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前回は、賃貸経営に係る7つのリスクのうち、資金返済上のリスクについて取り上げました。今回は、マーケットリスクについて、具体的に見ていくことにしましょう。 |
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不動産賃貸事業におけるマーケットリスクとは、不動産市場というマーケットの変化に伴うリスクです。様々リスク要因のうち、マーケットリスクは、ある意味で、賃貸事業を行う上で避けることのできないリスクと言えるものですが、これも、長期的な需要動向調査等により、ある程度は事前に予測できるはずです。
主なマーケットリスクを整理すると次のとおりです。
◯空室率の上昇、賃料の下落
◯地域の活力低下等による賃貸需要そのものの縮小
◯市場慣行の変化
◯市場価値(不動産価格)の下落、担保価値の下落 |
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なお、借入金利の上昇等も、金融市場の変化に伴うリスクであり、ある意味でマーケットリスクと言えますが、ここでは、不動産市場というマーケットの変化に伴うリスクに絞って取り扱うことにします。
空室率の上昇、賃料の下落
空室率の上昇と賃料の下落は、典型的なマーケットリスクで、この2つの要因にはトレードオフの関係にあることは、既に資金返済上のリスク要因の項で紹介したとおりです。そこでここでは、特に住宅の空室率について、マクロの視点からいくつか有用なデータを紹介することにしましょう。
(1)全国レベルの住宅ストック数・空家率の推移
2008年の住宅・土地統計調査によれば、全国の世帯数は5,759万戸であり、また、居住世帯のある住宅は4,960万戸で,総住宅数の86.1%を占め,空き家などの居住世帯のない住宅は799万戸(13.9%)となっています。つまり、約7.2軒に1軒は空き家であるということになります。
(2)全国平均及び主要都市の空室率の状況
下図は、全国平均及び主要都市の2003年及び2008年の賃貸住宅の空室率を表したものです。2008年の賃貸の空室率は、全国平均で18.7%に達しており、なかでも、札幌市(21.3%)、仙台市(21.2%)は20%を超えており、次いで、福岡市(19.1%)、大阪市(18.9%)の順に高くなっています。
これらのうち、札幌市と福岡市は、いずれも2003年に比べて空室率が5%以上も急激に増加していますが、その大きな原因は、ファンドなどによる不動産投資の急増と考えられます。また、こうした諸都市に比べると、東京23区(13.6%)と横浜市(14.7%)は、比較的低い空室率で安定的に推移していることが分かります。
地域の活力低下等による賃貸需要そのものの縮小
これは、本格的な人口減少時代を迎える今後の賃貸経営において、最も注意すべきリスクの1つと考えられます。特に、地方圏などで、特定の企業などに、その地域の経済が依存している場合には、その企業がその地域から撤退した瞬間に、その地域での雇用や消費が大幅に減少し、大幅な人口減少と地域経済の衰退が起こる可能性が高いのです。企業のグローバルな競争が激化する中で、こうした傾向は今後ますます加速していくものと考えられ、こうしたリスクが顕在化する可能性はますます高まるものと考えられます。
市場慣行の変化
市場慣行の変化も、ここ10年ほどの間に、徐々に高まりつつあるマーケットリスクの1つです。もともと、わが国の不動産市場は、海外からは閉ざされた市場であり、独自の市場慣行を築いてきました。例えば、敷金、礼金、更新料などの一時金の制度、正当事由なしに契約期間満了時に退去を求められない普通借家権や旧法借地権、原状回復の制度などです。しかし、こうした市場慣行についても、徐々に変化の兆しが表れています。
一例を挙げれば、敷金と礼金については、ここ2~3年の間に、急速にその水準が低下しています。東京地区の賃貸住宅では、以前は、敷金2ヶ月、礼金2ヶ月程度が通常の水準でしたが、いずれも1ヶ月程度が当たり前になりつつあり、礼金なしの募集条件もそれほど珍しくはない状況となっています。
