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賃貸経営のリスクを考える(2)

ちょっとお得な資産経営の新常識

賃貸経営のリスクを考える(2)
 前回は、賃貸経営の7つの特徴を紹介し、総括すると、「賃貸経営は、事業開始前の経営判断に基づく条件設定で、開業後の長期的な市場リスクを見込まなければならない比較的リスクの大きい事業である」というお話しをしました。

 今回からは、賃貸経営のリスクとその軽減策について、より具体的に見ていくことにしましょう。
賃貸経営のリスクの分類
 賃貸経営のリスクについては、いろいろな分類方法が考えられますが、ここでは、次のように7つのリスクに分類することにします。

(1)初期投資上のリスク
(2)資金返済上のリスク
(3)マーケットリスク
(4)法的リスク
(5)制度的リスク
(6)物理的・機能的リスク
(7)流動性低下リスク

 以下、上記の7つのリスクについて、ひとつひとつ説明するとともに、その軽減策について、考えてみたいと思います。
初期投資上のリスク
 賃貸経営は、立地や敷地の個別性に依存するとともに、事業開始当初の条件設定で、その後の長期的な収益構造が規定される事業です。このため、初期投資の誤りにより、その後の事業経営に支障が生じることがしばしばあります。ここではまず、主な初期投資上のリスクを列挙してみましょう。

・立地判断の誤り
・投資規模の誤り
・建物等の高値での取得(投資時期の誤り)
・過度に借入金に依存した資金調達
・事業開始までの時間的リスク(地権者合意、許認可、近隣同意等)
・事業開始までの法的リスク(借地問題、借家問題、抵当権・不良債権処理等)
・建物の設計・機能上の設定条件の誤り、施工不良等

立地判断の誤り
 まず、「立地判断の誤り」です。賃貸経営は、基本的には立地商売であり、賃貸需要の強弱により、その収益性は大きく左右されます。特に、今後、人口減少傾向が加速する、わが国の人口動態を考えると、現状で賃貸需要の少ないエリアでの不動産ビジネスの新規投資は、相当慎重に考える必要があります。

 もちろん、どのエリアにも、それなりの賃貸需要は存在するので、その賃貸需要の強さ(1m²あたりの賃料単価と空室率の状況等)に応じた不動産ビジネスを展開すれば、どのエリアにもチャンスがあることは事実です。

 例えば、築年数の経った賃貸物件を相場よりも相当に低い額で仕入れて、自己資金比率を高めて、高利回りで運用するといったタイプの投資スタイルが考えられます。しかしながら、こうした手法は、誰にでもできるものではなく、経験と知識を備えたプロが扱える範疇でしょう。

 また、土地オーナーの多くは、自分が所有している敷地を、多かれ少なかれ過大評価する傾向があります。本来ならば、賃貸経営に向いていない立地に、建設業者などの勧めで無理な投資を行うケースや、需要がそれほど強くないのに、過大な規模の投資を行うケースが典型です。

 例えば、一括借り上げ保証を付けることを条件に、賃貸需要の少ないエリア(例えば、郊外や地方の駅からバス便の農地などが混じる住宅地)に新築の賃貸住宅を建てるケースがよくあります。

 賃貸住宅の建設業者が、自ら、もしくは系列の不動産会社などによる一括借り上げ保証を付ける約束で、賃貸アパートなどを建てる訳ですが、賃料保証の期間はせいぜい10年程であり、しかも、空室が増えてくれば、賃料は相場に応じて下げることになります。つまり、ずっと定額の賃料収入が保証されている訳ではないのです。しかも、一括借り上げを行っている企業の経営が行き詰れば、こうした保証は無に帰してしまうのです。

投資規模の誤り
 これも、賃貸経営で極めて多い誤りの一つです。土地オーナーが賃貸ビジネスを始める際には、ゼネコンや工務店、ハウスメーカーなどの施工会社から、土地活用の提案を受けて事業の検討を行う場合が多いでしょう。

 こうしたケースでは、提案される建物の規模は、その敷地に建てられる最大限の規模で提案されることが多いのです。これは、土地を物理的に最大限に生かした提案ですので、土地オーナーは何の疑問も持たずに、提案を受け入れることが多い訳です。

 しかし、賃貸ビジネスにおいては、敷地に建てられる最大限の規模の賃貸用建物を建てることが、その土地の最善の活用方法とは限りません。

 なぜなら、賃貸ビジネスにおいては、建物規模を大きく、すなわち投資規模を大きくして賃料収入を最大化することよりも、その地域の賃貸需要を考慮したリスクの少ない適正規模の投資を行うことの方が望ましいからです。

 地域の賃貸需要を考慮せずに投資規模を大きくすることは、借入金額を増大させるとともに、空室リスクを高め、結果的に、借入金の返済リスクを高めることに他ならないのです。

 したがって、賃貸ビジネスにおいては、まず、マーケット調査により、その地域の賃貸需要を把握し、土地オーナーの所有する他の資産とのバランスも考慮しながら、適正規模の投資を心がけることが大切なのです。

 次回は、今回の続きとして、初期投資上のリスクの残りの項目を取り上げます。
 
2012/01/17

不動産鑑定士、一級建築士。東京大学卒。三井建設、シグマ開発計画研究所を経て独立。建築再生や建替えといった各種建築プロジェクトのコンサルタントとして活躍中。

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