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親に相続のことを切り出しにくい

「持てる」女性たちの贅沢な悩み相談室

親に相続のことを切り出しにくい

世の中には「持つ者」と「持たざる者」がいます。
「持たざる者」からみれば、不動産の悩みなんて贅沢な悩みに見えるでしょう。
でも、今は「不動産を持っているだけでバラ色」とはいきません。
不動産はうまく活かして初めて、持ち主をハッピーにする資産に「なる」のです。
このコラムでは、そのための頭の整理方法と問題解決のヒントをご紹介します。
さて、今回は42歳の瑠璃さん。前回コラムの加代子さんのケースとは逆に、お子さんの立場から資産家のご両親のことを心配されています。

「板橋区の資産家殺人事件をニュースで見て、思わず実家の父と母に電話しちゃったわ。姉たちからも『ニュース見た? ウチも人ごとじゃないわ。なんとかしなくちゃ』って、電話があったの。少し前まで長者番付が公表されていたけれど、実家はその常連。今では公表されなくなったけれど、家を見れば一目瞭然よね。新興住宅街のなかにうっそうとした屋敷森があって、門からは奥の屋敷が見えない状態なんだもの。そこに老夫婦で暮らしているなんて、泥棒からみれば『鴨ネギ』だわ。

しかも、昔から『家に現金を置かないで』って散々注意してるのに、『銀行だって潰れるかもしれない』って、ちっとも聞いてくれないの。警備会社と契約しているけれど、誤作動するからとか、面倒だからって切っていることが多いし……。なにしろ、頭が前世紀のままなのよ、ウチの両親。さすがに母親は怖くなったみたいで、あれ以来、戸締まりには気をつけているようだけど……。

先日、姉たちと善後策を話し合ったの。結論は実家の家屋敷を売るか、賃貸マンションにするかして、両親にはセキュリティの完備したマンションに移ってもらおう、って。遺言もつくっておいてもらおうという話になったの。でも、問題は『誰が猫の首に鈴をつけるか』ってこと。姉たちは『瑠璃ちゃん、末っ子で一番可愛がられたあなたから話してよ』って言うんだけど、切り出しにくくって……。」

 瑠璃さんご姉妹の出した結論に賛成です。実際、あの事件以来、戸建てからセキュリティの完備した高級マンションに移られた資産家がかなりいらっしゃいます。実は昨年、ご近所で何軒か泥棒に入られたので警備会社について調べてみました。警備業法施行細則15条では、情報を受信してから25分以内(都内)に駆けつけることと決められています。逆に言えば、25分以内に駆けつければ、業法ではOKということです。これでは「後の祭り」になりかねません。

 ただ、瑠璃さんがひとりでご両親を説得できるかというと、ちょっと疑問ですね。歳をとってから生活環境を変えるのは抵抗があるもの。まして先祖代々守ってきた家屋敷です。簡単に決心はつかないでしょう。しかも、親からみれば、何歳になっても子どもは子ども。子どもの言うことは素直に聞いてくれません。遺言の話もかなり重いことですから、「そうね、そうしましょう」とはいかないと思います。私の友人が親に相続や遺言の話を切り出したのですが、「お前は親が死ぬのを待っているのか」と、お父様に一喝されてしまったそうです。

 ともかく作戦を立てましょう。瑠璃さんはまずご両親に別々に逢う機会をつくり、本音を探ること。あくまでも「ふたりのことが心配でたまらない」という姿勢でね。夫婦とはいえ、本音は違うものですから、案外、現実的なお母様はマンションに移りたいと思っているかもしれません。相続対策や遺言についても、「○○さんのところね、相続でもめて大変なんですって」などと、他人のうわさ話っぽく話してみては? ご両親も内心では今後のことを心配しているのだと思います。でも、正面切って子どもから「遺言をつくって」などと言われればカチンときます。まずは本音を引き出し、それをもとに専門家にも相談してお姉様たちと戦略を立ててみてはいかがでしょう。

 ちなみに先ほどの友人はその後、「知り合いに専門家がいるから、一度、話だけでも聞いてみない?」と、母親をイケメン税理士さんと逢わせたとか。結果は大成功。う〜ん、やるものですねえ。

2009/07/23

不動産ジャーナリスト。1978年、青山学院大学卒。「住宅画報」編集、「住宅新報」記者を経て1995年に独立、専門誌や経済誌を中心に住宅・不動産関係の記事を執筆する。

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