ここで問題となるのは、敷金ゼロ、礼金ゼロを謳って入居者を募集するケース(いわゆるゼロゼロ物件)が急増していることです。入居者にとってみれば、ゼロゼロ物件は入居費用の大幅な低減になり、きわめて好ましい傾向のように見えますが、ゼロゼロ物件で家賃を滞納した場合には、入居期間中の入居者の債務不履行を担保するものがなく、結果的に、きわめて厳しい取り立てが行われたり、入会金や会員維持費用といった敷金礼金以外の名目での金銭の徴収が行われたりするなど、トラブルが続出しているようです。
このうち、礼金については、貸主が有利な時代の賃貸市場の市場慣行であり、現在ではその存在意義は薄いものと考えられます。しかしながら、敷金については、入居者の入居期間中の債務不履行を担保する性格のお金であり、我が国の不動産賃貸借契約には、必要不可欠なものと考えられます。
なぜなら、入居者、すなわち借家人の権利は、わが国では借地借家法によってきわめて手厚く守られており、貸主である賃貸経営者は、賃料不払いなどの入居者の債務不履行に対して、あらかじめ敷金を徴収することにより、リスクを軽減して賃貸経営を行ってきたからです。
こうした歴史的な経緯も踏まえずに、敷金をゼロにすることは、支払い能力の低い入居者を集める危険性もあり、貸主にとっては大きなリスクとなります。また、ゼロゼロ物件の場合、仲介手数料は通常通り、貸主と入居者の双方から家賃の1ヶ月分を徴収するのが通常ですので、入居者募集業者の側は全く負担を負わずに、安易な客付が行われる危険性が高くなる訳です。
このように、市場慣行の変化には、時代の変化に伴う必然的なものもあれば、我が国独自の法制度などからみて、不自然で定着しづらいものもあるようです。最近では、更新料の違法性を問う裁判などもあり、今後も、こうした市場慣行の変化には、十分に留意しておく必要があります。
市場価値(不動産価格)の下落、担保価値の下落
これも、市場の需給関係の変化に伴う典型的なマーケットリスクの1つです。賃貸経営に、不動産価格の下落や担保価値の下落がどう影響するのか、疑問に思われる方が多いかもしれませんが、賃貸経営の継続が困難となった場合には、最終的に、賃貸物件としての土地と建物を市場で売却して、借入金等の債務を返済し、事業を清算する必要があります。このときに、不動産価格の下落があると、事業の清算そのものが単独では困難となるなど、大きな影響がある訳です。
また、賃貸事業を開始する際の資金の借り入れや、事業途中での返済条件の見直しなどの際には、担保価値が十分にあることが不可欠であり、担保価値の下落、すなわち、不動産価格の市場価値の下落は大きな影響があります。特に、3~4年ほど前のミニバブルの時期に、一部の外資系金融機関などで盛んに利用されたノンリコースローンの場合には、担保価値の減少が、返済条件の悪化や借り換え不能、すなわち、事業の破綻にもつながることが多く、注意が必要です。
ノンリコースローンとは、返済が不能となった際に、担保の対象となっている物件を手放せば、ローンの借り手にとっては、その後のローン返済を免れるタイプのローンで、不動産証券化等の普及に伴い、我が国にも導入されたローンです。
米国の住宅ローンの大半がこのノンリコースローンと言われており、ローンの借り手の信用力(年収、勤務先、勤続年数、銀行との取引状況等)を重視する我が国の融資に比べて、不動産そのものの市場価値や収益力に重きを置いた融資制度と言えます。
しかしながら、このノンリコースローンは、毎年の市場価値の見直しを前提としており、市場価値が一定の条件以上に下落した場合には、ローンそのものの借り換え(リファイナンス)ができないという深刻な事態になる訳です。こうした事態を防ぐためには、通常のリコースローンとするか、借入金比率を引き下げておく必要があります。
このように、賃貸経営を行うに当たっては、物件そのものの市場価格の動向にも、十分に留意しておく必要があります。
次回は、法的リスクについて、取り上げます。 |
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| 2012/02/22 |
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