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ディズニーのまちにみる多様性

住まいとまちの計画学

ディズニーのまちにみる多様性
  アメリカのフロリダ半島のまん中あたりに、オーランドという都市がある。ここは、ディズニーワールドがあることで有名なので、日本でも、その方面が好きな方にはお馴染みの都市だ。オーランドには、ディズニーワールドだけでなく、ユニバーサルワールドなどもあったりして、ほぼ完全なリゾート都市である。アメリカ国内のみならず、世界各国からここを目指して観光客がわんさかやってくる。

 昨年、ここに訪れてみた。研究目的なので、もちろんディズニーワールドは門を拝んだだけだ。目的地は、ディズニーが開発した住宅地、セレブレーションである。より正確に言えば、ディズニーの関連会社である、セレブレーション・カンパニーが開発した高級住宅地であり、ディズニーワールドから車で10分程度のところにある。

 
 ディズニーが開発したといっても、キチンとそこで人が住むことができるような住宅地であり、計画は約5,000戸となっている。5,000戸も住宅があれば、立派な近隣住区(小学校区を基礎とした住宅地計画の単位)が成り立つ規模である。したがって、ここには学校・病院のような住宅地に必要な諸施設はもちろんのこと、中心街にはレトロなデザインの商店街、ホテル、映画館などがある。また、ゴルフ場、テニスコート、その他各種レクリエーション施設も充実している。商店街やゴルフ場などのレクレーション施設は、一般にも開放されていて、ディズニーワールドに行ったついでに遊びに来る人が絶えない。また、住宅地内のいくつかの施設は、世界的に著名な建築家に設計が依頼されており、建築好きの人も惹きつけるようになっている。

 まちなかに入ると、一種のテーマパークのような感じで、古き良きアメリカのまちなみを再現しようとする姿勢が感じられる。こうしたちょっと歴史指向の町づくりのコンセプトは、TND(Tradition Neighborhood Development:伝統的近隣住区開発)と呼ばれており、アメリカで20年くらい前から流行っているニューアーバニズムという、まちづくりのムーブメントの、一つの重要な概念になっている。

 このTNDのコンセプトにのっている訳ではないのだが、確かに、東京ディズニーランド、ディズニーシー、そして、本場のディズニーワールドのデザインコンセプトも、古き良きアメリカのデザインであるので、この住宅地でも、それが踏襲されているという訳だ。だから、セレブレーションのまちなみにいると、どことなくディズニーランドの延長にいる感じがする。

 『私、ディズニーランドに住んでいるのよ』と人に自慢できる特権もあり、確かに、まちなみもシックで美しい。緑はふんだんにあるので、多くの人が住みたくなるようなアメリカ屈指の有名住宅地の一つであり、もちろん、値段も高い。

 さて、私は別に、こうした高級住宅地を日本にも増やしましょうと言うつもりはあまりない。ここでセレブレーションを紹介したいのは、次の写真を解説したいためである。


 セレブレーションは、戸建住宅のみによって成り立っている訳ではない。戸建ももちろんあるが、まちの中心部の商店街の上の分が賃貸アパートになっていたり、ちょっと外れのところには、日本でいうところの分譲マンションが建っていたりする。住宅地を、単一の建築物で構成することなく、建築種別に多様性をもたせながら形成しているのである。こうすることによって、多様な居住形態が住宅地内に存在し、それによって、多様な属性をもった人々が暮らす、本当に「まちらしいまち」が生まれることが期待されているのである。逆に、こうした配慮がなければ、日本のニュータウンのように、一挙に高齢化が進んでしまう危険性をはらむ訳である。

 また一方で、アメリカには一定規模以上の住宅地を開発する際に、アフォーダブル住宅を一定割合で供給しなければならないという条件が付く場合がある。アフォーダブル住宅とは、直訳すれば「入手可能な住宅」のことである。つまり、低家賃の住宅供給のことである。アメリカは、日本やヨーロッパのように、住宅供給政策において公的セクションのサポートが強くない。よい住宅に住むかどうかは、本人の才覚次第である。しかしながら、こうしたアメリカでも、社会格差の是正のために、大規模住宅地開発に条件を付けて、一定割合で低所得者層のハウジングも民間に行わせている訳である。

 さて、一般的には、高級住宅地にアフォーダブル住宅をそのまま混ぜて供給することは行われない。せっかくブランド化しようとするところに、そんなものをつくってしまったら元も子もないからである。だからこんな場合、当該住宅地のはじっこや、別の敷地にアフォーダブル住宅が、いわばアリバイ工作的に作られるのである。

 しかし、ここセレブレーションでは、写真にみるような形でアフォーダブル住宅が供給されている。つまり、1階がガレージで、2階が貸室。しかも、そのセットが長屋のように横につながっている。1階のガレージは道の反対側の中庭側から個別に出入りするようになっている。一方で、2階の貸室には道につながる階段を上って、片廊下があり、そこから各戸へ出入りするようになっている。

 こうしたいわばガレージ・アパートメントは、実は、同じ敷地内の別棟の分譲マンションとセットなのである。すなわち、戸の分譲マンションを買うと、離れのガレージと、離れの貸室が付いてくるという訳である。車をもっていればガレージを自分で使っていいし、車がなければ人に貸してもいい。離れの貸室を自分で使いたければ使っていいし、人に貸して小遣いかせぎをしてもよい。当然、下のガレージとセットで人に貸せば、より高く貸せるだろう。

 どうせ作らなければならないアフォーダブル住宅。この狭小住宅を別個に作るのではなく、まち全体をいきいきとさせるため、つまり、多様な属性をもった人々が住む町にするために使う。そして、狭小住宅は自分で使うこともできるし、人に貸してローンの足しにすることもできる。こうした、住宅ミックスの計画が、日本にも必要とされているような気がしている。


 実は、セレブレーションの中には、他にもこのような考え方をもった、戸建住宅もある。その詳細は、次回報告することにしよう。
2010/01/26

博士(工学)。2008年より東京大学大学院建築学専攻准教授。建築計画・住宅地計画を専門とし、時間経過の中での変化や価値の向上に着目した研究をしている。

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