
東日本大震災の発生を受けて、多くの企業が防災対策やBCP(事業継続計画)の見直し・強化を図っています。三井不動産のビルディング事業においては、テナント企業の防災対策やBCPをサポートするために何をすべきかを考え、大きく次の4つの面で取り組みを行うこととしました。
「三井のオフィス」では、より「安全・安心」なオフィス空間の提供を使命として、今後もさまざまな取り組みを進めていきます。

燃料タンク(一部)
非常用発電機
テナント企業のBCPやオフィスワーカーの館内滞留に必要な機能・環境を維持するために、「オフィスビル設計指針」を改訂し、防災スペックの向上を図っています。2012年2月に竣工した「横浜三井ビルディング」などの新築ビルをはじめ、既存ビルにおいても、設備の改修を順次進めていきます。
防災スペック向上の主な内容
- 1.72時間対応の非常用発電設備の標準装備
- 災害時のライフライン寸断に備えて新築ビルにおいて72時間運転可能な非常用発電設備を設け、エレベーター、トイレ、換気などに電力供給します。
- 2.主要機能の維持・早期復旧のための対応強化
- エレベーターやトイレ、換気、セキュリティなど、主要設備の機能維持・早期復旧の対策を強化します。
- 3.建物被災度判定システムの導入拡大
- 地震発生後10分程度で建物構造の被災状況の一次判定が行えるシステムの導入対象を拡大します。

上水貯水槽
災害備蓄倉庫
大規模地震が発生し、テナント企業のオフィスワーカーが帰宅困難となった場合、より安全な行動を選択できるよう、建物内での一定期間の滞留を可能にする施策に取り組んでいます。
滞留を可能とするための施策の一部
- 1.防災備蓄品の配備を強化
- ●在館人口相当人数の1日分の水・食糧の備蓄
- ●簡易トイレ、医薬品、救護機材等の備蓄拡充
- 2.情報発信の強化
- ●TVモニターなど情報発信ツールの整備
- ●各エリアの被災状況、公共交通機関の復旧状況などの情報を、危機管理センターから各オフィスビルへ提供

危機管理センター(三井二号館)
TV会議システム(左)
複数の通話手段(右)
当社では、大規模災害発生時に全国約300棟のオフィスビルの災害対応の司令塔となる「危機管理センター」を東京・日本橋の本社に設けています。この度、危機管理機能の向上・充実のためスペースの拡張を行いました。
危機管理機能の主な向上点
- 1.電源など基本機能の向上
- 72時間以上対応可能な非常用発電機を配備するほか、起動ボタン1つで全システムが立ち上がる機能を付加。
- 2.専用通信回線による情報通信ネットワークの構築
- 専用通信回線によるTV会議システムや衛星携帯電話など、一般回線電話に依存しない複数の非常時情報通信ネットワークを確立。
また、平日夜間や休日にも速やかな対応が行えるよう、社員が2名ずつ交代で当直を行う24時間365日体制を構築しています。

防災ガイドブック
オフィス什器転倒・落下防止
ガイドブック
防災に対する当社の取り組みを紹介した『防災ガイドブック』と、テナント企業の皆さまに什器の転倒・落下防止対策の重要性を認識していただくための『オフィス什器 転倒・落下防止ガイドブック』を発行しました。これらのガイドブックを活用しながら、テナント企業とともに防災対策を推進していきます。
『防災ガイドブック』の主な内容
- 1.災害時の組織体制と役割
- 危機管理センターに設置する災害対策総括本部と各ビルとの連絡体制について。
- 2.「三井のオフィス」の防災機能
- 被災度判定システム、耐震性能・制振構造、非常用設備、備蓄品について。
- 3.災害時に備えたコミュニケーションと訓練
- テナントリレーションと各種訓練について。
ハード・ソフト両面での
「安全・安心」を
三井不動産 ビルディング本部
運営企画部 伊藤 博文
東日本大震災以降、テナント企業様のBCP意識の高まりを強く感じます。そうした動きに応え、災害時にテナント企業様の安全・安心をサポートすべく、 さまざまな被害・事故を想定したスタッフの訓練や研修などに注力しています。
また災害に備えるには、テナント企業様との連携や災害に対する共通認識も非常に大切です。当社では、毎年所轄消防署にもご協力いただき、各ビルで全館を挙げての防災訓練を実施しているほか、テナント企業様の防災に関するご相談対応を行うなど、日ごろから緊密なコミュニケーションを図っています。
テナント企業様には「三井のオフィスなら安心」と感じていただきたい。今回の対策強化もその一環です。設備・備蓄などハード面と、訓練やコミュニケーションなどソフト面の双方から、いっそうの「安全・安心」の提供に努めます。
テナント企業様との
コミュニケーション
ビルスタッフの毎朝の訓練
消火訓練の様子