裁判所に提起することにより、筆界の確定を求めることができます。

筆界特定登記官には過去の事実を確認し、筆界の位置を現地に表示するという権限しかなく、裁判官のような筆界を形成する裁量権はありません。また、筆界特定の内容については行政処分としての効力もありません。

つまり、筆界特定の内容について法的拘束力は無く、最終的に筆界を確定させるためには、筆界確定訴訟によるほかはないのです。このことが『筆界特定は登記官の独り言』と言われる所以なのです。

4.筆界特定制度と筆界確定訴訟との関係

(1)筆界特定前置主義はない

筆界に争いがある場合に、筆界特定を必ず先にしなければ筆界確定訴訟が提起できないという手続き上の先後関係はありません。筆界特定制度を利用するか、筆界確定訴訟を利用するかは当事者の自由です。つまり、筆界特定の手続きを経ることなく、従来通り筆界確定訴訟を提起して筆界の確定を求めることができます。

(2)筆界確定訴訟判決は筆界特定に優先する

筆界の特定がされた場合において、当該筆界特定に係る筆界について筆界確定訴訟の判決が確定した時には、当該筆界特定は、判決と抵触する範囲において、効力を失います。また、筆界確定訴訟の判決が既に確定している場合には、筆界特定を申請しても却下されます。

(3)筆界確定訴訟における釈明処分の特則

筆界特定がされた場合において、当該筆界特定に係る筆界について筆界確定訴訟が提起された時は、裁判所は当該訴訟において、訴訟関係を明瞭にするため、登記官に対して、当該筆界特定に係る筆界特定手続きの記録の送付を嘱託することができます。筆界確定訴訟が提起された後、当該訴えにかかる筆界について筆界特定がされた時も同様の取り扱いとなります。

以上、今回は筆界特定制度の全体像について見てきました。次回は筆界特定制度の手続きについて見ていきたいと思います。

最後に筆界特定の概要を把握するために、法務省のホームページにある筆界特定制度に関するQ&Aを下記に載せておきますので参考にして下さい。

筆界特定制度に関するQ&A

Q1 筆界特定制度とは、どのような制度ですか?
A1 筆界特定制度とは、土地の所有権の登記名義人等の申請に基づいて、筆界特定登記官が、外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、土地の筆界の現地における位置を特定する制度です。
Q2 筆界特定制度の施行日はいつですか?
A2 平成18年1月20日です。
Q3 筆界とはなんですか?一般的にいう境界とは違うのですか?
A3 「筆界」とは、ある土地が登記された時にその土地の範囲を区画するものとして定められた線であり所有者同士の合意等によって変更することはできません。
これに対して、「境界」という語は、所有権の範囲を画する線という意味で用いられることもあり、その場合には筆界とは異なる概念となります。筆界は所有権の範囲と一致することが多いのですが、一致しないこともあります。
Q4 筆界の特定とは何ですか?
A4 ある土地が登記された時にその土地の範囲を区画するものとして定められた線(筆界)を、現地において特定することです。新たに筆界を決めるものではなく、調査の上、登記された時に定められたもともとの筆界を、筆界特定登記官が明らかにすることです。
Q5 筆界はどのようにして特定されるのですか?
A5 筆界調査委員という専門家が、これを補助する法務局の職員とともに、土地の実地調査や測量を含むさまざまな調査を行った上、筆界に関する意見を筆界特定登記官に提出し、筆界特定登記官が、その意見を踏まえて筆界を特定します。
Q6 筆界特定の申請は、誰が行うことになるのですか?
A6 土地の所有者として登記されている人及びその相続人などです。
Q7 筆界特定の申請はどこの法務局にしたらよいのですか?
A7 対象となる土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の筆界特定登記官に対して、筆界特定の申請をすることになっています。
Q8 申請に際しては、どのような書類や資料が必要なのですか?
A8 申請書に必要な事項を記載し、添付書類とともに提出する必要があります。また、手続きを迅速に進めるため、お手持ちの資料をできるだけ提出していただけると助かります。
Q9 筆界特定の申請に必要な手数料はどのくらいですか?
A9 申請手数料は対象土地の価額によって決まります。たとえば、対象土地(2筆)の合計額が4,000万円の場合、申請手数料は8,000円になります。
Q10 手数料以外に必要な費用について教えて下さい。
A10 手続きの中で、測量を要することがあり、そのときには、測量費用を負担する必要があります。
Q11 筆界特定がされた結果はどのように公開されるのですか? また、登記記録において公示されるのですか?
A11 筆界特定の対象となった土地を管轄する登記所において筆界特定書が保管されるので、筆界特定書の写しの交付請求等によって、公開されます。また、筆界特定の対象となった土地の登記記録に、筆界特定がされた旨が記録されます。
Q12 筆界特定の申請に関する相談窓口は、どこになりますか?
A12 最寄りの法務局又は地方法務局にお尋ねください。

法務省WEBサイト「筆界特定制度」より

高橋一雄
(株)測量舎 高橋一雄
ADR認定土地家屋調査士、測量士。平成9年測量舎を、平成18年に土地家屋調査士法人登記舎を設立し、誠実・確実・迅速を合言葉に年間100現場以上の境界確定測量を実施。

コラム一覧

ページの先頭へ