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柏の葉という街は、未来への提案だと思う。
スマートシティという機能だけではなく、
そこに暮らすひとの表情をどうつくっていくか。
休日を象徴するような風景をつくれないか。
そうやって街はたくさんのメッセージを持ち始める。

柏の葉アクアテラスは、もともとはただの調整池だった。
行政との連携、商業施設の誘致、近隣との対話。
そこを親水空間にするために
たくさんの情熱が動いた。
できあがると自然とそこに鳥が集まった。
噴水の音がひとの顔をやわらかくした。
水はこんなにも優しいものなのか。
あらためて思った。

この場所の管理は、近くのNPOの方々が行なっている。
周囲のゴミを拾ったり、
日々の様子をレポートしたり、
水位があがるとゲートをしめたり、
親子がもっと楽しむためのアイデアをだしたり。
20人シフトで365日休むことなく。
雨の日にゲートをしめにきた男性を見かけた。
まるで孫のために庭を整える祖父のように見えた。

ひとつの施設が、自然にひとの手で守られていく。
そうなってはじめて施設は育っていくものかもしれない。
この新しい街は、
街が街であるために必要なものをいつも教えてくれる。
いい街には、物語がある。
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2017年5月掲載 雑誌広告
「柏の葉アクアテラス」
こぼればなし
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立ち入り禁止の池を、人が集う空間へ。
たくさんの情熱から生まれた「柏の葉アクアテラス」。

2016年の秋、柏の葉スマートシティにひとつの池が誕生した。
通称「柏の葉アクアテラス」。人が立ち入ることのできなかった調整池を、人々の交流を生む親水空間へと生まれ変わらせた。
その中心的役割を果たしたのが、公民学の街づくりを柏の葉で推進するために組織されたUDCK(柏の葉アーバンデザインセンター)の副センター長・三牧氏と、三井不動産 柏の葉街づくり推進部の讃井だ。
このほとんど前例のないプロジェクトをどのように実現していったのか。二人に当時を振り返ってもらった。

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人が集う場にするという強い意志が、 前例のないプロジェクトを動かした。

三牧:
「はじめてこの話を聞いたとき、面食らいました。そこまでやるの?って」

三牧氏が驚いたのもムリはない。調整池を整備するにあたって、三井不動産が提案したのは、池の周りを囲う柵の中に人が入れるようにして、水辺まで行けるようにするというもの。調整池は雨が降るとすぐに水位が上がってしまう場所なので、せいぜい池の周囲をきれいにして、柵の外側に遊歩道をつくるというのが一般的な整備方法だ。都市デザインや街づくりに精通する三牧氏は、安全面や管理・運営面なども考えると、実現は難しいと感じた。

讃井:
「柵の外からただ眺めるだけの池なら、人が集い、交流する空間には絶対にならない」

そこは三井不動産として譲れないところだったと讃井は振り返る。自治体が中心となって作成していた当初の案は、池の周辺は整備するものの、柵の中には入れないものとなっていた。

讃井:
「最初からすんなり進むとは思っていなかった。ただ関係者の、柏の葉をいい街にしたいという熱意は一致していたので、時間をかけてもお互いに納得できるところを探っていこうと考えました」

それから1年にわたる議論の末、最終的に三井不動産の提案が受け入れられた。三牧氏は、こういうケースは珍しいという。

三牧:
「たいてい、おもしろそうな案もいろいろな問題があると妥協して、無難なものになってしまう。実績のある三井不動産が旗振り役となり、情熱をもって推進したからこそ、自治体の賛同も得られたと思います」
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どうすれば、
多くの人や企業に親しまれる空間にできるのか。

方針は決まっても、問題は山積していた。この場所に来てくれる企業はあるのか。
本当に人が集まってくれるのか。管理や運営はどうしていくのか。

誘致先として候補にあがっていたのが、T-SITEを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)だ。以前から、柏の葉の街づくりには興味を持ってくれていたが、この場所は駅から徒歩7分の距離。商業施設としては最高の立地とは言い難い。CCCの担当者に何度も足を運んでもらうなかで、決められた場所に店舗を出すということではなく、これからの街の中心になる空間を作るプロジェクトであることに共感を得て、国内4店舗目となるT-SITEの出店が決まった。

人が集う場所、憩う空間にするための工夫もいろいろ考えた。斜面を利用したくつろぎ空間「親水テラス」や、水際に張り出した「親水ステージ」などもアクアテラスならではのユニークな仕掛けだ。

