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鳥羽の湾が眼下に広がる。
朝の光が海に反射している。
まるで真珠のようだと思った。
ここが真珠養殖発祥の土地のせいだろうか。
背中に妻の寝息が聞こえる。
こんな風に彼女を見るのはひさしぶりだ。
そっと手にふれる。こんなに小さかったかな。
寝顔はやっぱり娘とそっくりだ。

「結婚30周年って、真珠婚らしいよ」
朝のワイドショーが、鳥羽市が取り組む
このロマンチックなイベントを教えてくれた。
いつか伊勢神宮に行きたいねといつも言っていたから、
僕らは鳥羽を巡る小さな旅をすることにした。
その真珠婚式とやらをやることにして。
照れくさいと笑う妻をやや強引に説得した。
実際に来てみると照れるのは僕のほうで
彼女のほうはかなりうれしそうだった。

6年ほど前にリニューアルした
鳥羽国際ホテルの清潔な匂いと
スタッフまで参加してくれた温かいその式に
彼女の顔がほころんだ。
そして「ありがとね」と言って腕をくんできた。
僕も彼女に「ありがとね」と言った。
そう口にして、
彼女のありがとね、には
これからもよろしくねという意味があったのだと
気がついた。
いい街には、物語がある。