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土地オーナーから 不動産投資家への第一歩

ちょっとお得な資産経営の新常識

土地オーナーから不動産投資家への第一歩

 平成21年度の税制改正により、長期所有(10年超)の土地、建物等から、国内にある土地、建物、機械装置等への買換えの特例の適用期限が3年間延長され、平成23年12月31日までの売却に適用されることになりました。この特例を用いると、たとえば、次のような効果があります。

<前提条件>

Aさんが30年前に1千万円で取得した事業用の土地200m2を平成21年1月1日に、
1億円で売却

平成21年中に、新たに事業用の土地300m2と建物500m2を取得

買換え特例を用いない場合の譲渡に係わる所得税・住民税は、
(譲渡額1億円-取得費1千万円)×20%=1,800万円

<ケース1>

買換えで取得した土地建物の額が1億円以上であるとき

所得税・住民税=(1億円×20%-1千万円×0.2)×0.2=360万円

繰り延べできた税額=1,800万円-360万円=1,440万円

<ケース2>

買換えで取得した土地建物の額が8千万円であるとき

収入金額=1億円-8千万円×0.8=3,600万円

必要経費=1千万円×収入金額3,600万円÷売却金額1億円=360万円
所得税・住民税=(3,600万円-360万円)×0.2=648万円
繰り延べできた税額=1,800万円-648万円=1,152万円


 この買換え特例を用いるときの留意点としては、特例の効果は、課税の「繰り延べ」であって、「免除」ではないという点です。繰り延べというのは、簡単に言えば、「今は取りませんが、いずれ機会を見て取りますよ」ということです。たとえば、買換えで取得した資産を売却する際の譲渡に係わる税金が高くなったり、建物に買換えた場合には、減価償却費が小さくなって、毎年の所得税・住民税がその分高くなったりするわけです。

 とはいえ、とりあえず、売却時にかかる税額は少なくなるので、買換えをする際の負担が小さくなるのは確かであり、買換えの動機になるということが、この買換え特例の最大の効果と言えるでしょう。買換え特例を使うことで、実は、土地オーナーにとっては、不動産投資家としての重要な第一歩を刻むことができるのです。

 不動産投資というと、昨今のファンドバブルの崩壊などもあって、なんとなく胡散臭いイメージを持たれる方も多いと思いますが、実は、土地オーナーにとっても、不動産投資家は一つの目指すべき方向と考えられます。それは、どういった理由によるのでしょうか。

図

 土地オーナーと不動産投資家の最大の違いは、立地を選べるかどうかということです。土地オーナーは自己の所有地上で不動産事業を行うので立地を選べませんが、不動産投資家は、自分の投資する案件を自由に選ぶことができるので、不動産事業の立地を選べることになるのです。

 ご承知のように、不動産事業で最も重要な要素は立地です。立地が良ければ、事業の将来にわたる収益性も期待できますし、また、いつでも買いたい人がいるという意味で、資産の流動性も確保できます。また、値下がりリスクも少なく、安全性も確保できるのです。これに対して、立地が悪ければ、無理に事業化しても、空室率が高く、賃料水準も低くなります。買いたいと思う人も少ないので、値下がりリスクも高く、流動性と安全性についても劣ることになります。

 もちろん、土地オーナーの皆様のお持ちの土地は、立地の良い場所も多いことと思います。しかし一方で、一等地に比べて立地の劣る土地をお持ちの場合もあるかと思います。たとえば、郊外部で最寄り駅からバス便の土地などの場合です。こうした土地について、事業用資産の買換え特例を用いて、より立地の良い場所に買換えることができれば、お持ちの資産全体の収益性、流動性、安全性を高めることが期待できます。

図

 不動産投資家になることのもう一つの効果としては、資産全体の効率性について、より敏感になることです。たとえば、土地オーナーがご所有地の上でアパート経営を行う場合、土地価格を含めたアパートの投資額に対する収益性を検討することは、あまりないかと思われます。しかし、事業用資産の買換え特例を用いて、アパートとその敷地を取得する場合には、取得する金額に対して期待できる収入の額や利益の額の比率(いわゆる利回り)について、真剣な検討を行って、投資するか否かを判断するはずです。こうした資産全体についての効率性の検討は、不動産投資家には不可欠な要素であり、土地オーナーにとっても、実は大切な視点なのです。

 不動産投資というと、なんとなく胡散臭いと思われている方も多いかと思いますが、土地オーナーの皆様にとっても、不動産投資家の考え方を身につけることは大きな意義があります。そして、考え方を身につけるには、小さなものでも実際にやってみることが第一です。まずは、事業用資産の買換えによって、その第一歩を進めてみてはいかがでしょうか。

 
2009/02/12

不動産鑑定士、一級建築士。東京大学卒。三井建設、シグマ開発計画研究所を経て独立。建築再生や建替えといった各種建築プロジェクトのコンサルタントとして活躍中。

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