資産運用

ちょっとお得な資産経営の新常識

Date:2009年3月12日/執筆者:田村誠邦

不動産の利回りとは?

サブプライム問題から始まった世界同時不況の影響もあり、不動産の下落傾向が強まっています。こうした中で、中古のワンルームマンションや賃貸アパートなどの価格も下落し、二、三年前に比べれば、ずいぶん買いやすい価格になってきています。こうした投資用不動産の購入を考える場合に、多くの人が指標にするのが、その不動産の「利回り」です。しかし、不動産の利回りについて、正しい知識を持っている人は、思いの外、少ないようです。

一般に、多くの方が、不動産の利回りとして想定している考え方は、その不動産が満室となったときの年間賃料を不動産の価格で割った数字です。すなわち、式(1)のような考え方です。

上記の利回りは、最も一般的な不動産の利回りで、「表面利回り」とか、「グロス利回り」とか言われる「投資利回り」です。そして、この利回りの高い不動産ほど、投資に適した不動産だと考える方が多いようです。たとえば、この表面利回りが10%の賃貸アパートの方が、8%の賃貸アパートよりもお買い得というわけです。しかし、この考え方には、いくつかの重要な誤りがあります。

第一に、表面利回りと不動産のリスクとは反比例することです。言い換えれば、表面利回りの高い不動産ほど、投資リスクが高いと言うことになります。たとえば、満室時の年間賃料収入が同じ1千万円だとしたとき、東京都心部にある不動産Aと、地方都市にある不動産Bの比較をしてみます。不動産Aは、都心部の好立地にあり、入居希望者が多く、いつも満室に近い状態で、将来の賃料の値上げも見込め、転売することも容易だと考えられます。これに対して、不動産Bは、地方都市のはずれにあり、地域の衰退とともに賃料も下落傾向にあり、空室率も高く、空室になっても次の入居者が決まるまで長い時間が掛かり、いざ売却するときにも購入者を捜すのは容易ではありません。すなわち、不動産Bは、不動産Aに比べて、賃料の下落リスクや空室リスク、売却し難いというリスク(「流動性リスク」といいます)など、多くのリスクを抱えています。こうした場合、誰が考えても、不動産Bよりも、不動産Aの方が価値が高い、すなわち価格が高いはずだと考えられます。

実は、不動産の利回りの式(1)は、変形すると、次の式(2)になります。

同じ満室時の年間賃料であっても、東京都心部の好立地にある不動産Aの方が、地方都市のはずれにある不動産Bよりも価格が高いということは、式(2)から考えると、不動産Aの利回りは、不動産Bの利回りよりも低くないと理屈に合わないと言うことになります。たとえば、不動産Aの利回りが5%、不動産Bの利回りが10%だとすると、不動産Aと不動産Bの価格は、それぞれ、2億円(1千万円÷5%)と、1億円(1千万円÷10%)と求められ、リスクとリターンの関係が物件の価格に反映されるわけです。

このように、不動産投資においては、一般に、利回りの高い物件ほど、不動産投資にかかわるリスクが総合的に高い物件であるということができるのです。ですから、表面利回りの高い物件を追い求めることは、リスクの高い物件を探していることになるのだという原則を常に心にとめておくことが大切です。

第二に、式(1)で説明した表面利回り自体が、投資用の不動産を選択する基準としては不十分だということです。というのは、表面利回りは、不動産のもつ収益性を正しく反映した利回りとは言い難いからです。それでは、不動産投資を行う場合の判断指標として相応しい利回りとは、いったいどのようなものでしょうか。

式(3)は、プロの投資家が不動産投資を行う場合に通常用いられる「キャップレート」という利回りの考え方を示した式です。式(1)が、「満室時の年間賃料」を不動産の購入価格で割っていたのに対し、式(3)では、「償却前営業利益」を不動産の購入価格で割っています。実は、償却前営業利益は、不動産の収益力を最も的確に表す利益指標であり、これを不動産の購入価格で割ったキャップレートこそ、不動産の投資判断を行う上有用な利回りと考えられるのです。

償却前営業利益とは、想定年間賃料から想定年間費用を差し引いたものですが、これをもう少し詳しく見てみましょう。

  • 想定年間賃料=満室時年間賃料(貸室賃料収入+駐車場収入+共益費収入+その他収入)-空室・貸倒損失想定額
  • 想定年間費用=維持管理費+公租公課(固定資産税+都市計画税)+損害保険料+その他費用

すなわち、償却前営業利益とは、満室時年間賃料から、空室・貸倒損失想定額と、維持管理費、公租公課、損害保険料等の通常の営業費用を差し引いた利益なのです。満室時の年間賃料がどんなに高くても、空室・貸倒損失想定額が大きかったり、維持管理費、公租公課、損害保険料等の実際に流出する経費が大きかったりすると、その不動産から生み出されるキャッシュフローは少なくなってしまいます。ですから、不動産の実際の収益力を見るには、償却前営業利益で見ることが大切であり、それを不動産の購入価格で割ったキャップレート(「総合利回り」とか、「ネット利回り」と呼ばれることもあります)こそ、不動産の投資判断を行う上で、役に立つ利回りと言えるのです。

いかがでしたか。不動産の下落局面は、不動産投資を考える投資家にとっては、絶好の買場が訪れるチャンスでもあります。市場の状況をしっかりと研究し、不動産の利回りを正しく理解して判断し、チャンスの女神の前髪をつかんでみてはいかがでしょうか。

田村誠邦
(株)アークブレイン 田村誠邦
不動産鑑定士、一級建築士。東京大学卒。三井建設、シグマ開発計画研究所を経て独立。建築再生や建替えといった各種建築プロジェクトのコンサルタントとして活躍中。

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