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脳梗塞で家に引き籠もる 林氏(仮名)は、若い30歳代前半から事業を興し、30年以上バリバリ仕事を続けてきました。元々農家の出身ということもあり、頑強な身体を武器に普通の人から見ればかなりの無茶もしましたが、仕事が好きで幾ら働いても苦にならなかったのです。
しかしながら、強かったはずの身体は、長年の無理と何の注意もしなかったことが祟り、いつのまにか傷んでいたのでした。69歳の時、いきなり喋れなくなり、右手の力が入らなくなったのでした。緊急で入院したところ、急性脳梗塞でした。手当てが早かったせいか、完全に半身不随にはならなくてすみましたが、喋る時に言葉がスラスラ出てこなくなり、軽度の麻痺が右手に残りました。それからは、心残りではありましたが、すべての事業を息子さん達に譲り、自分は一線からきっぱり退きました。
脳梗塞後2年経っても、仕事やゴルフを今までのように精力的にこなす元気は出ず、毎日テレビを見ながら、家に引き籠っていました。唯一の楽しみは、夜の晩酌でビールを飲むことだけでした。それも入院先の医者から言われていたので、缶ビール1、2本程度にしていました。元々高血圧と糖尿病があったので、地元の医者で今まで通りの薬をもらい、可もなく不可もなくの生活、でも人から見れば悠々自適の生活を送っていたのでした。
本人としては、命が助かったとはいえ、何となくこれで良いのだろうか? といった不満がずっと残っていました。でも、また脳梗塞が再発し、入院ならまだしも寝たきりになったら周囲にも迷惑をかけるし、自分自身が耐えられない。そんな不安から、これで良い、これが一番なのだと無理に自分に言い聞かせ、じっとしてきました。
同い年の友人が元気になっていくのに焦りを覚える ある時、同い年の会計士である山下氏(仮名)の勧めで南赤坂クリニックに行ってみることにしました。山下氏は会社を興した時からの長年の友人であり、会社の経営も見てもらっている、いわば長年の盟友です。
その山下氏が4、5年前からどんどん元気になってきて、たまに会う度に顔色や声の出方まで若々しくなるのが感じられました。ゴルフも週に2回はカートを使わなくても歩けるようにまでなったと言われ、林氏はショックを受けました。……同い年の盟友が元気になっていくのに自分はどうしたというのだ。確かに自分は脳梗塞を一度は患ったが、何もしないで大事を取っているのに、どんどん老けて、このままではもっと酷い病気になっていく感じがする。
山下氏に「元気になった秘訣は何だ?」と聞いたところ、南赤坂クリニックでの予防医学について教えてくれました。その盟友から、自分も元気になったから、林氏も元気になるはずだから是非行けと勧められ、紹介してもらったのでした。
予防医学人間ドックの結果では頸動脈が50%以上狭窄
当院に初めて林氏が来院され、予防医学人間ドックで診た時、脳に近い頸動脈が50%以上狭窄し、動脈硬化が普通の年齢より10歳以上進んでいました。さらには心臓も同年齢の人よりも10%以上の厚みがあり、いつ心筋梗塞が起こっても不思議じゃない状態でした。その原因は、高血圧と糖尿病、長年の仕事での無理にありました。……従来の投薬だけでは動脈硬化の改善には至りません。林氏は『別に長生きするつもりはないが、脳梗塞が再発し、寝たきりになって息子達に迷惑をかけるのは避けたい』と繰り返し訴えていました。
人は長生きしたいとは思っていない
当院による調査では、人は必ずしも長生きしたいとは思っていないのです。長生きよりも死ぬまで働きたい、もしくは死ぬまで元気でいたいと思っている人がほとんどです。自分の父母が95、100歳まで長生きしたけれども、10年以上痴呆症と寝たきりで、そのお世話で大変だったという話をよく聞きます。確かにそれだと長生きしても何もなりません。自分はそんな風に息子や娘に迷惑をかけたくない。だから死ぬまで元気で、コロっと逝きたいというのが本音でしょう。
しかし、現代医療をもってしても、一度大きな病気をすると、元気で溌剌と働いていた以前の状態に戻すのは難しいのです。何とか命を取り留め、単に生かすことだけで精一杯なのです。寝たきりの患者さんが食べられなくなったら胃瘻を作り、息ができにくくなると人工呼吸器を付け、自分では何もできない、生きているだけの状態を作る。そして、それは死ぬまでずっと外せません。……もし周りの者が幾ら可哀想だからと無理に外せば、殺人罪に問われてしまいます。
