

三井不動産株式会社
代表取締役社長

三井不動産グループの社会的使命を端的に表現しているのが、「都市に豊かさと潤いを」というグループ・ステートメントです。その使命を果たすために、私たちは3つのCSRテーマ、すなわち《環境への取り組み》《高い品質の商品やサービスの提供》《新たな価値・市場創造へのチャレンジ》を掲げ、取り組んできました。
そのような中、2011年3月の東日本大震災と、その影響によるエネルギー問題は、本当の「安全・安心」や「サスティナビリティ」とは何かという課題を私たちに突きつけました。日々の生活の場を提供するデベロッパーとして、当社グループにおいても、上記CSRテーマの中で特に「安全・安心」「サスティナビリティ」に関わる面に取り組んだのが2011年度でした。

2012年4月、三井不動産グループは、2012年度を始期とする新たなグループ中長期経営計画「イノベーション2017」を策定、発表しました。これは、国内市場の成熟化や市場のグローバル化といった事業環境の変化、さらには東日本大震災以降に顕在化したさまざまな課題などを踏まえ、次の時代に向けた価値創造のイノベーションを加速しようというものであり、私たちのCSRの実践にも深く関わっています。
例えば、「イノベーション2017」では、三井不動産グループが今後、力を入れていくべき取り組みの1つとして「街づくりの推進」を挙げ、「街づくりの基本姿勢」を次の3点に集約しています。1つ目は、用途の複合化やソフト・ハードの融合といった「多機能・多彩なコンテンツの融合」。2つ目は、住む人、集う人、憩う人や地域をつなぐ「コミュニティの創造」。そして3つ目は、街が完成したのちもタウンマネジメントなどを通じて、年々、街をよくしていく「経年優化」。この3つを好循環させることが新たな価値の創造につながると考えています。
こうした基本姿勢は、私たちのこれまでの取り組みの延長線上にあるものです。2012年3月に開業5周年を迎えた「東京ミッドタウン」では、当初から開発コンセプトとして“Diversity on the Green”を掲げ、多様な都市機能の融合を目指してきました。また、来街者やテナント企業、周辺の六本木エリアの住民の皆さまなどとともに行うさまざまなイベントや地域貢献活動を通じて、「東京ミッドタウン」を核とするコミュニティの形成も図ってきました。さらに、街の象徴である豊かな緑を守り育てることで、周辺エリアを含めた街の価値向上、すなわち「経年優化」にも取り組んでいます。
同様の基本姿勢は、「残しながら、蘇らせながら、創っていく」というコンセプトを掲げて官・民・地元一体で進めている「日本橋再生計画」の取り組みにも浸透しています。

そうした街づくりの基本姿勢のもと、当社グループがこれから積極的に取り組んでいきたいと考えているのが、「スマートシティ」の推進です。私たちの考える「スマートシティ」とは、さまざまなハードとソフトを組み合わせることで、安全・安心やサスティナビリティ、環境共生、快適性・効率性などを実現する街づくりです。
当社グループにおけるその先駆的な取り組みとして、「柏の葉スマートシティ」が挙げられます。ここでは、「『世界の未来像』をつくる街」をコンセプトに、公民学連携のもと環境共生・健康長寿・新産業創造などの社会的課題を解決するモデル都市を目指しています。日本が先進諸国に先駆けて直面している課題の解決に取り組むことで、国内外を問わず今後の街づくりに貢献できる、そんな「課題解決型の価値創造」にグループを挙げて取り組んでいく考えです。
