レッツプラザホーム > 資産運用 > 取得費加算
土地や建物を譲渡した場合、譲渡益が発生すれば、その譲渡益に対して所得税・住民税が課せられます。しかしながら、相続や遺贈により取得した土地や建物については、その譲渡益を減少させ、所得税・住民税が少なくてすむ特例があります。取得費加算という特例です。今回はこの取得費加算という特例についてのお話です。
(1)制度の概要 下記の要件を満たす場合には、その譲渡した資産の取得費に一定金額を加算することができます。
譲渡所得の金額は、下記の算式により計算されます。
したがって、資産の取得費が増加すれば譲渡代金から差し引く金額が多くなるため、譲渡所得は減少することとなります。譲渡所得が減少すれば、当然、その譲渡所得にかかる所得税・住民税は減少することとなります。
この特例の対象となる資産とは、土地・建物は勿論、相続により取得した株式、ゴルフ会員権などといったものまで対象となります。
(2)取得費に加算される一定の金額とは 譲渡した資産が、以下のいずれに該当するかによって取得費に加算される金額の計算方法が変わります。
1 譲渡した資産が土地等の場合
2 譲渡した資産が1以外の資産の場合
つまり、支払った相続税のうち、相続した資産のうちに譲渡した資産の占める割合分だけ、取得費に加算することができます。しかしながら、土地については優遇されており、譲渡していない土地に係る相続税についても、取得費に加算することができるのです。
この特例、相続で取得した財産を一定期間内に譲渡した者であれば、誰でも適用を受けることが出来ますが、注意点が一つあります。それは、相続税の納税がある相続人でないと恩恵に与かれないということです。例えば、被相続人の配偶者で、配偶者の税額軽減の特例の規定により、相続税の納税がない者について考えてみましょう。この配偶者、取得費加算の特例の適用を受けようと思っても、上記1.(2)の算式のAの金額がゼロでるため、加算される金額が発生しません。つまり通常の譲渡と同じこととなります。したがって、売却予定の資産については、まず、相続税の納税がある相続人、に相続してもらうこととします。そうすれば、取得費に加算される金額が発生し、譲渡益が減少し、譲渡に係る所得税・住民税が減少するため、手取金額が多くなる、つまり、恩恵に与かれるという結果となります。
また、一つの土地を複数の相続人で相続して売却したとしてもこの特例の適用はあります。本来であれば、土地の共有はお勧めしませんが、売却の見込みがある場合には、遺産分割の方法として有効な方法の一つです。換価分割という手法です。
こういうご時世です。いい場所にある土地でも、市況が悪ければ買い手はなかなか現れません。仮に買い手が現れたとしても、足元を見られてとんでもなく安い金額でしか売却の交渉が進まないかも知れません。納税のためとは言え、慌てて捨て値で安売り……、といった事態は防ぎたいものです。しかしながら、売却ができなければ取得費加算の特例は使えません。そんな場合には、同族会社に買い取らせるという方法があります。法人に金があれば問題はありませんが、資金がなければ、銀行から借入れをします。個人が相続税の納税のために借入れを行った場合、その支払利息は何らその個人の経費にはなりませんが、法人が土地取得の目的で借入れを行えば、その支払利息はその法人の経費とすることができます。つまり、法人に買い取らせることにより、個人が納税資金を確保するという目的を達成しつつ、支払利息を経費とすることができるのです。
この取得費加算の特例、法定申告期限から3年を経過する日までが特例の適用をうけることができる期限です。相続税を所得税で取り返すことができる最後のチャンスなのかもしれません。
税理士。早稲田大学卒。国税専門官として税務調査を経験後、アーンスト&ヤング会計事務所、タクトコンサルティングを経て独立。資産税のスペシャリストとして活躍中。