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「おひとり様」は相続より贈与?

「持てる」女性たちの贅沢な悩み相談室

「おひとり様」は相続より贈与?

世の中には「持つ者」と「持たざる者」がいます。
「持たざる者」からみれば、不動産の悩みなんて贅沢な悩みに見えるでしょう。
でも、今は「不動産を持っているだけでバラ色」とはいきません。
不動産はうまく活かして初めて、持ち主をハッピーにする資産に「なる」のです。
このコラムでは、そのための頭の整理方法と問題解決のヒントをご紹介します。
さて、今回は62歳の朋子さんです。「おひとり様」の暮らしが気に入っている朋子さんですが、伯母さんの死をきっかけに、自分の財産の行方を考えるようになりました。

「私はずっとシングル。『お寂しいでしょう?』なんて言う人がいるけど、余計なお世話だわ。一人っ子だったからひとりには慣れているし、「おひとり様」歴40年ともなれば、筋金入り。私の時代は女性の自立がテーマだったし、今の若い人たちよりずっと精神的にタフだと思う。

実家は都内だったけど、一人暮らしがしたくて、大学を卒業して会社に入ると同時にアパート暮らし。必死で頭金を貯めて、30代後半で恵比寿の中古マンションを買ったの。便利な場所だし、一人暮らしだったから、まるで仲間のサロンみたいだった。仕事も遊びも恋愛も目一杯楽しんだし、今も遊び相手はたくさんいるの。

一昨年、会社を退職して、今は自由な身。親から実家(戸建て)とアパートと数千万円の預貯金を相続した翌年、独身の叔母が亡くなって、叔母のマンションまで私が譲り受けたの。ひとり暮らしなのに家が3軒だなんて皮肉よね。それはともかく、伯母の死をきっかけに、自分の人生の終わり方とか、資産を誰にどう遺すのかとか、お葬式のこととか、考えるようになったの。

突然逝ったりしたら、まわりにも迷惑がかかるし、私の財産だって面識もないような遠い親戚にいくか、国に召し上げられるかですものね。どうせなら今後の人生を存分に楽しんで、使い切れなかった分は遺言で寄付するなり、親しい友人やお世話になった方に遺したい。そう思ってはいるんだけど、仕事と違って、自分のこととなるとついつい先送りしちゃうのよねえ。」

 仕事と違って自分のこととなるとついつい先送り……。分かるなあ、私も同じです。小学生の頃から、夏休みの宿題も計画どおりできず、最後の一週間勝負でしたっけ。夏休みといえば、おひとり様の先輩が定年退職したとき、こんなことを言ったのです。『夏休みを迎える小学生みたいな気分。わくわくしちゃう』って。素敵でしょう? これまでの老後のイメージとはまるっきり違いますよね。

 彼女や朋子さんのように自立した女性たちが「老後」のイメージを変えそうです。独身に限らず、女性はかなり高い確率で、いずれは「おひとり様」。離婚や死別でひとりになるケースもあるし、子どもがいても、「頼らず、遺さず」生きる方も増えています。自立して楽しく自由に人生を全うする。これが理想じゃないかと、おひとり様予備軍の私は思います。

 女性は男性よりタフだから、健康で経済的に余裕があれば、かなり高齢になるまで自立した暮らしを楽しめるはず。反面、資産の運用や自分の相続となると、成り行き任せという方が少なくありません。『死んだ後のことなんて気にしないわ』という人はともかく、心のどこかにひっかかっているのなら、宿題をさっさと終わらせて、すっきりした気分で夏休みを迎えたいものです。

 宿題にとりかかる準備はシンプルです。第一に資産と借入金を洗い出す。第二に関連書類を整理する。これは機械的にできますね。ここまでしておけば、専門家に相談できます。次は自分自身のこと。ざっくりと今後必要なお金を計算します。例えば、年間400万円で、100歳まで生きるとしたら、400万円×38年=1億5,200万円。朋子さんの場合は、公的年金と個人年金と預貯金でカバーできそうですが、もっと詳しく押さえておきたいなら、ファイナンシャルプランナーに相談すると良いでしょう。

 その次は不動産の整理です。相続した家やアパート、叔母さまのマンションだけでなく、恵比寿の自宅も含めて資産の組み替えを検討してはどうでしょう。地価や賃料が下落しそうな不動産や、固定資産税が重い戸建ては処分して、「換金性」「収益性」「節税効果」の高い資産に買い替えておくのも一手。専門家に相談すれば、さまざまな選択肢を提案してくれるはずですよ。

 手始めに資産運用セミナーに参加してみるのも良いかもしれません。個別相談もできますから、整理しておいた関連資料を持参すると良いでしょう。いくつかのセミナーに参加して、一番納得のいく提案をした会社やコンサルタントに資産運用を手伝ってもらいます。そこまで進めば、後はオートラン。タイムスケジュールを決めてどんどん前に進むだけです。そう、仕事を片付ける要領ですよ。

 この宿題を終えれば、かなりの定期収入が入ります。生活費は確保済みですから、これは「使って良いお金」。このお金まで貯めて、遺言でお世話になった方や友人知人に贈るより、生きているうちにいろいろな形でスマートにお裾分けしてはどうでしょう。ちょっとしたプレゼントや困ったときのさりげない援助、自宅での会食会、賛同する活動への寄付……。人を喜ばせる使い道はたくさんあるはず。第一、死んでからでは相手の喜ぶ顔を見ることもできません。相続より贈与のほうがハッピー度はかなり高いと思うのですが、いかがでしょう。
 
2010/10/28

不動産ジャーナリスト。1978年、青山学院大学卒。「住宅画報」編集、「住宅新報」記者を経て1995年に独立、専門誌や経済誌を中心に住宅・不動産関係の記事を執筆する。

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