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子どもたちに「家を継がない」と言われて

「持てる」女性たちの贅沢な悩み相談室

子どもたちに「家を継がない」と言われて

世の中には「持つ者」と「持たざる者」がいます。
「持たざる者」からみれば、不動産の悩みなんて贅沢な悩みに見えるでしょう。
でも、今は「不動産を持っているだけでバラ色」とはいきません。
不動産はうまく活かして初めて、持ち主をハッピーにする資産に「なる」のです。
このコラムでは、そのための頭の整理方法と問題解決のヒントをご紹介します。
さて、今回は先祖代々の土地を守ってきた70代の早紀さんのお悩みです。お子さんたちが地主業を継いでくれないと嘆いていらっしゃいます。

「地方の大地主の家に生まれ、先祖代々の土地を守ってきました。地主というと、不労所得で贅沢な生活をしていると思われるようですが、おつきあいや税金が嵩んで自分たちの生活はごく質素なものです。生活費を切り詰めても冠婚葬祭や寄付にお金をまわし、地元にも随分貢献してきたつもりです。


ところが、4人の子どもたちは誰一人家を継ごうとはしません。東京の大学を卒業すると自分の好きな道に進み、長男にいたっては海外で国際結婚してしまいました。主人は怒って結婚式にも出席しなかったくらいです。娘たちも恋愛結婚して地元を離れてしまいました。里帰りするたびに、家のことで口ゲンカになってしまいます。そのせいか最近は顔も見せなくなり、可愛い孫たちに逢う機会も少なくなってしまいました。


娘たちには『お母さんの考えは古いわよ』、『土地を守って生きるなんて封建時代みたい』と散々言われました。そのくせ、『財産はどのくらいあるの?』とか、『家を買いたいから援助してくれない?』などと申します。なんと身勝手で親不孝かと悲しくなります。私が死んだら、一生懸命守ってきた土地や家名はどうなってしまうのでしょう。ご先祖様に申し訳なくて死ぬに死ねない気持ちです。」

 地主さんは地域社会の要でした。早紀さんが家柄に誇りを持ち、子どもたちにも先祖代々の土地を守ってほしいと望む気持ちはよくわかります。それに、早紀さんの時代は「土地=資産」でしたから、「先祖代々の土地を守らなくては」という使命感が人一倍お強いのだと思います。

 でもね、お子さんたちの時代は違います。4人とも親に頼らず、別な場所で生活の基盤を築いて立派に生きているのです。喜ばしいことではありませんか。どんなに懇願しても、お子さんたちの考え方が変わらないことは、実は早紀自身が一番わかっていらっしゃるのだと思います。でも、つい愚痴が出てしまう。それは自分の生き方を否定されたように感じるからではないでしょうか。

 早紀さんは立派に自分の使命を果たされたのです。それで良いではないですか。次の展開は次の世代に任せましょう。それよりも自分自身の幸せ、家族の幸せを考えてください。それが一番大切なことです。土地とか資産は幸せになるための道具にすぎません。「誰も継いでくれなくて結構、私が好きなようにします」と開き直って、人生をリセットしてみませんか。ご先祖様は文句なんて言いません。子孫が仲良く幸せにしているほうが「私たちが遺したものが役立ってよかった」と喜ぶはずです。

 早紀さんが心底「楽しい」と感じることは何でしょう。お孫さんともっと頻繁に逢うこと? 地域に貢献してまわりから尊敬されること? それとも親しいお友達やご家族との旅行ですか。今、お持ちの土地•建物を活かせば、どれもできることです。お子さんたちにも先に財産を分けてあげてください。亡くなった後では、感謝の声を聞くことも笑顔を見ることもできません。

 お子さんたちは今一番、お金がかかる年代です。たとえば、可愛いお孫さんの教育資金を援助してはあげてはどうでしょう。土地を遺すより、「田舎のおばあちゃんに本当に可愛がってもらったなあ」という思い出と教育があれば、どんな時代も立派に生きていけます。私は小さい頃、母方の祖父に溺愛されました。自分が愛されていると実感できたおかげで、まっすぐに人を信じることができるようになったと思います。今でも祖父は私のなかに生きています。もし、早紀さんが土地の代わりにお孫さんの幸せを守ろうとすれば、早紀さんはお孫さんのなかで生き続けます。そのほうが素敵だと思いませんか。

2009/06/25

不動産ジャーナリスト。1978年、青山学院大学卒。「住宅画報」編集、「住宅新報」記者を経て1995年に独立、専門誌や経済誌を中心に住宅・不動産関係の記事を執筆する。

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