2015年10月、「三井不動産ロジスティクスパーク日野(MFLP 日野)」が竣工しました。約2万㎡の緑地を有し、敷地内に認証保育所を開園するなど利用者に配慮した物流施設を手がけてきたキーパーソン4名が、物流事業の過去、現在、そして未来を語ります。
※掲載されている部署名はプロジェクト担当時のものです。


中央自動車道・八王子ICから南東約5㎞の場所に立つ。敷地面積約3万坪、延床面積約6万5000坪。地上5階建・免震構造による国内最大級の物流施設は、差別化しづらいと言われる商品において際立った存在感を放つ。「働く人」に着目し、オフィスのようなエントランスや寛ぎのカフェテラスなどを有し、ハードとソフトの両面から差別化を追求している。

2015年10月、『三井不動産ロジスティクスパーク日野(MFLP 日野)』が竣工しました。約2万㎡の緑地を有し、敷地内に認証保育所を開園するなど利用者に配慮した物流施設を手がけてきたキーパーソン4名が、物流事業の過去、現在、そして未来を語ります。
※掲載されている部署名はプロジェクト担当時のものです。

中央自動車道・八王子ICから南東約5㎞の場所に立つ。敷地面積約3万坪、延床面積約6万5000坪。地上5階建・免震構造による国内最大級の物流施設は、差別化しづらいと言われる商品において際立った存在感を放つ。「働く人」に着目し、オフィスのようなエントランスや寛ぎのカフェテラスなどを有し、ハードとソフトの両面から差別化を追求している。

企画
今田 貴仁
2008年中途入社
商業施設本部 物流施設事業部
(現在はロジスティクス本部 ロジスティクス営業部 営業グループに在籍)

プロジェクトの発端は2010年までさかのぼります。ある商品本部において、地主様が所有されていた東京都日野市の工場跡地を取得すべく、用地担当が地道な活動を展開していました。私自身はこの時点では建物を開発する部署に所属していたので、本件に関わっていませんでしたが、土地の用途変更が困難であったため、計画が難航していました。土地というのは都市計画法で12種類に分類されていますが、当時、開発したい商品とその土地の用途が異なっていたのです。物流施設事業部に異動になったのはちょうどその頃、2012年7月でした。そしてある日のこと、本部長から「日野で物流はできるか?」と問われた私は、「できますよ」と即答したことを覚えています。まずは「イエス」から入るのが私の会社人生におけるひとつの哲学でもあったからですが、回答には自分なりの根拠がありました。理由は3つ。面積も約3万坪と広大であること。中央自動車道や日野バイパスといった幹線道路にすぐにアクセスできること。そして、ここが大きなポイントでしたが、JR豊田駅から徒歩12分の距離にあるということでした。



荷物を保管する倉庫と異なり、物流施設では高度化された作業が行われます。日用品においてはチラシやカタログに掲載するための商品写真を撮影したり、工業製品においては周辺部品を取り付けて発送したりと、いわゆる「流通加工」が行われるというのが倉庫との大きな相違点。しかもこうした作業と同時に、今日では即日配送への対応も求められています。当然、作業スペースのみならずオフィススペースも必要となり、施設で働く人の数も多くなるのが特徴です。この点で電車通勤しやすい立地というのは今後、テナントを誘致するうえでの営業に有利に働くと私は考えました。だから上司に「できますよ」と答えたわけですが、「じゃあ、検討して買ってこい」とその場で下知され、新たなプロジェクトが立ち上がる瞬間に遭遇できたことは、幸運なことでした。その幸運を引き寄せたのは、会社人生において「イエス」から入ることを是としてきたからだと自負していますが、同時に感じ入ることもありました。それは上司の決断の速さであり、数百億円にも及ぶ買い物をポンと任されるダイナミズムやスケール感であり、何ができるかを考え、つねに前を向いて進んでいこうとする三井不動産の心意気でした。元金融マンだった私にとって、「これぞデベロッパーだな」と実感したことを、印象深く覚えています。

