資産運用資産運用

ちょっとお得な資産経営の新常識ちょっとお得な資産経営の新常識

Date:2009年5月14日/執筆者:田村誠邦

金持ち父さんに学ぶ「持ってはいけない資産」とは?

10年ほど前に発刊されたベストセラーに、『金持ち父さん貧乏父さん』(ロバートキヨサキ(著)、白根美保子(訳)、筑摩書房)という本があったことを覚えていますか。実際にこの本を読まれた方もいらっしゃると思いますが、私自身、この本を読んで、目から鱗で初めて気づかされたことも多く、いろいろな意味で参考になる本でした。

この本の最も優れている点は、個人の人生にとっての「バランスシート」の意味を、事例を交えてわかりやすく解説している点だと思います。不動産投資や資産形成に関する本は巷にあふれていますが、その大半は、「損益計算書」上の利益や利回りに関するものや、値上がり益といった不確実な期待に係わるものであり、実際の投資判断や資産形成に役立つものは数少ないのが現状です。そうした類書に比べて、この本は、「バランスシート」と「損益計算書」の関係、さらに言えば、「バランスシート」と「キャッシュフロー」の関係を、誰にでもわかる表現で伝えているのです。

さて、この「金持ち父さん貧乏父さん」の中に、「資産」の定義が出ているのですが、この定義は、投資家や資産家を目指す方々、土地オーナーの方々には、是非、覚えておいてもらいたい定義です。金持ち父さん(つまり、ロバートキヨサキ)の定義によれば、「資産とは、あなたのポケットにお金を入れてくれるもの」であり、「負債とは、あなたのポケットからお金を奪っていくもの」だと言うのです。そして、金持ち父さんは、ひたすら、「資産」を増やすことに注力し、「負債」を持たないようにすることが大切だと説いています。

もちろん、この定義は、一般的な資産の概念とは全く異なるでしょう。「資産」とは、一般には、現金や証券、土地、建物、自動車など、いざとなれば現金化できるものすべてを指す言葉と考えられています。ですから、マイホームや土地など、不動産と呼ばれるものはすべて資産と考えられています。しかし、金持ち父さんの定義では、キャッシュフローを生み出さないものは、資産ではないというのです。

たとえば、マイホームのことを考えてみましょう。マイホームは通常は住宅ローンを利用して購入します。したがって、マイホームを持っている人の多くは、毎月、住宅ローンの元利の返済を行っています。また、マイホームには、固定資産税などの税金や修繕維持費などの費用がかかります。その一方で、マイホームを持っていても、一銭もお金を稼ぐことはできません。つまり、マイホームは、「あなたのポケットからお金を奪っていくもの」であり、金持ち父さんの説によれば、「資産」ではなく「負債」であることになります。ですから、金持ち父さんは、マイホームなど持つべきでないというのです。

マイホームが、「資産」ではなく、「負債」であるなんて、多くの人には受け入れがたい考え方でしょう。実際、マイホームにはお金に換えられない価値があると思う人は多いでしょうから、金持ち父さんの説に賛成するかどうかは、個人の考え方次第だと思います。しかし、不動産投資や資産経営を成功させるためには、この金持ち父さんの考え方を身につけることがきわめて重要です。というのは、不動産投資や資産経営を目指している人の中にも、「資産」ではなく、「負債」ばかりを買っている人が多いからです。

たとえば、マンションやアパート、戸建ての別荘等への不動産投資も、物件内容や資金計画によっては「負債」となってしまうことがあります。たとえば、頭金100万円くらいで、2,000万円程度の投資用不動産を全額長期ローンで購入し、毎月8万円程度の家賃収入を得られるという場合、いわゆる、投資利回りは、年間収入96万円を物件価格2,000万円で割った4.8%ということになります。購入の諸経費に100万円掛かったと仮定して、2,000万円の30年ローン(年利4%)を組んだとします。月々の管理費や固定資産税などの費用を賃料収入の20%だと仮定した場合、この投資用不動産の毎月のキャッシュフローは、次のようになります。

  • (収入)
  • 賃料収入:80,000円
  • (支出)
  • 元利均等返済額:95,483円
  • 管理費等経費:16,000円
  • 支出計:111,483円
  • (差引)
  • キャッシュフロー:△31,483円

つまり、この投資用不動産は、あなたのポケットから毎月31,483円のお金を奪っていく商品なのです。金持ち父さんの定義では、これは間違いなく、「負債」であり、買ってはいけない商品だということがおわかりでしょう。30年間ローンを払えば、すべて自分のものになり、老後の年金代わりなるという説明もありますが、キャッシュフローのマイナス(上記の計算では毎月31,483円)を30年間も覚悟するくらいなら、その分を30年間貯金した方がまだましではないでしょうか。

多くの方が「資産」だと思って投資したり保有したりしているものが、実は「負債」に過ぎないということはよくあります。たとえば、収入を生み出さない遊休地は、固定資産税などの支出を伴うだけの「負債」なのです。こうした「金持ち父さん」の考え方で、いま一度、ご所有の「資産」を見直して、「ポケットからお金を奪うもの(偽物の資産=負債)」を「ポケットにお金を入れてくれるもの(本物の資産)」に、組み替えてみてはいかがでしょうか。

田村誠邦
(株)アークブレイン 田村誠邦
不動産鑑定士、一級建築士。東京大学卒。三井建設、シグマ開発計画研究所を経て独立。建築再生や建替えといった各種建築プロジェクトのコンサルタントとして活躍中。

コラム一覧

ページの先頭へ