ワーカブル80
だからこそ早くから予防しておく必要があるのです。予防医学を20年もやっていて、最初は『白寿(99歳まで生きる)』を目標にしたのですが、受診者が良い顔をしないので止めにしました。そこで『WORKABLE80(ワーカブル80)』という言葉をつくったら、今度は多くの受診者がそれは良い、これは理想だと言ってくれたので、以来この言葉を当院の予防医学の目標にしています。
これは言葉通り、『働ける80歳』という意味です。一般的に働くということは当然お金を頂くことになります。単なるボランティアではお金はもらえません。本当に役に立つことをしていないと、世間様はお金をくれない。お金がもらえるほど、世の中で役立つためには、周りをよく見て、身体だけでなく、脳もフル回転させ、気も使わなければなりません。単に長生きだけでは駄目なのです。相当な脳力、気力、体力を保たないと80歳までは働けません。でもそれは可能です。当院にも80歳を過ぎて、実際働き続けている受診者が数多くいます。
血管をきれいにすることが重要
予防医学で一番重要なのは血管です。血管がいつまでもきれいでいればワーカブル80につながります。血管へのケアが早ければ早いほど血管の詰まりが少なく、いわゆる動脈硬化が少なくなります。既に動脈硬化がひどい人でも、しっかり血管のお掃除をしていけば、その詰まり具合は少なくなり、それが進みにくくなります。
その血管のお掃除をするためには、予防医学的にどの血管がどのくらい傷んでいるのか、狭窄を起こしているのかを徹底的に調べていく必要性があります。狭窄し、傷んでいる血管が、脳の動脈なのか、心臓の動脈か、足の動脈なのかによって、そのお掃除の方法が微妙に変わってきます。また場所だけでなく、動脈が硬くなってきた原因も重要です。動脈硬化の原因がどこから来ているのかを十二分な検査をして突き止める必要性があります。その動脈硬化を起こす原因を確実に取り除く方法を取らないと、逆に動脈硬化が進んでしまうことも多々あるからです。
単に流行りの「これさえ飲めば」「これさえやれば」で、健康になる、動脈硬化が良くなるということは、今までの20年間のデータから見てあり得ません。つまり万人に聞く健康予防法や健康食品など無いと思った方が良いのです。病気の予防というものが、そんな単純で安易なものならば、苦労はありません。動脈硬化が10年で出来たものならば、10年かけて治していくと思った方が良いでしょう。でも一度大きな病気に掛った場合、元の全く正常な状態には戻らないのですから、予防は早ければ早いほど良いのです。
林氏の新事業に驚く
林氏は当院に通い始めて、たった半年でゴルフが週に2回もできるようになりました。先ほど動脈硬化を治すには、それができた年数だけかかると言いましたが、林氏は仕事にかけていた情熱を今度は健康を取り戻すことに精一杯注いだのです。その努力は周りから見ていても凄まじいものがありました。当院に豆に通い、予防医学的にやれることは全てと言っていいほど、林氏にはやって頂きました。
1年後にはすっかり元気になり、仕事がしたいとしきりに言い始めたので、当院でも仕事をすることを強く勧めました。でも息子さん達に譲った仕事を返せという訳にもいかないので、林氏は新たに事業を興したのでした。
それが、今までと全く違った、温泉を掘り当てる仕事だというからこちらの方がびっくりしました。仕事をすることを勧めた手前、本当に経営的に大丈夫なのかと何度も聞きました。『しっかり研究と調査をしたから大丈夫』と逆に林氏の方が自信満々でした。
2年後には温泉を無事に掘り当て、そこに保養所を作ってしまったから、そのバイタリティーには驚きます。現在も、その運営、経営に当たっています。『先生、これも先生のおかげですから、是非温泉に入りに来てください』としきりに林氏は感謝してくれます。今年で林氏が当院に来て10年経ち、ワーカブル80が達成した上に2年が過ぎました。林氏は、次なる『ワーカブル90』に挑戦しています。それまでには、一度その温泉につかりに行こうかと思っています。 |
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| 2010/06/24 |
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