日野の用地取得は、物流施設事業部のプロジェクトとして再スタートすることになりました。しかし、「いきなりそんな広大な土地を買って大丈夫か?」という社内の慎重な意見もありました。発足したての部署だっただけに、十分な知見もノウハウもないという点では多くの不確実性もあり、慎重な意見はもっともだったと思います。そこで私も用地を購入するにあたっては、いろいろなパターンを比較検討しました。通常の実物不動産売買にして購入価格を抑えるか、信託受益権売買にして取得税を抑えるか。建物1棟にして建築費を抑えるか、2棟を段階的に建てリスクヘッジするか。最終的に転売したらどうか。複合開発としたら……。あらゆる可能性を探り、かかる数値を想定し、それを積み上げながら収支を見極めました。こうして2012年12月、土地売買を進めました。開発にあたって、地元行政に対しては、いかに公益に資する施設であるかを説明しましたが、伝えたかったのは、「3PL※事業者や通販・Eコマース市場の伸長を背景に、機能性に富んだ物流施設の需要が高まっており、日本の物流のさらなる進化に貢献できる」ということでした。
※「Third(3rd)Party Logistics(略して3PL)」とは、一般的に荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託し遂行すること


事業
竹澤 正治
2007年入社
ロジスティクス本部 ロジスティクス事業部 事業グループ

今田の働きにより、物流施設用地として購入する目処が立ったあたりから私も合流し、彼がアレンジしていったことを引き継いでいきました。その過程で、まずひとつめのヤマ場となったのが2013年3月より着手した行政手続きでした。地域の住環境に大きな影響を与える大型施設を建てる場合、計画概要を行政に提出し、近隣の方々への説明を行い、様々なご意見・ご要望を集約し、それを計画に反映することが定められています。そして再検討した計画を再び、行政に提出するとともに、近隣の方々に説明をしながら合意形成を図っていくといった具合です。とくに、専門家たちによる第三者機関にも諮ることが行政手続きの1つに規定されていたので、私は10数回に及ぶ会合を設けましたが、最大の懸案となったのがトラックの交通量増大でした。取得した用地は南東側に住宅地が広がることから、計画に反対の意見も当初は少なくありませんでした。ただ、これは私の本心ですが、そうした意見はどれもが事業を進めるうえでの貴重な財産でした。なぜなら、近隣の方々の不満や不安を少しでも和らげられるよう最大限努力することが、計画を進めるうえでの1つの道標となるからです。



具体的には、近隣住民の方々にできる限り配慮すべく、出入り口を住宅地とは反対の西側に設置しました。さらに騒音や排ガス、ライトの光などが極力敷地外に漏れないよう、施設機能を敷地内の中央に集約し、それを威圧的な壁で取り囲むのではなく、常緑高木を植栽した生け垣としました。結果として、敷地面積約9万㎡のうち約2万㎡を緑地にすることができ、その一部を広場として開放できるようになりました。そこにその土地で昔から親しまれてきた高さ10mを超える桜の古木を移植したことによって、近隣の方々の憩いの場として利用いただけるようになったほか、地域の美観を形成する一助にもなりました。さらに、何らかの形で地域に貢献したいという想いがあった中で、行政の協力もあり、敷地内に認証保育所を開園することもできました。そして、私たちにとってのもう1つの山、乗り越えるべき壁として立ちふさがったのが、「どのような建物をつくるか」という中身でした。これには正直、頭を悩ませました。

