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Date:2011年1月5日/執筆者:田村誠邦

マンションの価値を見直す(1)マンションのストックとその耐震性

今や、都市部での典型的な居住形態となった分譲マンション。しかし、その本当の価値については、どれだけ多くの人が理解しているのでしょうか?

新築時から中古流通時、そして、大規模修繕や建替え時まで、マンションの価値は物件ごとに、また時代の変化の中で様々に姿を変えていきます。自分で購入して住むにせよ、投資用に購入して賃貸するにせよ、都市部の不動産マーケットの中で大きなウエイトを持つ分譲マンションについて、正しい知識を持つことが大切ではないでしょうか?

こうした観点から、このコラムでは数回に分けて、様々な角度から、マンションの本当の価値について探っていくことにします。

マンションストックの現状

国土交通省の調べによれば、平成21年末現在で、全国の分譲マンションストック戸数は、約562万戸。約1,400万人の居住者が住んでいます(図1)。

マンションの耐震性とは

マンションストックを考える上で重要な指標の一つに、マンションの耐震性があります。

建物の耐震性の基準は、何回かの見直しがありましたが、その最大のものは、昭和56年6月1日から施行された「新耐震基準」で、これが現在に至るまで建物の耐震性に係わる基準として利用されています。この新耐震基準施行以前に、建築確認申請を受けて建設された建物は、旧耐震の建物と言われ、現状の耐震基準に照らし合わせると、耐震性に問題があると言われています。実際、阪神淡路大震災のときの被害状況を見ると、明らかに旧耐震の建物の方が新耐震の建物よりも被害状況が大きいことが分かっています(図2)。

マンションの場合、昭和56年以前に建設されたストックは、約106万戸あまり。また、昭和57、58年に完成したマンションの中にも、新耐震基準が施行された昭和56年6月1日以前に建築確認申請を受けて建設されたものも数多くありますので、実際には、旧耐震のマンションは、約120万戸程度と考えられます。

もちろん、この旧耐震のマンションの中にも、現行の新耐震基準並みの耐震性を持つ建物もあります。例えば、郊外団地などに見られる4、5階建ての壁構造の階段室型マンションなどは、現行基準並みの耐震性を備えたものが数多くあります。ですから、「旧耐震のマンション=耐震性に問題あり」と断定することはできませんが、建物の耐震性に問題がある可能性が高いことは確かです。

そうした意味からは、昭和58年以前に建設されたマンションについては、「耐震診断」という建物の耐震性に係わる専門家の診断を受けて、その耐震性について確認しておくことが賢明です。なお、耐震診断については、また別の機会に詳しく触れることにします。

一方、新耐震のマンションは地震が来ても壊れないのでしょうか?

新耐震基準の建物の場合、震度5程度の地震では、外壁等に軽微な被害が起きるが、柱や梁などの構造部材には大きな被害が起こらず、建物そのものの機能は保持され、補修すれば建物の使用を継続できる程度とされています。また、震度6程度の大地震では、建物に一定程度の損害が発生しても倒壊・崩壊には至らず、人命を確保できる程度の被害で済むとされています。

つまり、新耐震の建物でも、地震の規模によっては建物の被害は想定されており、ただ、震度6程度の大地震時にも、建物の倒壊・崩壊は免れ、内部の人命が確保される基準となっている訳です。

中古マンションを購入する場合は耐震性にご注意を

もちろん、耐震偽装問題のように、新耐震基準を用いたはずの建物であっても、構造計算に偽装があったり、施工ミスや手抜き工事があったりした場合には、所定の耐震性は維持できない訳ですが、図2に示した阪神淡路大震災における被害実態を見ても、確率的には、新耐震の建物と旧耐震の建物との安全性には、大きな違いがあるものと考えられます。

こうしたことから、中古マンションを購入する場合、新耐震の建物であるか旧耐震の建物であるかは、ある意味では決定的に、建物の価値に違いがあるという事実を知っておく必要があるでしょう。なお、前述のように、昭和57年以降に完成した建物であっても、実際には、旧耐震の建物もありますので、新耐震の建物であることを確認してから購入することをお勧めします。

一方、現実の中古マンション市場においては、昭和50年代後半に完成した新耐震のマンションと、昭和50年代半ばに完成した旧耐震のマンションの間には、それほどの価格差が生じていないという現実があります。これは、耐震基準の違いによる安全性の違いについての理解が、一般の購入者には十分には浸透していないという事実や、築30年近くのマンションでは、築年数よりも立地や利便性をもとに価格が形成されやすいという中古マンション市場の特性のためと考えられます。

しかし、既に中古オフィスの流通市場では、旧耐震のオフィスビルは、耐震診断の結果、耐震性に問題がないと証明されるか、耐震補強を行わない限り、まともなファイナンスも買い手もつかないと言われています。中古マンションについても同様の状況になる日も近いのではないでしょうか。

最近、スケルトンリフォームとかフルリノベーションとか言われる中古マンションの商品が多く出回っています。これらは、中古マンションを専門業者が買い取って、その住戸の内装や設備を、スケルトンの状態まですっかり除去してから、内装や設備を最新のものにリフォームした商品です。

確かに、従来の中古マンションとは一線を画した魅力的な物件も多いのですが、これらの中にも、旧耐震のマンション内の物件が混じっていることがあります。旧耐震のマンション内の一室にスケルトンリフォームを行った場合、住戸内は新築同然であっても、建物全体の構造安全性は、耐震補強を建物全体で行っていない限り、旧耐震のままです。構造安全性に問題がある可能性があることを認識しておく必要があるのです。

このように、中古マンションを見る場合、その耐震性についてチェックすることは、生命の安全性を確保する意味でも、財産価値を確保する意味でも、極めて重要なポイントですが、現状の中古マンション市場の中では、必ずしも十分な考慮が払われていないので、十分に注意しておく必要があるのです。

次回は、新築マンションの原価について、とりあげます。

田村誠邦
(株)アークブレイン 田村誠邦
不動産鑑定士、一級建築士。東京大学卒。三井建設、シグマ開発計画研究所を経て独立。建築再生や建替えといった各種建築プロジェクトのコンサルタントとして活躍中。

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