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健康寿命延伸都市・松本の挑戦

 

 

 近年耳にすることの多い「健康寿命」とは、その人が介護等を必要とせず健康で自立して暮らすことができる期間を言う。超高齢社会を達成した我が国においては、この寿命を伸ばすことがとりわけ重要な目標であり、現在多くの地方自治体が健康寿命延伸に取り組んでいる。その先進モデル都市として存在感を放っているのが、長野県の中央部に位置する人口約24万人の松本市である。2008年より都市戦略の中心に『健康寿命延伸都市』構想を据え、「人」「生活」「地域」「環境」「経済」「教育・文化」の6領域における人と社会の健康づくりを目指している。その成果もあって、2013年度の健康寿命では、長野県平均が男性71.5歳女性74.7歳に対して、松本市は男性79.5歳女性84.2歳と、その差は少なくない。

 

 

第7回世界健康首都会議のパンフレット

 具体的な活動としては、地元医師会と連携したがん検診、コンビニ駐車場での保健師による「まちかど健康相談」、小中学校での食育活動や健康経営につながる職場での健康講座など、健康無関心層に対しても積極的にアプローチしている。
 さらに松本城の正面・三の丸地区を、「歩いて暮らせる・人が主役の街づくり」をスローガンに人優先の都市空間へ転換したほか、観光スポットの一画には県内初めての歩行者優先エリアを設けた。
 また、「健康づくりは歩くことから」と、市内35地区ごとに特色を活かしたウォーキングコースを設定し、歩き方のコツと合わせ市民に紹介している。
 今年で7回を重ねる「世界健康首都会議」の主催も松本市のユニークな特徴である。ドイツやスウェーデン、オランダなどから行政担当者や企業、研究者を招いて、市中央公民館を会場に講演とセミナー、研究成果の発表やパネルディスカッションが二日間にわたり催される。筆者も2015年の第5回会議に参加したが、地元企業や信州大学、医師会、福祉事業団体の関係者が多く出入りし、なかなかに盛況であった。
 他にもユニークな取組みとして、市民の健康寿命延伸とヘルスケアビジネスの地元創出を目的に産官連携で2014年に立ち上げた「松本ヘルス・ラボ」がある。個人は会員になると年2回の健康チェックや企業等と連携した様々な健康プログラムを体験でき、参加企業側は市民が参加したワークショップ等を通して、企画や開発段階でのユーザーの生の声やアイデア、さらには試作品モニターによるアドバイスを受けることが可能だ。

 ここから、ウェアラブル健康デバイス(セイコーエプソン)、アンチエイジングのサプリメント(サントリー)、健康寿命延伸特別金利定期預金(松本信用金庫)など、医療・介護・健康分野での新製品や新サービス開発に成果が出始めている。福岡市が中心となり進めている「福岡ヘルスラボ」での市民参加型実証実験なども、同様の試みの一つである。

 

 

 「地域包括ケアシステム」の構築でも、松本市の先進的な整備は注目に値する。医療・介護の連携が遅々として進んでいない自治体が多いなか、松本市は10年ほど前から市内35地区に町内会長や民生委員、医療者、介護事業者が参加する「地域づくりセンター」を開設、医師会、歯科医師会、薬剤師会との協力のもと在宅医療と往診体制を推進している。
 単に住民の身体健康のみでなく、経済・環境・教育など健康寿命を支える総合的な地域づくりを目指す松本市のこうした取組みは、今後の人口減少社会に備えた地方や自治体にとって大いに参考となる。

 



  佐藤 宏毅
2017年11月9日 街のちから(三友新聞)





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