三井不動産はこれまで「人」を主役とした施設を開発してきましたが、物流施設の場合は「トラック」が主役。この点で社内に知見は少なく、部門としても4件目の事例ではあったものの、設計に取り組んだ時点ではまだ1件も竣工しておらず、この点でもあらゆることが試行錯誤でした。とくに日野の場合、前述のように機能を敷地中央に集約しようとした結果、敷地内はワンウェイ動線、建物内も中央に車路を通し、その左右に倉庫スペースを設ける形となりました。ただ、このパターンは当時は全国的にも珍しく、私はいろいろな伝手を辿っては日本各地の物流施設を自分の目で確かめ、イメージを膨らませていきました。同時に、私の力となってくれたのが、設計会社や建設会社の担当者の方々でした。トラックの動線、床荷重、天井高など、彼らの知識が私にとっての教科書となって2014年6月、着工にこぎ着けることができました。とはいえ、その後も追加の工事が増え、当初の計画を見直す場面も多く、スケジュールやコストに影響が及ぶこともしばしば。工期も予算も限られているなかで、その都度、設計会社や建設会社の担当者の方々と額を付き合わせては知恵を出し合い、工夫を重ね、互いに何とか合意点を見いだせたことは、よき思い出です。こうして2015年10月、晴れて竣工を迎えることができました。


営業
杉山 隆
2004年入社
ロジスティクス本部 ロジスティクス営業部 営業グループ

一般に、倉庫や物流施設というのは差別化しにくく、ほぼ賃料のみで判断される商品とされています。現にスペックを2倍にしたところで、賃料は2倍となりませんし、その点で付加価値を収益に反映しづらい商品と言えます。そのなかでも、『MFLP 日野』については、用地担当の今田、開発担当の竹澤がしっかりと強みを打ち出した開発をしてくれたおかげで、とても競争力のある商品に仕上がっていると、私は営業活動を展開するなかで日々実感しています。今田がJR豊田駅に近いことのメリットにいち早く着目していましたが、これからの物流施設はマンパワーが不可欠。テナント企業にとっても従業員の確保が喫緊の課題となるなかで、電車通勤しやすく、10km圏内に183万人が暮らすこの立地は、「働く人」の確保という点に商品の差別化を見いだせると今田は考えていました。さらに竹澤が、近隣の住環境への影響を極力軽減すべく、トラック動線を徹底的に調査、検証しながら立てた計画により、トラックにとっては極めて快適で効率性に優れた施設に。さらに、そこで働く人たちのことを考え、共用部を充実、洗練させたことは三井不動産ならではだと思います。



日々の仕事は上述のアピールポイントを踏まえ、主に物流会社と荷主企業の2者に対して営業活動を行っています。前者は近年、3PL事業者とも言われますが、荷主に対し、工場や港からの配送にはじまり、製品や商品の受発注、在庫管理、そして情報化にいたるまで、包括的な物流改革を提案することで一括して物流業務を受託しています。当然、彼らにとってはクライアントの求めに応じた拠点が必要となることから、私たちの施設を利用してもらえる可能性も高くなります。そして後者については、極論すると現物としての製品や商品を扱うすべての企業が対象となります。従来は自社で物流を行う企業も多かったのですが、消費者ニーズはめまぐるしく変わり、即応性や柔軟性に富んだ物流が求められていることから、拠点を自分たちで確保し、そのオペレーションを3PL事業者に依頼するケースも増えています。いずれにしろ、原料を調達する、製品を生産する、商品を販売するといった企業にとって、物流施設は必要不可欠。そこで私は、三井不動産がオフィスビルや商業施設で培ってきた6,000社近いネットワークを駆使し、地道な営業活動を通じてテナント企業の誘致を進めています。それと同時に今は、自社の他部門や同業他社との交流を通じた情報収集にも力を注いでいます。

新聞報道でも「業務提携」という言葉を目にしない日はありませんが、その背後には必ず、物流の効率化に伴うコスト削減が潜んでいます。今日では各社とも物流を見直す気運が高まっており、高機能な物流施設への需要は確実に増えています。しかも、とある調査機関のレポートによれば、『MFLP 日野』のような「先進的物流施設」というのは、日本では全体の3〜4%に過ぎないとのこと。昨今の消費者ニーズのめまぐるしい変化を考えると、物流再編サイクルに関しては期間が短くなっていくことも想定されるだけに、日頃の情報収集を通じていかにキーパーソンを割り出し、次のタイミングに向けて自社施設の優位性をアピールできるか、私たち営業担当の腕の見せ所です。地道な営業活動の一方で、戦略的な取り組みも進めています。加えて言えば、物流事業は立ち上がったばかりだけに、歴史ある三井不動産にあってベンチャースピリッツ旺盛で、新地開拓を担う躍動感にあふれています。ひとつでも多くのテナント企業を誘致することこそが営業の使命ですが、新しい事業だからこそ、日々の活動を通じて顧客ニーズというものをしっかりと拾い、明日の事業へと展開していくこともまた、私の役割と理解しています。