讃井:
「池のデザインや設計については、UDCKをはじめとする都市デザインの専門家チームにお任せしていましたが、1つだけ、音にはこだわりたいと思いました」

讃井には思い入れのある公園が2つあった。富山の富岩運河環水公園と、讃井の地元福岡にある大濠公園だ。

讃井:
「どこからか水の流れる音が聞こえ、そこに集まる人の声とも重なり合って、どちらもすごく居心地がいい。見た目の美しさも大切なのですが、心地よい音と動きのある風景を柏の葉にもぜひ再現したいと思っていました」

そうして提案したのが、噴水だった。ただ、アクアテラスはあくまで調整池なので、音を演出するだけの仕掛けならつくる意味はない。噴水は水に空気を入れることでボウフラの発生を抑制する水質浄化装置にもなることから、実現にいたった。

三牧氏のこだわりは、池の真ん中につくった橋。これも調整池としては必要ないものだが、人の動線を考えたらどうしても必要なものだった。

三牧:
「対岸に行きたいと思っても、池の周囲を回るとなるとためらってしまう。アクアテラスが完成して、橋を往来している人を見かけるのが何よりも嬉しいですね」
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何十年先も、魅力的な場所であり続けるために。

アクアテラスは、管理面でも新しい試みをしている。周辺の地権者によって組織された協議会による費用負担のもと、UDCKと柏市が共同で行っているのだ。これから何十年も持続させるためには地権者の協力が欠かせないと考え、管理費の負担を1軒1軒打診してまわった。

讃井:
「最初は当然、どうして?という意見が大半でした。おもに利用するのは新しい住民だから、その人たちに負担してもらったらという声もありました」

それでも足繁く通い、自分たちで管理していく意義を説明してまわった。この池が、街の風景が変わるきっかけになる。この風景を新しい世代の人々に引き継いでいく。池が整備されていくにつれ、共感してくれる人が徐々に増えていった。そうして全員の合意を得られたのは、アクアテラス竣工のわずか1週間前だった。

讃井:
「アクアテラスは、古くからの地主さんが費用を負担して、高度成長期に越してきた方々が中心となっているNPOが管理・運営を担当し、最近住み始めたファミリー層がおもに利用している。世代をつないで成り立っているんです」
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一人ひとりの思いがつながり、
大きな輪へと広がっていく。

アクアテラスがオープンして半年ほど経った。毎日、地域のNPOの方々がゲートを開け閉めし、池を巡回して日々の様子をレポートしてくれている。毎月1回、自治体とUDCK、三井不動産が一緒になって草刈りをしたり、噴水につまってしまうタニシやザリガニをとりに行ったり、アクアテラスを大切に守っている。

讃井:
「最初は立ち入り禁止にしようと言っていた自治体の方も、今では誰よりも積極的で、清掃の際にはトラックまで出してくれる。地主さんも『藻をとるのは鯉を放すのがいいらしいよ。俺が入れてやろうか』と提案してくれたり(笑)。いい場をつくったら、みんなで守ろう、良くしていこうという気持ちに変わるんですよね」

UDCKの三牧氏のところには市民からの問い合わせも増えているという。

三牧:
「親水ステージで音楽イベントをやりたいとか、フラダンスをやりたいとか(笑)。こういう場をつくるとみなさん創造力がかき立てられるみたいで」

公・民・学、それぞれ違う立場から意見をぶつけ合い、お互いに納得できるものをつくり上げ、新しい一つの輪となって広がっていく。いろいろな街づくりのケースを見てきた三牧氏は、これまでを振り返る。

三牧:
「プロジェクトが魅力的だといろいろな人たちが立場や利害を超えてチームになれる。今回はそのことを本当に実感しました。最初は面食らうような計画でも、いいものをつくりたいという思いが共有できればなんとかカタチにできる。三井不動産のこれで行くんだという強い意志が、みんなを巻き込んでいったと思います」

アクアテラスでは、学校帰りの男女の姿もよく目にする。池のほとりのテラスに座って楽しそうにしゃべっていたり、グループで遊んでいたり。次代を担う子どもたちの出会いの場になり、大切な時間を過ごす場になり、やがて思い出の場所になっていき、そのまた子どもたちにも引き継がれていく。たくさんの情熱で生まれたこの場所が、さっそく新しい物語をつむぎ始めたようだ。

VIVITA Light House 2017

2017年の夏に開催されたイベント、「VIVITA Light House 2017」 水上に配置したバルーンライトを、音楽に合わせて光らせた。 親子連れなど約300名が集まり、盛況のうちに終了した。 アクアテラスでは他にも多くのイベントが計画されている。
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