レッツプラザホーム > 資産承継 > 夫に愛人と子どもが……、ショックです
世の中には「持つ者」と「持たざる者」がいます。 「持たざる者」からみれば、不動産の悩みなんて贅沢な悩みに見えるでしょう。 でも、今は「不動産を持っているだけでバラ色」とはいきません。 不動産はうまく活かして初めて、持ち主をハッピーにする資産に「なる」のです。 このコラムでは、そのための頭の整理方法と問題解決のヒントをご紹介します。 さて、今回は、ご主人の昔の浮気が発覚し、ショックを受けている郁子さん(62歳)のお話です。
「入院中の夫の病室に派手な感じの女性が訪ねてきました。夫の様子が変なので、後から問いつめたら、昔、関係のあった女性で、『あなたの子がいるの。認知して欲しい』と言ってきたのだそうです。夫は『15年以上も前にきれいに別れた。僕の子どもがいるなんて初めて聞いた。本当かどうかもわからない』と言い、『許してほしい』と謝りました。最初は愕然としましたが、夫も私も62歳、色恋沙汰でもめるような年齢ではありません。夫の病状も深刻であることから、それ以上責め立てることもできません。 私たちは大恋愛の後、親の反対を押し切って学生結婚。かぐや姫の『神田川』みたいな新婚生活でしたが、幸せでした。夫は大手広告代理店で才覚を発揮し、35歳で独立。制作会社を立ち上げて、賞をとるようなCMを数多くつくりました。派手な業界ですし、妻の私が言うのもなんですが、魅力的な人ですから、相当にもてたと思います。2年前に心臓を悪くしたのをきっかけに経営から退き、老後には十分すぎるほどのお金を手にしました。夫の実家も資産家で、数年前にその財産分けも受けています。 夫との間には1男2女がおり、それぞれ家庭をもって幸せに暮らしています。外ではともかく、家庭では一貫して良き夫であり、愛情深い父親でした。主治医からは夫の容態は深刻な状態と言われています。夫に万が一のことがあれば大変なことになりそうです。今頃、訪ねてくるなんて財産狙いなのでしょうか。こんなことは子どもたちや親戚にも相談できず、悶々としています。」
う~ん、難しい問題ですね。ご主人が元気ならば、「ご本人に後始末をしてもらいなさい」と申し上げるのですが、健康状態を考えるとねえ……。ご主人も、その女性と関係があったことは認めているのですから、ご主人の子どもである可能性も否定できません。 今はDNA鑑定で親子であるかどうか、調べることができます。女性の言うことが本当ならば、非嫡子(婚姻関係のない男女の間に生まれた子ども)にも相続権があります。民法では、非嫡子の相続分は嫡子(婚姻関係のある男女の間に生まれた子ども)の2分の1と定めています。しかし、『生まれてきた子どもには何の罪もないのに、こうした差別は不当だ』という意見もあり、2009年にはこの民法規定が違憲であるかどうかが最高裁で争われました。 こうした法律問題より、もっと大きなことはご家族の気持ちでしょう。このまま放っておいて相続争いになれば、お子さんたちも知ることになり、皆が傷つきます。辛いでしょうが、ご主人とよく話し合ったうえで、弁護士、税理士とも相談してください。 まず、あなたにすべての財産を残すという遺言書を書いてもらうことです。遺言には自分で書く「自筆証書遺言」と、原本が公証役場に保管される「公正証書遺言」があり、後者のほうが確実です。ただ、遺言があっても、法定相続人(非嫡子も含む)が遺留分減殺請求をすれば、やはり裁判沙汰になり、お子さんたちも知るところになるでしょう。 私は、そうした事態になる前に、郁子さんがご主人に代わって解決を図るのが一番良いと思います。第3者の専門家を介して女性の真意を確かめ、そのお子さんが本当にご主人の子どもであった場合は、何がしかの財産を渡す代わりに相続権を放棄してもらうのです。納得がいかないかもしれませんが、誠意をもって対応しましょう。あなたの寛容さがご主人の残された日々や、お子さんとお孫さんの将来を明るいものにするはずです。 「立派なことを言っていますが、あなたが当事者だったら本当に実行できますか?」と問われれば、正直言って自信はありません。でも、そうしなかった場合、精神的に最悪な状態が続くと思えば、結局実行するだろうと思います。これでお答えになったでしょうか。
不動産ジャーナリスト。1978年、青山学院大学卒。「住宅画報」編集、「住宅新報」記者を経て1995年に独立、専門誌や経済誌を中心に住宅・不動産関係の記事を執筆する。