運営
相楽 祥吾
2015年入社
ロジスティクス本部 ロジスティクス事業部 運営グループ

私が入社した年に『MFLP 日野』は竣工しました。10月に稼動することがわかっていたこともあり、現部署に配属された当初から、「いずれ本部最大となる物件がおまえの担当になる」と告げられていました。新物件であり、本部としての看板施設のひとつと聞かされていただけに、新人ではありましたが私なりに、新たな門出を飾るに相応しい仕事ができるようにと、配属後から日々の業務を通じ運営の仕事のイロハを全力で習得していきました。そして竣工検査のときにはじめて本物件を目にしたのですが、その巨大さに驚いたことを昨日のことのように覚えています。本件に関する私の業務は、竣工の1か月ほど前から始まりました。管理会社と契約を結び、警備員や設備員といった人員を配置し、当局への届け出などを進めていきました。稼動してからのコンプライアンスは運営・管理を担う私の責務ですので、消防法に基づく消火器の配置となっているか、人員の配置や体制は条例に抵触していないかなど、行政上、法令上の観点で一つひとつ確認しながら、開業の日を迎えました。グループ会社を通じてではなく、私たち自らが運営を手がけるのも、前例のない対応や判断が求められることが多いからです。



例えば、本物件にはラウンジが備えてありますが、「週1回、打ち合わせとして使わせて欲しい」という相談がありました。想定していなかった申し出に、私は「ほかの利用者の迷惑にならないか」「混雑しない時間帯ならどうか」「かかる水道光熱費の負担はどうするか」「有料として時間貸ししたらどうか」と、考え得る課題を洗い出し、検討し、ルール化を検討したことがありました。事の大小にかかわらず、新しい事業というのは蓋を開けてみないと分からないことも多く、私たちには走りながら考え判断し、ルール化し、体系化し、制度化していくことが求められています。今田、竹澤の働きによって『MFLP 日野』はハードとしての差別化が見事に図られています。そして杉山が、その部分をアピールしながら次々とテナントを誘致しています。私が手本とする先輩たちが、各持ち場で最高の仕事をしているなかで、運営を担う自分にできることは何か。カッコよく言わせてもらえば、「ソフト面での差別化の実現」だと考えています。運営というのはルールのなかで行わなければならず、ややもすれば保守的な仕事になりがち。でも、そうではなくて、ルールのなかでできる最大限を追求した先に、ここで働く人たちにとっての快適で豊かな環境が生まれるはずであり、そういうことをこそ私は制度化したいと思うのです。

上司に言われ、グッときた言葉があります。「お客様の評価を左右する、最後の満足度を握っているのは全部、運営だ」。運営の仕事の何たるかを教えられた言葉でした。そして仕事をしているなかで、営業担当から言われる言葉があります。「俺たちができるのは、お客様を連れてくるとこまで。その後の満足度を高められるのは、おまえたちだけなんだ」。私は現在、日野のほか複数の物件を担当していますが、各物件に足を運んだ際には時間の許す限り、お客様の区画をまわっています。ルールに反する部分があれば、そこは改善を依頼しますが、同時に私たちにも改善点がないかを聞いています。三井不動産のロジスティクス事業が日々成長していること。これは決して、私たちだけの成果ではないと考えています。運営に協力し、理解を示してくれるお客様や近隣の方々、そして行政ほか多くの人たちの支援があればこそ。私たちは2016年3月、ロジスティクス本部の全員で「ともに、つなぐ。ともに、うみだす。」というステートメントを策定しました。私たちは、そんな仕事をしていきたいと思っています。


