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すまいとくらし
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認知症と診断されて

予防医学とワーカブル80

認知症と診断されて
認知症は治らない病気
 認知症は、長寿社会となった現代にとっては、当たり前のように取りざたされている。決して治ることがなく、それでいて、本人より家族を含めた周りの人たちが大変な苦労をする病気である。日本の某製薬メーカーが出した薬がよく効くと世界中でよく売れたが、発売後20年経ち、いろいろと臨床研究が進んだ結果、結局は治すというより、認知症を2年から3年ほど進むのを遅らせただけだったというのは、有名な話である。でも、遅らせるということでも、まわりの家族にとってはありがたい。

順風満帆な人生も、地元では認知症の診断
 五十嵐さん(仮名)は78歳の女性で、静岡の生まれ。そこで役所勤めのご主人と結婚し、2人の女の子をもうける。その子供たちも東京の大学を出て仕事を続けながら、結婚してそれぞれ子供をつくり、幸せな日々を送っている。

 その五十嵐さんのご長女から、ある日当院に相談の電話があった。「先生、うちの静岡のお母さんが呆けてしまったようなんです。一度診てください」
ご長女は予防の大切さをよく知っていて、年に最低1回はご夫婦で当院の予防医学人間ドックを訪れる。

 10年前と6年前にも「静岡の病院でいいから」というご両親を説得して、当院の人間ドックに連れてきていた。

 半年前から静岡の近所のお医者さんに診てもらっていて、やはり少し認知症が始まっているということで、薬を飲んでいたが一向によくならないという。

6年前と比較し、反応が悪く、トンチンカンな答えに
 確かに診察してみると、6年前と比べて、反応が極めて悪い。こちらの言うことにあまりはっきり答えないし、答えても的はずれなことが多い。

 ご主人の話では、食事もちゃんと作るし、買い物もお金を間違えたことがない。でも会話が最近とみに減っているのは気になる、とのことだった。

 ご長女、次女の方にもお話を伺うと、以前のようには、喋らなくなったという。喋っても、やはり内容がトンチンカンなのだという。

 "長谷川式"※の認知症の簡易テストを行ってみると、現在の時間認識能つまり本日が何年の何月何日かという認識がやや弱いものの、短期記憶に関しては、それほどひどい状態ではなく、認知症とは言いがたかった。

 そのとき、診察中の会話で、「えっ?えっ?」と聞き返すことが異常に多いことに気づく。「奥さん、耳が遠くて聞こえていないのではないですか?」大声で、耳元で聞いてみた。すると「ええ、遠いですよ。テレビの声も聞こえなくて、あまり見ていません。でも一番聞こえないのは、この人の声。だからあんまり話したくないのよね」とご主人を指さす。これでわかった。五十嵐さんは単に耳が遠いのであった。

認知症よりも老人性難聴か?
 それならということで、信濃町にある大学病院の耳鼻科で補聴器検査を専門にしているドクターに紹介し、今、五十嵐さんに一番合っている補聴器を作ってもらった。

 半年後、再検査のために来ていただいた五十嵐さんは、「先生、よく聞こえるようになって、人生が変わった感じです。今はテレビの音もよく聞こえますし、お友達とも、よく話をしていて楽しいです。娘たちにもお母さん、おかしいと言われなくなって、感謝しています。でもうるさいから、時々この人と話をするときは、補聴器をはずしています」とご主人をまた指さしたが、奥さんが元気になり、ご主人もうれしそうであった。

※改訂長谷川式簡易知能評価スケール:
認知症の評価スケールとして医療福祉現場などで使用されている。被験者への口頭質問により、年齢、見当識(日時・場所など)、記銘、短期記憶などを確認し点数化する評価方法。
 
2012/01/26

医師。予防医学の第一人者。慶應義塾大学医学部卒。米国の大学病院にて、最新の放射線医学、早期予防及びストレスマネジメントを学び、早期発見を超えた予防医療を実践。

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