レッツプラザホーム > 資産承継 > 両親に相続対策を促したい
世の中には「持つ者」と「持たざる者」がいます。 「持たざる者」からみれば、不動産の悩みなんて贅沢な悩みに見えるでしょう。 でも、今は「不動産を持っているだけでバラ色」とはいきません。 不動産はうまく活かして初めて、持ち主をハッピーにする資産に「なる」のです。 このコラムでは、そのための頭の整理方法と問題解決のヒントをご紹介します。
「両親とも元気なので、これまで相続や介護のことなど真剣に考えたことはありませんでした。でも、ご両親を不慮の事故で亡くした友人に逢って考えが変わりました。すっかり憔悴して、十歳くらい老け込んでしまっていたんです。『人生観がすっかり変わってしまったわ』と、お葬式の後の出来事を辛そうに話してくれました。 彼女の実家は、戦前からの貸地やアパートをたくさん持っている地主。3人の兄弟は東京の大学を出てこちらで結婚したり、海外に赴任したりしていたので、誰も実家の財産についてはほとんど知らなかったとか。頼りにしていたお兄さんは海外赴任中だったので、お葬式からその後の財産の整理までお姉さんと彼女が進めざるを得なかったのだそうです。 『もちろん遺書もないし、財産目録をつくるだけで半年以上かかったの。戦前からの貸地なんて公図もなければ契約書もないんだもの。父は相続対策でせっせとアパートを建てたみたいだけど、空室が多くてローンを返すと何も残らないような状態だった。やっと遺産分割協議書をつくる段階までいったんだけど、そこで兄弟で意見が割れてしまって大げんか。結局、遺産分割協議書の期限にも間に合わなくて、相続税をどうやって払うかについても未だにもめているの』。 友人の話を聞いて身につまされました。私の実家もいくつか不動産を持っています。同じことが起こったら、私たち兄弟もきっと同じような状況になるんじゃないかしら。親に財産のことを聞いたり、遺言書を書いてほしいと頼むなんてタブーだと思っていたし、兄弟で相続や介護のことを真面目に話し合ったこともありません。でも、いざとなるとどこから手をつけていいか、わからなくて……。」
真理子さんのお話を聞いて、私も身につまされました。お友だちと同様、私も母が亡くなるまで、財産のことや相続のことについて真剣に話し合ったことがなかったのです。幸いにも一人っ子だったし、相続財産もそれほど多くなかったのでなんとかなりましたが、わからないことばかりで心身ともに消耗しました。お葬式の大変さは序の口で、相続税が課せられるような資産家の場合は、それから本当の消耗戦が始まります。 遺言書や相続対策の必要性は認識したものの、「どこから手をつけていいかわからない」とのことですが、まずはご兄弟やご両親と相続について話し合う機会をつくることが先決でしょう。お盆にご兄弟がお墓参りに実家に集まるのならそのときでもいいですし、兄弟でご両親を旅行に誘ってみるのもよいでしょう。重要なのは兄弟が揃ったときに話をすることです。確かに子どもからは切り出しにくい話ですが、ご両親だって内心では心配しているはず。でも、この話は、親からもなかなか切り出しにくいのです。 真理子さんは率直に今の気持ちを伝えればいいのです。お友だちの話を聞いてショックを受けたこと、お友だちの二の舞を踏みたくないと思っていることを伝えればいいのです。ご両親が相続対策をしていれば、その内容を話してくれるでしょうし、何もしていないのなら、この機会に専門家に相談するなどの方策を講じることもできるはず。その場では何も結論が出なかったとしても、ご両親は必ず後から話し合うはずです。 特に、相続ではお母様がキーマンになります。相続争いを一番心配しているのは、多くの場合、母親です。もしも、お父様がヘソを曲げたとしても、お母様を味方につければ百人力。男は「老いては妻に従う」ものですから。次の段階は、お母様と一緒に専門家に相談すること。そうすれば、次にやるべきことが見えてきます。「叩けよ、さらば開かれん」。勇気をもって、まず、ご両親の心の扉を叩いてみてください。相続対策に「早すぎて失敗した」ということはありません。
不動産ジャーナリスト。1978年、青山学院大学卒。「住宅画報」編集、「住宅新報」記者を経て1995年に独立、専門誌や経済誌を中心に住宅・不動産関係の記事を執筆する。