企画
今田 貴仁
2008年中途入社 経済学部卒
物流施設事業部
(現在はロジスティクス本部 ロジスティクス営業部 営業グループに在籍)

プロジェクトの発端は2010年までさかのぼります。ある商品本部において、東芝様が所有されていた東京都日野市の工場跡地を取得すべく、用地部隊が地道な活動を展開していました。私自身はこの時点では本件に関わっていませんでしたが、東芝様との交渉がスムーズに進む一方で、日野市との交渉が難航しているという話は耳に入っていました。ネックとなっていたのは土地の用途変更でした。土地というのは都市計画法で12種類に分類されており、用途と異なる建物を建てる場合には行政の許可が必要となります。当時、私は土地を開発する部署に所属していたので、個人的にも興味深く、どう活用するのがいいか自分なりに思案をめぐらしていました。物流事業施設部に異動になったのはちょうどその頃、2012年7月でした。そしてある日のこと、本部長から「日野で物流はできるか?」と問われた私は、「できますよ」と即答したことを覚えています。まずは「イエス」から入るのが私の会社人生におけるひとつの哲学でもあったからですが、回答には自分なりの根拠がありました。理由は3つ。面積も約3万坪と広大であること。中央自動車道や日野バイパスといった幹線道路にすぐにアクセスできること。そして、ここが大きなポイントでしたが、JR豊田駅から徒歩12分の距離にあるということでした。

荷物を保管する倉庫と異なり、物流施設では高度化された作業が行われます。日用品においてはチラシやカタログに掲載するための商品写真を撮影したり、工業製品においては周辺部品を取り付けて発送したりと、いわゆる「流通加工」が行われるというのが倉庫との大きな相違点。しかもこうした作業と同時に、今日では即日配送への対応も追求されています。当然、作業スペースのみならずオフィススペースも必要となり、施設で働く人の数も多くなるのが特徴です。この点で電車通勤しやすい立地というのは今後、テナントを誘致するうえでの営業に有利に働くと私は考えました。だから上司に「できますよ」と答えたわけですが、「じゃあ、検討して買ってこい」とその場で下知され、新たなプロジェクトが立ち上がる瞬間に遭遇できたことは、私の幸運でした。その幸運を引き寄せたのは、会社人生において「イエス」から入ることを是としてきたからだと自負していますが、同時に感じ入ることもありました。それは上司の決断の速さであり、数百億円にも及ぶ買い物をポンと任されるダイナミズムやスケール感であり、何ができるかを考え、つねに前を向いて進んでいこうとする三井不動産の心意気でした。元金融マンだった私にとって、「これぞデベロッパーだな」と実感したことを、印象深く覚えています。

日野の用地取得は、物流施設事業部のプロジェクトとして再スタートすることになりました。東芝様については、すでに滞りなく土地を譲り受けられる関係にありましたが、説得が必要だったのは社内の慎重な意見に対してでした。「いきなりそんな広大な土地を買って大丈夫か?」。発足したての部署だっただけに、十分な知見もノウハウもないという点では多くの不確実性もあり、慎重な意見はもっともでした。そこで私も用地を購入するにあたっては、いろいろなパターンを比較検討しました。通常の実物不動産売買にして購入価格を抑えるか、信託受益権売買にして取得税を抑えるか。建物1棟にして建築費を抑えるか、2棟を段階的に建てリスクヘッジするか。最終的に転売したらどうか。複合開発としたら……。あらゆる可能性を探り、かかる数値を想定し、それを積み上げながら収支を見極めました。他方、日野市に対しては、いかに公益に資する施設であるかを説明しました。伝えたかったのは、「3PL事業者や通販・Eコマース市場の伸長を背景に、機能性に富んだ物流施設の需要が高まっており、日本の物流のさらなる進化に貢献できる」ということ。こうして2012年12月、日野市からの認可を踏まえ東芝様と無事、売買契約を結ぶことができましたが、次に控える行政手続きはひとつの山場でした。

