レッツプラザホーム > すまいとくらし > 老後も犬や猫たちと暮らしたい
世の中には「持つ者」と「持たざる者」がいます。 「持たざる者」からみれば、不動産の悩みなんて贅沢な悩みに見えるでしょう。 でも、今は「不動産を持っているだけでバラ色」とはいきません。 不動産はうまく活かして初めて、持ち主をハッピーにする資産に「なる」のです。 このコラムでは、そのための頭の整理方法と問題解決のヒントをご紹介します。
「父が獣医で、家にはいつも犬や猫がいました。一人っ子の私にとって彼らが兄弟であり、遊び相手でした。26歳で見合結婚をしましたが、うまくいかず、離婚して実家に戻りました。傷ついた心を癒してくれたのも犬や猫たちでした。ほどなく、父が倒れて半身不随に……。以来、病弱な母に代わって、父の介護や犬や猫たちの世話、家事一切を切り回してきました。『大変ね』と言われましたが、ぎすぎすした結婚生活より、ずっと心穏やかで幸せな毎日でした。しかし、6年前、相次いで両親を看取り、今後のことを考えるようになりました。 両親から自宅のほか貸地や駐車場などを受け継いだので、経済的な心配はありません。自宅の敷地は300坪。動物病院を併設していた家はひとり暮らしには広すぎ、老朽化も目立ちます。また、昔から動物好きとして知られていたため、門の前に子犬や子猫が捨てられたり、老犬が縛り付けられたりしていることもありました。保健所に持ち込めば殺処分されてしまいます。今いる犬や猫の大半がそんなふうにしてウチの仔になりました。 60歳を迎え、今後の人生を考えています。私の望みは犬や猫たちと暮らし続けること。地元の動物愛護団体で、里親が見つかるまでの間、保護犬を預かるボランティアも始めました。心身ともに傷ついた犬や猫が愛情を知り、見違えるように変わっていく様子は感動的です。しかし、私に何かあったら、と思うと心配になります。子供もいないので、手持ちの資産を活用して不安を解消し、命ある限り、不幸な動物たちを助け、共に暮らしていきたいと願っているのですが……。」
静江さんは優しい方ですね。我が家でも8年ほど前、動物愛護団体から3頭の犬を譲り受けて暮らしていますので、静江さんの気持ちがとてもよくわかります。しかし、一方で、心優しいばかりに、捨て犬や捨て猫を受け入れすぎて飼育しきれなくなったケースも見てきました。静江さんは決してそんなことにはならないと思いますが、年齢を重ねれば、毎日の散歩や老犬の介護、通院なども大変になってくるでしょう。また、広いお屋敷に一人暮らしでは防犯や防災上心配ですし、捨て犬や捨て猫をされてしまう一因にもなっているように思えます。 知人の税理士さんから聞いたケースをご紹介しましょう。70代の裕福な未亡人のお話です。ご主人を亡くされ、愛犬のナナちゃんと暮らしていましたが、古いお屋敷を素敵な自宅兼賃貸住宅に建替え、コの字型の建物の中心にドッグラン(犬の運動場)をつくりました。ドッグラン付きの賃貸住宅は極めて少ないので大人気になり、犬を介して非常に良いコミュニティが生まれたそうです。愛犬のナナちゃんは12歳と高齢でしたが、すっかり若返り、ドッグランで他の犬たちと走り回っているとか。 このドッグランはご近所の愛犬家グループにも開放しているそうです。平日の昼間も人の目があるため、「防犯上も安心」と、入居者も喜んでいます。ふさぎがちだった未亡人もご近所の方々との交流が増え、元気になられました。『年齢的にもナナが最後と思っていましたが、今はご近所の犬たちが懐いてくれて、みんな自分の仔のよう。もし、私が入院しても、ナナを預かってくれるという人もいますし、こんなに安心で幸せなことはありません』と、笑顔、笑顔の毎日だそうです。蛇足ですが、賃貸住宅にすることで家賃が入るだけでなく、固定資産税なども軽減されました。 これはひとつの例ですが、70代でも夢をかなえた人がいるのです。静江さんもぜひ夢をかなえてください。自分自身と大切な「家族」のために。そして、静江さんのボランティア活動によって助かるであろう、いくつもの命のために。
不動産ジャーナリスト。1978年、青山学院大学卒。「住宅画報」編集、「住宅新報」記者を経て1995年に独立、専門誌や経済誌を中心に住宅・不動産関係の記事を執筆する。