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いわゆる権利書について

所有と利用を分離する新しい資産の管理

いわゆる権利書について
 司法書士をやっております大門(ダイモン)です。

 司法書士の仕事というのを余りご存じではない方に若干ご説明いたします。メインの仕事は、土地や建物を買ったときに所有権の移転登記や建物の保存登記、いわゆる権利書を作成する仕事です(実際に作成するのは法務局ですが)。他には、不動産の購入資金を銀行から借り入れるときに抵当権の設定登記を銀行から頼まれて行います。その他、裁判所に提出する書類の作成や弁済供託などがあります。ちなみに、司法書士の制度は日本と韓国にしかないようです。韓国では「法務士」と言います。

 『権利書は命の次に大事なもの』とよく言われますね。『火事になったときは預金通帳と権利書を持って逃げろ』とよく聞かされたものです。でも、権利書ってそんなに大事なものでしょうか? 確かに権利書を紛失した場合は、少し面倒な手続きが必要になりますが、所詮は紙です。命の次に大切なものとは我々専門家は思っていません。盗まれてもその権利書だけをサラ金に持って行ってもお金は貸してはくれません。土地や建物を担保にしたり、売買するには、権利書の他に印鑑証明書や実印が必要です。だから、これら全部が盗難にあった場合は慌ててください。まず、第一にすることは盗難届と所轄の法務局へ連絡することです。法務局では当該不動産に対する登記の申請があれば直ちにご本人や司法書士会へ連絡が行くシステムになっています。

 一時流行った(?)のが、登記簿がバインダー式の時代、登記簿を一枚抜き取って、後日別人名義の権利書の番号を記載した登記簿を差し込むというものです。この時代はどこの事務所でも法務局から登記用紙(刑務所で印刷しています)を貰って自ら印刷していましたので全国に用紙が有りました。あとは、法務局と似た大きさのタイプライターと登記官印(「校合印」と言います。勿論偽造です!)が有れば、立派な登記簿のできあがりです。同時に偽造の権利書(法務局のハンコが必要です。これも偽造!)を作成すれば完成です。売却する時はいつでも印鑑証明書が取れる訳です。この手の事件が明るみになったのは、登記官の校合印の印影や法務局の登記済み印の朱肉の色で発覚したようです。しかし、それはたまたまベテランの登記官だったからで、私が見てもたぶん分からないと思います。事実、当時担当した司法書士は見抜けなかったのですから。

 こんなこともあり、平成17年の不動産登記法の改正によって、権利書(正確には「登記済証」)を止めて、「登記識別情報」というものを作成することになりました。これはA4版の用紙に所在、地番、建物の番号と所有者名が記載されたものです。そして用紙の下方に12桁の英数字(AからZ、0から9まで)を組み合わせた暗証番号(パスワード)が記載されています。この暗証番号は法務局のコンピューターで管理されています。これによって、将来は売買の登記もいちいち法務局へ行かなくともパソコンからオンラインで申請できることになります(ただし、オンラインで申請するには皆さんの住民票や印鑑証明書も電子証明で登録する必要があります)。

 この暗証番号は法務局より発行されたときは粘着テープが貼ってあり見えないようになっています。司法書士会では、暗証番号が盗まれないようにするため、この目隠しテープを剥がさないように指導していますが、権利書と同じで暗証番号だけコピーや写真等で盗撮されても、印鑑証明書や実印がなければ何もできないのは同じです。

 権利書と大きく異なるのは、土地が20筆とか区分建物が100戸あれば、その数だけ識別情報が作成されることです。金融機関によっては、管理が大変という理由で抵当権に関する識別情報を不発行とするところもあります(法務局に頼めば発行しないことも可能ですが、後日発行をお願いしても発行はできません)。また、権利書の時代は共有で相続した場合、相続人全員で一通の権利書でしたが、識別情報の場合は人数分発行されます(もちろん、暗証番号もそれぞれ違います)。

 識別情報は、発行後失効の申し立てをして無効とすることも可能です(不発行と同様になります)。不発行や失効すると売買のときに困るのでは? と思いますが、登記をする司法書士が作成する本人確認情報(本人に間違いないという証明書)が権利書の代わりになったり、その他色々な方法があります(多少お金がかかります)。

 ただし、以下のようなことも可能です。同じ物件を、午前中識別情報で売買の決済を行い、午後司法書士の本人確認情報で決済を行う、いわゆる二重売買です。午前中の識別情報は売買代金の受領と同時に法務局で待機している者に識別情報を失効させるのです。大変な犯罪ですが、我々司法書士としては、本人確認情報を作成する場合は、本人の品性まで疑って懸かる必要があります(犯罪は決して割に合わないことを銘記して貰いたいものです)。

 ところで、昔は、司法書士(当時は「代書屋」)事務所の二階を「登記茶屋」と呼んでいたそうです。一階の事務所で売買契約書や登記の書類に売主、買主が署名捺印して、司法書士が向かいの法務局へ申請してきます。登記が上がってくる合間、関係者は二階へ上がって一杯やっている訳です。数時間してから司法書士がやおら立ち上がり、法務局から権利書と謄本を貰ってきて万事完了めでたしめでたしといった具合だったそうです。良い時代だったのかもしれませんね。
2009/09/28

司法書士。明治大学卒。三井不動産住宅サービスを経て独立。民事信託を活用した再開発や等価交換事業を推進し、地方都市の中心市街地活性化の専門家としても活躍中。

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