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トップメッセージ

街づくりを通して持続可能な社会の構築を実現

左:代表取締役社長 植田 俊
右:代表取締役会長 菰田正信

はじめに

世界では、デジタルとリアルを組み合わせた新たなくらし方や働き方が始まり、さらには、仮想空間・宇宙・グリーン等の新分野を含む、様々なイノベーションが生まれています。今、社会では、本気でイノベーションを起こし、圧倒的な「付加価値」を創出し、産業競争力を高めることが求められています。

三井不動産グループはこれまで、時代ごとの社会課題を、価値創造を通じて解決してきました。たしかに、世界各エリアにおいて、ハードな建物を作り、街を創るという意味では、当社グループは「不動産デベロッパー」と言えます。しかし、これまでの価値創造が示す通り、当社グループの本質は、街づくりを通じて、産業競争力の向上や新産業の創造に貢献し、人々、そして社会がより豊かに発展するための場を提供する、言わば「産業デベロッパー」という「プラットフォーマー」である、と考えています。

そして、今日までに構築してきた多種多様な顧客ポートフォリオは、当社グループにとってかけがえのない財産であり、将来の企業成長を実現するための大きな強みとなっていきます。

三井不動産のルーツ・DNA・「&マーク」の理念

2022年は、三井グループの祖、三井高利(たかとし)が生まれて400年の節目の年でした。そして2023年は、三井高利が伊勢松阪から江戸に移り、日本橋に呉服店を開いて350年になります。

三井高利は、1673年江戸・日本橋に呉服店「三井越後屋」を創業し「現金安売り掛け値なし」という画期的な商法で飛躍的な発展を遂げました。こうした「顧客志向」を「進取の気性」を発揮して江戸の世で最初に実践したのが三井高利であり、これが三井不動産のDNAとして受け継がれてきました。

そして、DNAを象徴的に結晶化したものが「&マークの理念」という経営ビジョンです。

対立する概念を「or」でどちらか選ぶのではなく、多様性を受け入れ、相反する価値観であっても、その相克を乗り越え「&」で共生させ、持続可能な社会を実現していくことを経営の理念に据えています。
この経営ビジョンは、サステナビリティやESGなどが世間で言われる遥か以前の1991年、当社創立50周年に制定しました。

例えば、かつて不動産開発は自然破壊と捉えられていましたが、だからこそ、当社グループは、「&マークの理念」をもって、地球環境や地域との共生を大事にしてきました。

東京・日本橋の開発コンセプト「残しながら、蘇らせながら、創っていく」はその象徴と言えるでしょう。

三井不動産の街づくりの思想

当社の目指すべき価値創造は「社会的価値の創出」と「経済的価値の創出」を車の両輪と捉えています。そして、当社グループの生み出す社会的価値とは、街づくりを通して 「人々に感動を与え」 「人々のくらしを豊かにし」 「持続可能な社会を実現すること」に他なりません。

「人が主役」の街づくり

今後ますます多様化・高度化する顧客ニーズに応えていくためには、お客さまにハードとして空間を提供するだけではなく、ソフトサービスも含めた「くらし」や「オフィスライフ」を提供する、という考え方にビジネスを変えていかなければなりません。つまり、不動産をモノとしてではなく、サービスとしてお客さまに提供していくことです。私達はこれを 「Real Estate as a Service」と呼んでいます。

また、こうした考えのもと、デジタルトランスフォーメーションを積極的に加速することで、事業の競争力を一層高めてまいります。

「経年優化」の街づくり

「人が主役」の街づくりを進めていくと、その街を訪れる人が変わったり、またはその人の求めるものが変わってゆくことに対応して、街も進化していかなければなりません。また、街には時の記憶が刻まれ、緑などの自然も育っていきます。

街に根差した良質なコミュニティを創出し、良質なタウンマネジメントをおこなっていくことで、その街は時を経るごとに味わいを増し、魅力も増していきます。私達はこれを「経年優化」と呼んでいます。私達の街づくりは建物の完成がゴールではなく、むしろスタートなのです。

今後の展望と取り組み

この様な時代に企業に求められることは経済的価値だけでなく社会的価値の創出です。もちろん、これらの価値は両立するものであり、価値創造と社会課題解決を通じた持続可能な社会への貢献こそが、ひいては当社グループの持続的な成長に繋がっていくと考えています。

更なる企業価値の向上に向けて、今、当社グループが率先して取り組むべき課題について、お伝えしていきたいと思います。

脱炭素社会の実現

気候変動への対応は、社会基盤の構築・発展を担う当社グループの社会的責務であり、脱炭素に向けた取り組みを最重要課題と位置付けています。温室効果ガス排出量の削減に向けた中長期目標を掲げるだけでなく、不動産業界のリーダーとして、どのようなアクションプランで実現していくのか。2021年11月、当社グループは脱炭素社会の実現に向けたグループ行動計画を策定し、2022年を実行元年として位置付けました。

脱炭素社会の実現は、まさに「&マーク」における「共生・共存」の理念のもと、社会全体で取り組むべき喫緊の課題であり、当社グループでは、ステークホルダーの皆様と一体となって、これらの行動計画の実現にむけた活動を強化してまいります。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)への取り組み

もう一つ「&マーク」に込められた思いが「多様な価値観の連繋」、すなわち、近年、企業経営における多様性確保のために重要視されている「ダイバーシティ&インクルージョン」です。昨年当社グループは、ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言および取組方針を策定し、特に女性活躍推進を重要テーマと位置付け、グループとして定量・定性目標を設定しました。

企業の価値創造を支える最も大きな原動力は「人」という資産である、との認識のもと、これまで以上に女性やグローバル人材等の多様な価値観・能力を融合させてチームとしての価値創造力に変えていき、そこから生まれる様々な意見や知見を活かすことで、新たなビジネス機会の創出につなげていきたいと考えています。

リアルとデジタルを最適に組み合わせた街づくり

新型コロナウイルス感染拡大が起こした、くらし方や働き方における不可逆的な変化を捉え、ビジネスモデルを変革していくことが大変重要であると考えています。

コロナがもたらした最大の気付きとは、リモートの有用性である一方で、デジタルでは代替できないリアル空間の価値の再認識です。人と人がリアルの空間で接触することにより生まれるイノベーション、雑談等の偶然性から生まれる新しい価値、五感で感動体験を得るスポーツ・エンターテインメントなどがその代表的な例です。

ポストコロナの街づくりは、リアルとデジタルの最適な組み合わせを考えていかなければなりません。デジタルが適している部分については徹底的にデジタル技術と街に蓄積したデータを活用するとともに、リアルが適している部分についてはリアル空間ならではの価値を究極に高めていくことが求められます。

最後に

今後、三井不動産グループの各事業において競争環境の激化が見込まれる中、あらゆる分野において、自らが「需要を創り出していく」ことが大変重要であると考えています。それを実現するために、われわれ自らがオープンイノベーションのプラットフォームを提供し、企業や社会、それを構成する人々の英知を結集させることで、新産業の創造のサポートを加速してまいります。

また、住宅や商業施設、ホテル・リゾート、スポーツ・エンターテインメントなどのいわゆるBtoC事業においても、多種多様な顧客ポートフォリオを活かし、様々な人々を巻き込みながら、より豊かなくらし方や楽しみ方を提案し、新たな需要の創出につなげていくことが重要であると考えています。

三井不動産グループはこれからも、グループ一丸となり、「産業デベロッパー」として社会の発展とともに成長してまいります。

三井不動産株式会社
代表取締役社長