レッツプラザホーム > すまいとくらし > 第1回 予防医学とは何か?
メタボリック・シンドロームのための特定健診の結果が出るのは、10年後 健康日本21が提唱されて、8年が経ち、ようやくメタボリック・シンドローム(以降MSと略します)という概念を利用した特定健診が2009年4月より日本全国で始められました。これは実際に糖尿病、高脂血症、高血圧症などの病気予防のために体重を減らしていこうとする具体的方策であり、それが実際に実施され始めたことは、とても意味のあることと思います。ただし、このMSの予防における効果というのは、正確には早くて5年後、遅くて10年後にしか出ません。 これは20年もの間、当院での心身両面から診ていく『予防医学人間ドック』(後述)を毎年約800名の会員に施行し、フォローアップをしてきた結果から言えることです。人間ドックもフォローアップも、ただの検査でのスクリーニングや単なる再検査では、絶対に予防にまで到ることは不可能です。 予防医学とは、人がより多くの幸福を感じるための医療 予防医学とは、単に病気にならないようにする医学というよりも、人が自分の人生を生き生き過ごし、幸福をより多く感じられる心と身体を作っていくサポートをする医学と言えます。そのために現代医学の中で、外科や内科といった各科を超えて、科学的根拠さえあれば検査でも治療法でも何でも使っていく積極性が、予防医学には大切であり、それを実践していく専門医師がどんな科のことも、ある程度は知っていることが必要となる、幅の広い医療です。 この予防医学とは何か? つまり人が幸福をより多く感じられる心と身体を作るサポートをする医学であると、すらすらとうまく定義しているように見えますが、この考えは、私の26年間の医師人生に体験した様々な試行錯誤や成功、失敗がベースになって、湧き出てきたものです。でも未だに予防医学とは何であろうかというのを日々考え続けています。それらの体験については第4回目の「なぜ予防医学を始めたのか?」という題目で、お話ししたいと思っています。 予防医学人間ドックで大切な5つのこと 我々のクリニックで実践している、人を幸福にしていく予防医学を実践するためには、どういう状態が、その人にとってベストな状態なのかを診ていく指標が必要です。その指標となる検査をできるだけ多く含んだ人間ドックを『予防医学人間ドック』と呼んでいます。 当院の『予防医学人間ドック』において、まず第1に大切なのは、指標の取り方にあります。その人の健康状態を決めていく指標は、基本的には、その年代全員の平均ではなく、健康人の平均値を中心にしています。ただ、人が最も身体的にベストなのは25歳~28歳時であり、その時のデータがあれば理想的なわけです。でも大抵の方はそんな若い時に検査をしていない方が多いので、できれば、そのベストな時期のデータを予測し、それと現在との乖離を捉えることが大事な訳です。つまりその年代の健康人の平均と25~28歳時の予測データのダブルスタンダードを指標としていくことが、予防をしていく上で大切です。 次に大切なことは、当たり前のようですが、病気の早期発見です。 ところが、これが集団検診など、一定時間に目一杯、受診者を入れて検査をすれば、検査そのもの、または読影で見逃すことが数多くあります。実際、見逃しにおける訴訟は年々多くなっています。最新の設備と、トレーニングを十二分に受けた検査者による高度な技術を用いるのはもちろん、さらに人間ドックでの受診人数を一日6名~10名にしぼることで、正確、緻密、そして丁寧な検査が可能となります。そこまでやって初めて、早期および微小な癌や、また自覚症状の出ていない小さな脳梗塞や微小心筋梗塞などを、見つけ出すことができるのです。
医師。予防医学の第一人者。慶應義塾大学医学部卒。米国の大学病院にて、最新の放射線医学、早期予防及びストレスマネジメントを学び、早期発見を超えた予防医療を実践。