事業
竹澤 正治
2007年入社 法学部卒
ロジスティクス本部
ロジスティクス事業部 事業グループ

今田の働きにより、物流施設用地として購入する目処が立ったあたりから私も合流し、彼がアレンジしていったことを引き継いでいきました。その過程で、まずひとつめの山場となったのが2013年3月より着手した行政手続きでした。日野を含む東京西部は住民意識の高い地域で、しっかりとしたまちづくり条例があります。地域の住環境に大きな影響を与える大型施設を建てる場合、計画概要を行政に提出し、近隣への説明を行い、住民からの意見・要望を集約し、それを計画に反映することが定められています。そして再検討した計画を再び、行政に提出するとともに、近隣の方々に説明をしながら合意形成を図っていくといった具合です。とくに日野市では、専門家たちによる第三者機関にも諮ることが盛り込まれていますので、私は都合10数回に及ぶ会合を設けましたが、最大の懸案となったのがトラックの交通量増大でした。取得した用地は南東側に住宅地が広がることから、計画に反対の意見も少なくありませんでした。ただ、これは私の本心ですが、そうした意見はどれもが事業を進めるうえでの貴重な財産でした。なぜなら、知見もノウハウも心許ないなかで、近隣の方々の不満や不安を少しでも和らげられるよう最大限努力することが、計画を進めるうえでのひとつの道標となったからです。

具体的には、近隣住民の方々にできる限り配慮すべく、出入り口を住宅地とは反対の西側に設置。さらに騒音や排ガス、ライトの光などが極力敷地外に漏れないよう、施設機能を敷地内の中央に集約し、それを威圧的な壁で取り囲むのではなく、常緑高木のレッドロビンを植栽した生け垣としました。結果として、敷地面積約9万㎡のうち約2万㎡を緑地にすることができたばかりか、その一部を広場として解放できるまでとなりました。そこに東芝様の工場があったときから親しまれてきた高さ10mを越える桜の古木を移植したことによって、近隣の方々の憩いの場として利用いただけるようになったほか、地域の美観を形成する一助にもなりました。さらにご迷惑をおかけする分、何らかの形で地域に貢献したいという思いから、敷地内に認証保育所を開園することもできました。このように近隣の方々との意見交換によって、今では「思ったよりも影響はなかったね」との声をいただける施設となったことは、私たちとしてもうれしいことでした。いずれにせよ、一連の行政手続きによって計画の外身をよりよいものにすることができたのですが、私たちにとってのもうひとつの山、乗り越えるべき壁として立ちふさがったのが、「どういう建物をつくるか」という中身でした。これには正直、頭を悩ませました。

三井不動産はこれまで「人」を主役とした施設を開発してきましたが、物流施設の場合は「トラック」が主役。この点で社内に知見はなく、部としても4件目の事例ではあったものの、設計に取り組んだ時点ではまだ1件も竣工しておらず、この点でもあらゆることがほぼゼロベースでした。とくに日野の場合、前述のように機能を敷地中央に集約しようとした結果、敷地内はワンウェイ動線、建物内も中央に車路を通し、その左右に倉庫スペースを設ける形となりました。ただ、このパターンは全国的にも珍しく、私はいろいろな伝手を辿っては日本各地の物流施設を自分の目で確かめ、イメージを膨らませていきました。同時に、私の力となってくれたのが、設計会社や建設会社の各ご担当でした。トラックの動線、床荷重、天井高など、彼らの知識が私にとっての教科書となって2014年6月、着工にこぎ着けることができました。とはいえ、その後も追加の工事が増え、当初の計画を見直す場面も多く、スケジュールやコストに影響が及ぶこともしばしば。工期も予算も限られているなかで私はその都度、設計会社や建設会社の各ご担当と額を付き合わせては知恵を出し合い、工夫を重ね、互いに何とか帳尻を合わせていったことは、よき思い出です。こうして2015年10月、晴れて竣工を迎えることができました。

