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タワマン節税は本当に終わったのか?タワマン節税は本当に終わったのか?

レッツプラザ2016年6月号/執筆者:阿藤芳明

タワーマンションを利用した相続税の節税策、いわゆるタワマン節税が新たな局面を迎えています。一部には、もうこの手法は使えないといった声もある程。
確かに税務当局からその評価方法を否認された事例も見受けられます。
では、そもそもなぜこの節税対策が問題となり、さかんに議論がされているのでしょうか。
もはや本当に有効な対策にならないのでしょうか。
その問題点と今後の展開について考えてみましょう。

タワマン節税の仕組み

まず、この節税策の仕組みを確認しておきましょう。相続税を計算する場合、財産の評価方法は、実務的には国税庁が定めた「財産評価基本通達」というルールブックに基づいておこなわれるのが一般的です。本来これは税務職員が業務をおこなうためのものですが、公表されているため我々税理士もこれに従って評価の作業をおこなうことが多いのです。

この通達においては、マンションを土地と建物に分解し、それぞれの財産として計算をおこなったうえで、その合計額を評価額としています。土地は敷地全体を評価し、各自の持ち分割合を乗じて算出します。マンションは土地の立体利用のため、高層マンションになればなるほど、建物全体の床面積が増えて持ち分が少なくなります。そのため各戸の土地部分の価額は小さなものになるでしょう。建物は固定資産税評価額で計算します。この固定資産税の評価額ですが、これも建物全体の評価額をもとに、各戸の持ち分割合で按分して算出したものが個別に通知されるので、これによって計算します。

この方式で計算すると、持ち分割合は部屋の広さだけで決めているため、同じ広さの部屋であれば、1階でも最上階でも相続税の評価額は同額になります。一方、そのマンションの販売価格は、一般論として下層階より上層階の方が高いことが多いでしょう。眺望や陽当たりを考慮して、上層階は人気があるからです。つまり、タワーマンションの高額な高層階を取得すれば、相続時にはその取得価額に比して相当程度低い評価額で計算されることになる訳です。その結果、実勢価額との差額が節税できたことになるのです。

国税庁にも評価方法改正の動きが

それでは実際にどの程度の評価差額が生じているのでしょうか。平成26年に国税庁がおこなった実態調査によれば、全国にある20階以上の住戸343物件のうち、相続税評価額が平均で実勢価額の3分の1になっていたそうです。これが発端となり放置できないということで、従来の評価方法についての見直しが議論されるようになったのが実態なのです。そして階数ごとに10%、20%等の加算・減算をする方法もひとつの試案だと新聞で報道された経緯がありました。このことから、一気にタワマン節税はもう終わったかのような誤解が生じているのです。

評価について問題があるのは確かな事実です。ただ、事はそれほど単純ではないため、具体的な評価方法の改正までにはまだ時間がかかるのではないか、と筆者は考えています。なぜ、単純ではないかというと、建物の評価方法について、そもそもの考え方に無理があるからです。

固定資産税と相続税の考え方の相違

冒頭の「財産評価基本通達」では、建物の評価は固定資産税評価額を基におこなうと述べました。しかし、本来相続税における財産の評価は、相続開始時、つまり亡くなった時点での“時価”によることが相続税法という税法で規定されています。時価とは何かということについては後述します。ただ、固定資産税の考え方は、ひと言で言えば建物の物理的な価値に着目しているのです。構造が鉄筋なのか木造なのか、骨材の厚さは何ミリなのか、壁や床の材質は何か等々に着目して評点方式での積み上げ計算です。さらには建物の用途までをも勘案して最終的な評価額を決めているのです。そうすると、全く同じ構造、全く同じ用途、材質の建物であれば、どの場所にあっても評価額は同じになるはずなのです。

しかし、前述の財産評価基本通達では、“時価”の考え方について、「それぞれの財産の状況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引がおこなわれる場合に通常成立すると認められる価額」であると明言しているのです。建物である以上、どの場所にあるかにより、収益性や利便性の違いから、その価値は異なることがあるのではないのでしょうか。固定資産税の考え方のように、銀座の4丁目に建っていても、地方都市の駅前に建っていても、全く同じ建物なら、その価値は同じなのでしょうか。

相続税においても、単純に建物の物理的な価値だけで判断していいのでしょうか。

結論を先に言ってしまいましょう。相続税における建物の評価において、相続税本来の考え方と異なる観点で評価している固定資産税評価額を採用すること自体に無理があるのです。しかし、現実問題として、相続や贈与の度ごとに、税務署が一つひとつの建物を評価することは不可能です。そこで、ひとつの指標である固定資産税の評価額を利用しているに過ぎず、一種の割り切りなのです。

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