S&E総合研究所 三井不動産 サイトマップ 三井不動産
情報発信

コラム

 

 
財政破綻都市「夕張」の今

 

 

 かつて炭鉱の街として栄えた北海道夕張市。全盛期には約12万人が暮らした土地だが、2006年6月に353億円の巨額赤字をかかえて財政破綻を表明した。その後は厳しい緊縮財政もあり人口が激減、今では9,000人を割り高齢化率は約50%と日本で一番高い。人影少なく閑散とした市内で街の再生に向けて陣頭指揮を執っているのは、東京から移住し2011年に30歳の若さで就任した鈴木直道市長である。
 「支出は、命にかかわること以外は全部削る」というスタンスで、260人いた市職員を100人にまで減らし、議員報酬は40%、市長の報酬は70%カットした。7校あった小学校と4校あった中学校はそれぞれ1校になった。図書館も廃止し、行政は徹底的にサービスを減らしながら、公共施設の利用料を50%上げたり、水道料金も1.7倍に引き上げたり。「最低の住民サービスで最高の住民負担」と揶揄されながら、血のにじむ努力で10年間に116億円を返済したが、2026年までにまだ237億円の返済が残っている。

 

 

幸せの黄色いハンカチ思い出広場

 町の存続のためには「財政再建」と「地域再生」の両方が必要である、と鈴木市長は言う。緊縮財政一辺倒では街が消滅してしまう、地域の再生や人口の減少を食い止める施策が同時に必要であると。あらゆる取組みの中で特に柱となっている2つの取り組みを紹介する。
 一つはコンパクトシティ化。具体的には人が集まる地区を拠点に新しい住宅を作ったり、古い住宅をリフォームして移り住んでもらうなどの集約化を進めている。6年間で400戸の住宅が完成し300世帯がすでに移動済みである。
 一人ひとり住民と膝を突き合わせて話し合いをしながらの丁寧な作業を実践しているが、「今の場所を移りたくない」という人も当然いる。1棟に一人でも残っていると壊せないため一朝一夕には進まないが、あくまでも無理に動かすのではなく、移ることのメリットを根気強く話す。新しい住宅は保温性がよく、抵抗していた90代の男性が移住後「人生で一番暖かい冬を過ごせた」と話したという。
 二つ目はCBMガスだ。燃焼時のCO2や汚染物質の排出が少なく新エネルギーの原材料として注目されており、夕張市の地下には77億立方メートルものCBMガスが眠っていると言われている。それは市全世帯(約5,000世帯)が1年間に使用する電気や灯油等のエネルギー量に換算すると約1,500年分に相当する。将来的なエネルギーの地産地消を目指し、今後は北海道ガスとの連携協定により北海道一安いガスを提供することで企業誘致や住民の移住促進を狙う。そのための試掘事業を産官学連携で昨年9月から開始した。

 1981年に起きた大規模なガス突出事故で93名の市民が亡くなった夕張炭鉱。市民にとっては悲しみのガスであるが、まさにその場所でガスを地域再生の希望に変える挑戦は始まったばかりだ。

 

 

 一時代を築いた夕張の繁栄。政府のエネルギー政策に翻弄され基幹産業を失い、その後に方向転換した観光業でつまづき、日本で唯一の「財政再建団体」へと変貌していった夕張。残った市民が行政と一体となって、身を削りながら再生に向けて踏ん張っている実態に触れると応援せずにはいられない。ガスが街の再生の起爆剤となることを心底願いながら、毎年ふるさと納税の返礼品で届く夕張メロンを楽しみにしている。

 



  瀬尾 里枝
2017年8月10日 街のちから(三友新聞)




調査研究報告
寄稿記事
刊行物
ケアデザインネット
あなたを想うことからページの先頭へ
copyright 2015 Mitsui Fudosan Co., Ltd. All Rights Reserved.
三井不動産のプロジェクト