営業
杉山 隆
2004年入社 経済学部卒
ロジスティクス本部 ロジスティクス営業部 営業グループ

一般に、倉庫や物流施設というのは差別化しにくく、コストコンシャスな見方をされる商品とされています。現にスペックを2倍にしたところで、賃料は2倍となりませんし、その点で付加価値を収益に反映しづらい商品と言えます。そのなかで『MFLP 日野』については、用地担当の今田、開発担当の竹澤がしっかりとつくってくれたおかげで、とても競争力のある商品に仕上がっていると、私は営業活動を展開するなかで日々実感しています。今田がJR豊田駅に近いことのメリットにいち早く着目していましたが、これからの物流施設はマンパワーが不可欠。テナント企業にとっても従業員の確保が喫緊の課題となるなかで、電車通勤しやすく、10km圏内に183万人が暮らすこの立地は、「働く人」の確保を考え、そこに商品の差別化を見いだした今田の慧眼でした。さらに竹澤が、近隣の住環境への影響を極力軽減すべく、トラック動線を徹底的に調査、検証しながら立てた計画により、敷地内はワンウェイ動線、しかも各階に大型車がアクセス可能な5階建ランプが上り、下りと2つあるため、「トラック」にとっては極めて快適。作業としても1フロアでのオペレーションが可能なので、効率性に優れます。さらに、そこで働く人たちのことを考え、共用部を充実、洗練させたあたりは、自社の面目躍如でした。

日々の仕事は上述のアピールポイントを踏まえ、主に物流会社と荷主企業の2者に対して営業活動を行っています。前者は近年、3PLことサード・パーティ・ロジスティクス事業者とも言われますが、荷主に対し、工場や港からの配送にはじまり、製品や商品の受発注、在庫管理、そして情報化にいたるまで、包括的な物流改革を提案することで一括して物流業務を受託しています。当然、彼らにとってはクライアントの求めに応じた拠点が必要となることから、私たちの施設を利用してもらえる可能性も高くなります。そして後者については、極論すると現物としての製品や商品を扱うすべての企業が対象となります。従来は自社で物流を行う企業も多かったのですが、消費者ニーズはめまぐるしく変わり、即応性や柔軟性に富んだ物流が求められていることから、拠点を自分たちで確保し、そのオペレーションを3PL事業者に依頼するケースも増えています。いずれにしろ、原料を調達する、製品を生産する、商品を販売するといった企業にとって、物流施設は必要不可欠。そこで私は、三井不動産がオフィスや商業で培ってきた6,000社近いネットワークを駆使し、地道な営業活動を通じてテナント企業の誘致を進めています。と同時に今は、自社の他部門や同業他社との交流を通じた情報収集にも力を注いでいます。

新聞報道でも「業務提携」という言葉を目にしない日はありませんが、その背後には必ず、物流の効率化に伴うコスト削減が潜んでいます。今日では各社とも物流を見直す気運が高まっており、高機能な物流施設への需要は確実に増えています。しかも、とある調査機関のレポートによれば、『MFLP 日野』のような「先進的物流施設」というのは、日本では全体の3〜4%に過ぎないとのこと。だいたい企業の契約というのは、市場動向に対応できるよう3〜5年周期となっており、次の山は2018〜19年と目されています。ただ、消費者ニーズのめまぐるしい変化を考えると、物流に関しはその契約期間も短くなっていくことも想定されるだけに、日頃の情報収集を通じていかにキーパーソンを割り出し、次のタイミングに向けて自社のこうした優位性をアピールできるか。地道な営業活動の一方で、戦略的な取り組みも進めています。加えて言えば、物流事業は立ち上がったばかりだけに、歴史ある三井不動産にあってベンチャースピリッツ旺盛で、新地開拓を担う躍動感にあふれています。ひとつでも多くのテナント企業を誘致することこそが営業の使命ですが、新しい事業だからこそ、日々の活動を通じて顧客ニーズというものをしっかりと拾い、明日の事業へと展開していくこともまた、私の役割と理解しています。

