レッツプラザホーム > すまいとくらし > 老後は施設で暮らしたい
世の中には「持つ者」と「持たざる者」がいます。 「持たざる者」からみれば、不動産の悩みなんて贅沢な悩みに見えるでしょう。 でも、今は「不動産を持っているだけでバラ色」とはいきません。 不動産はうまく活かして初めて、持ち主をハッピーにする資産に「なる」のです。 このコラムでは、そのための頭の整理方法と問題解決のヒントをご紹介します。 さて、今回は69歳になる多喜子さん。老後は環境のよい高齢者施設で暮らしたいと考えていますが、ご主人もお子さんも大反対です。
「先日、高齢者施設に入居している独身の友人を訪ねて驚きました。ロビーもレストランもまるで一流ホテルみたいに素敵で、入居者の表情も明るく、皆さんとってもお洒落です。プールやホールや広いお庭もあって、ため息が出るような環境でした。友人もスイミングや社交ダンス、絵画まで始めたそうで、以前より見違えるほど若々しく綺麗になっていました。 入居されている方々も交えて会食したのですが、口々に『ここに入って人生が変わったわ、安心だし、楽しいのよ』とおっしゃいます。横浜へも無料バスが出ていて観劇や買い物にも出掛けるとか。お部屋にはキッチンもあって自炊もできるし、ちょっと狭めの高級マンションって感じ。万が一のときも万全の介護が受けられるそうです。友人は『ここが私の終の住処。もう、なんの心配もないわ』と言っています。 夫も私も健康ですが、10年後、20年後はわかりません。『こんな施設なら安心だわ』と思い、その後も数回友人を訪ねて施設のシステムや料金についても教えてもらいました。一般的な施設に比べると高いけれど、自宅や不動産を有効活用すれば、100歳まで長生きしても十分に年金と運用益で賄えるようです。親が残した屋敷や不動産の固定資産税や維持費を考えると、こちらのほうが安上がりかもしれません。 そこで主人や息子たちに話したんですが、『老人ホームなんて冗談じゃない!』と主人は怒り出すし、息子たちも『親戚からなんと言われるか、考えてくれ』と大反対。でも、実際にどちらかが介護が必要になったとき、遠方の息子たちや嫁には頼れません。「子どもたちには頼らず、残さず」と割り切って、財産も整理し、こうした施設で家事から解放されて趣味やスポーツを楽しみたいと思うようになりました。 主人はこの話になると不機嫌で、『どうしても入りたいなら、俺を看取ってからにしてくれ』なんて言いますが、もし、私が先に倒れたらどうなるのでしょう。だからこそ入居を検討しているのに、どうして男ってこんな簡単なことがわからないのかしら?」
多喜子さん、私のまわりにもたくさんいらっしゃいますよ、「親の老後は子どもが看るもの。老人ホームだなんて酷い」という老人ホームアレルギーの人。実際、多喜子さんがご覧になったような高齢者施設はまだ数が少なく、一般的に「老人ホーム」に対するイメージもあまり良くありませんから、ご主人や息子さんたちが拒絶反応を起こすのも「一般的な反応」かもしれません。 実は私も、最近、米国式の設計と運営を取り入れた最先端の高齢者施設を視察して、目からウロコでした。施設の善し悪しは入居者の表情を見ればわかります。これはもう、「百聞は一見にしかず」。ご主人や息子さんたちにも施設を見てもらうことが一番だと思います。 また、多喜子さんのように「(子どもには)頼らず残さず」という考え方の方が増えています。「家族崩壊だ」と嘆く方もいますが、私は必ずしもそんなふうには思いません。共働きが増えるなかで、仕事と育児と介護の両立は大変です。特に介護はどんな形にせよ、プロの手が必要になります。育児と介護で無理を重ね、心身ともにボロボロになり、家族関係も修復不可能なほど険悪になることも少なくないのです。 私見ですが、互いに無理をせず、自分らしく自由に生きるには、こうした高齢者施設も選択肢の一つではないかと思います。私が視察した施設でも、お子さん家族がよく訪ねてくるケースが多いそうで、和やかにレストランで会食されている姿も拝見しました。互いに気兼ねも無理も少ないから、返って訪ねてきやすいのかもしれません。ただし、契約する前には専門家に契約内容を見てもらい、運営主体の財務状況なども調査することを忘れずに。 もうひとつの効用は、こうした機会に財産の「棚卸し」と人生の再設計ができることです。多喜子さんも気づかれているように、広い自宅やあまり活用していない不動産は、はっきり言って金喰い虫です。プロの知恵も借りて処分するなり、有効活用するなりして「長生きすればするほど楽しい!」と思える人生設計を立てたいものです。実際に、ストレスが少なく、好奇心が旺盛な人ほど健康で長生きするそうですよ。
不動産ジャーナリスト。1978年、青山学院大学卒。「住宅画報」編集、「住宅新報」記者を経て1995年に独立、専門誌や経済誌を中心に住宅・不動産関係の記事を執筆する。