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第10回 本人確認・意思確認第10回 本人確認・意思確認

レッツプラザ2018年9月号/執筆者:神宮 保彦

銀行取引にかかわらず、最近では様々な取引において、当事者の「本人確認」が義務付けられており、不動産の取引においても例外ではありません。また高齢化が進むなかで「意思確認」も重要なポイントになりますので、今回はこの問題をとりあげましょう。

なぜ「確認」が必要か?

昨今、様々な詐欺事件が世間を騒がせていますが、不動産に関してもそのような事件が実際に起こっています。皆さんは「地面師」という詐欺をご存知でしょうか?

文字通り土地取引を目的とした詐欺のことなのですが、不動産登記が電子化された現在でもこのような詐欺事件が起きています。最近でも某大手デベロッパーが数十億の詐欺事件に巻き込まれ新聞沙汰になりました。これはいわゆる「なりすまし」の手口で、詐欺犯が所有者になりすまして土地を売却しようとした事件です。その手口は非常に巧妙で、運転免許証はもとより印鑑証明でさえ本物と見分けがつかないほどそっくりに偽造してしまうため司法書士や登記官でさえ見抜けないほどです。

未遂に終わったケースでは、免許証や印鑑証明に記載されている住所に本人が住んでいないことが判明したことで事なきを得たというもので、それを確認しなければ被害にあっていた可能性がありました。あらためて、本人であることを確認することの重要性を考えさせられる事件でした。 さて、本題に戻りますが、「本人確認」とは、その人本人であることの確認であり、一方で「意思確認」とは本人がその行為をすることについての意思の確認になります。

不動産取引において仲介業者は、売買当事者の本人確認と意思確認をすることが義務付けられています。では、どのような確認が必要なのでしょうか?

本人確認とは

本人確認とは、売主あるいは買主が当事者本人かどうかを確認する作業です。個人の場合には運転免許証などの公的な身分証明書をもっておこない、特に売主の場合には実印と印鑑証明書、併せて登記済権利証や登記識別情報などを確認します。当事者が法人の場合には、法人の登記事項証明書・印鑑証明書のほか、代表者または取引担当者の本人確認をおこないます。ただし、前述した「なりすまし」の場合、書類だけの本人確認では判別できないため、一度は自宅や事務所に訪問し、そこに本人が所在することを確認することも必要になるでしょう。本人の所在場所以外でしか会いたがらないような場合は少し慎重になったほうが良いかもしれません。この確認作業を怠って、万一権利の無い相手と取引をした場合、真の権利者から契約を取り消されることになり大きな損害を被ることになります。

意思確認とは

高齢化社会が進み認知症問題が取り沙汰される中で、当事者に行為の意思があるかどうかを確認することは、取引のなかで大変重要なポイントになっています。

不動産取引における意思確認とは、売買の当事者と面談をし取引の意思があるかどうかを確認する作業です。取引の当事者が本人かどうかの確認をおこなったうえで、取引の意思についての確認をおこないます。認知症が疑われるケースも含め、意思確認の作業に注意が必要なケースを3つあげておきます。

①取引物件が共有名義である場合

共有名義の場合には共有者の一人でも取引に異議をとなえれば取引は成立しないため、共有者全員の意思確認が必要です。

②代理人が取引に立ち会う場合

本人および代理人の本人確認のほか、代理人に当事者の代理権限があるかどうかの確認と本人に取引の意思があるかどうかを確認する必要があります。子供が親の不動産の売却について動いている場合や、配偶者が所有する物件を売却するような場合などは必ず確認する必要があります。

③認知症等で能力に瑕疵がある可能性がある場合

本人に意思能力があるかどうかを司法書士等に確認してもらう必要があります。意思能力に問題がある場合には家庭裁判所に成年後見人等を選出してもらったうえで手続きを進める必要があり、この手続きには相応の期間を要します。

本人確認や意思確認は少し面倒な作業ですし、一般的にはそれほど注意を払わないことかも知れませんが、これを怠ったことで被るかもしれない損害は甚大です。思わぬ事件に巻き込まれないためにもしっかり確認してください。

※「本人確認」と「意思確認」はしっかりおこないましょう。

※本記事は2018年9月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

神宮 保彦
三井不動産リアルティ株式会社
関西支店 ソリューション営業部長 神宮 保彦

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