運営
相楽 祥吾
2015年入社 教育学部卒
ロジスティクス本部 ロジスティクス事業部 運営グループ

私が入社した年に『MFLP 日野』は竣工しました。10月に稼動することがわかっていたこともあり、現部署に配属された当初から、「いずれ大きな物件もおまえの担当になる」と告げられていました。新物件であり、本部としての看板施設のひとつと聞かされていただけに、新人ではありましたが私なりに、新たな門出を飾るに相応しい仕事ができるようにと、入社直後から日々の業務を通じ運営の仕事のいろはを全力で習得していきました。そして竣工検査のときにはじめて本物件を目にしたのですが、その巨大さに驚いたことを昨日のことのように覚えています。本件に関する私の業務は、竣工の1か月くらい前から始まりました。管理会社と契約を結び、警備員や設備員といった人員を配置し、当局への届け出などを進めていきました。稼動してからのコンプライアンスは運営・管理を担う私の責務ですので、消防法に基づく消火器の配置となっているか、各スペースのパーティションは建築基準法に則っているかなど、行政上、法令上の観点で一つひとつ確認しながら、開業の日を迎えました。そして現在は物件寄りの仕事とデスク寄りの仕事の二方面から、日々の業務を進めています。グループ会社を通じてではなく、私たち自らが運営を手がけるのも、前例のない対応や判断が求められることが多いからです。

例えば、本物件にはラウンジが備えてありますが、「週1回、打ち合わせとして使わせて欲しい」という相談がありました。想定していなかった申し出に、私は「ほかの利用者の迷惑にならないか」「混雑しない時間帯ならどうか」「かかる水道光熱費の負担はどうするか」「有料として時間貸ししたらどうか」と、考え得る課題を洗い出し、検討し、ルール化したことがありました。事の大小にかかわらず、新しい事業というのは蓋を開けてみないと分からないことも多く、私たちには走りながら考え判断し、ルール化し、体系化し、制度化していくことが求められています。今田、竹澤の働きによって『MFLP 日野』はハードとしての差別化が見事に図られています。そして杉山が、その部分をアピールしながら次々とテナントを誘致しています。私が手本とする先輩たちが、各持ち場で最高の仕事をしているなかで、運営を担う自分にできることは何か。カッコよく言わせてもらえば、「ソフト面での差別化の実現」だと考えています。運営というのはルールのなかで行わなければならず、ややもすれば保守的な仕事になりがち。でも、そうではなくて、ルールのなかでできる最大限を追求した先に、ここで働く人たちにとっての快適で豊かな環境が生まれるはずであり、そういうことをこそ私は制度化したいと思うのです。

上司に言われ、グッときた言葉があります。「お客様の評価を左右する、最後の満足度を握っているのは全部、運営だ」。運営の仕事の何たるかを教えられた言葉でした。そして仕事をしているなかで、営業の人たちから口々に言われる言葉があります。「俺たちができるのは、お客様を連れてくることだけ。その後の満足度を高められるのは、おまえたちだけなんだ」。私は現在、日野のほか複数の物件を担当していますが、各物件に足を運んだ際には時間の許す限り、お客様の区画をまわっています。ルールに反する部分があれば、そこは改善を依頼しますが、同時に私たちにも改善点がないかを聞いています。日野に関して言えば現在、ラウンジへの無料Wi-Fiの導入を検討中ですが、お客様の声が私たちを進化させてくれます。運営のもうひとつの重要な仕事に、収支を踏まえた年度計画があります。月々の数字をもとに作成するのですが、月日を重ねるごとにその数字が伸びています。これは決して、私たちだけの成果ではないと考えています。運営に協力し、理解を示してくれるお客様や近隣の方々、そして各自治体ほか多くの人たちの支援があればこそ。私たちは2016年3月、本部の全員でステートメントを策定しました。「ともに、つなぐ。ともに、うみだす。」。私たちは、そういう仕事をしていきたいと思っています。