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コラム

 

「SC JAPAN TODAY」 (社)日本ショッピングセンター協会
まちなか商業を巡る新たな競争の時代

「郊外化」の終息

 中心市街地商店街の衰退が言われて久しい。いわゆる「シャッター通り」である。全国商店街振興組合連合会が2006年に実施したアンケート調査によれば、全国の商店街の空き店舗率は平均で約9%に達している。
 しかし、こうした商店街空洞化の原因のひとつである中心市街地の人口減少は、一部の地域では進行が止まりつつある。例えば岩手県盛岡市や佐賀県佐賀市では市全体の人口が横這いあるいは減少する中、中心市街地の定住人口は減少から増加に転じている。
 戦後、我が国の都市は人口の増加に伴い外延部へとその都市域を拡大してきた。いわゆる「郊外化」である。しかし、国勢調査によれば都市域の拡大を示すDID(人口集中地区)面積の増加は現在ではほぼ止まっており、一方で低下を続けていたDID人口密度(都市域への集中の度合いを示す)は2000年以降上昇に転じている。
 我が国において長らく続いた中心市街地から郊外への人口の流出が止まり、郊外から中心市街地へと逆流に転じた可能性がある(いわゆる「再都市化」)。盛岡市や佐賀市では、この再都市化がいち早く始まっているのかもしれない。


高齢化・人口減少が促す再都市化

 そもそも、人口減少局面に入った我が国において、今後も引き続き郊外化が続くとは考えにくい。加えて、今後急速に進む高齢化も再都市化(まちなか居住)を促す方向に働く。
子どもが独立すれば、郊外の広い一戸建て住宅よりも、維持管理の楽な中心部のマンション住まいを選好する人が増えるだろう。
 また、高齢者にとってはクルマの運転は億劫だし危険でもある。さらに今後の資源価格上昇や環境意識の向上等も考えれば、高齢者を中心に「クルマ離れ」が起きることは充分に考えられ、これも「歩いて暮らせる」まちなか居住が選好される要因となるだろう。
 一方、まちなか居住は地方自治体等行政サイドにとっても魅力的である。人口が減少(=税収が減少)する中で拡散した郊外部に居住人口を抱え続けることは、いわば伸びきった兵站を維持するようなもので行政効率が悪いことこのうえないからだ。そのため、今後は行政サイドからも、まちなか居住促進のための種々の政策誘導が行われるものと想定される。



高齢者の消費スタイル

 このように今後まちなか居住が進むとすれば、その主役となるのは高齢者であろう。では、彼らの消費行動にはどのような特徴があるのだろうか。


    
世帯主年齢60歳未満世帯
(平均世帯人員2.89人)
世帯主年齢60歳以上世帯
(平均世帯人員2.09人)
支出額
(円)
比率
(%)
一人あたり
支出額(円)
支出額
(円)
比率
(%)
一人あたり
支出額(円)
  食料
63,263
22.16
21,890
55,739
24.11
26,669
  住居
21,517
7.54
7,445
16,445
7.11
7,868
  光熱・水道
18,595
6.51
6,434
18,438
7.97
8,822
  家具・家事用品
8,226
2.88
2,846
8,410
3.64
4,024
  被服及び履物
13,344
4.67
4,617
8,864
3.83
4,241
  保健医療
9,391
3.29
3,250
13,144
5.68
6,289
  交通・通信
41,757
14.63
14,449
23,064
9.98
11,036
  教育
15,649
5.48
5,415
878
0.38
420
  教養娯楽
30,765
10.78
10,645
25,349
10.96
12,129
  その他の消費支出
62,928
22.05
21,775
60,873
26.33
29,126
  合計
285,435
100.00
98,766
231,204
100.00
110,624
総務省「家計調査」(平成19年)より作成

 表は、総務省「家計調査」により、世帯主が60歳以上の世帯(以下「高齢世帯」という)と60歳未満の世帯(以下「普通世帯」という)の消費支出の内訳を比較したものである。
 特徴的なのは、高齢世帯では食費関係の支出の割合が高く、一人あたり支出額も大きいことである。細目をみると、特に魚介類、野菜、果物などへの支出が多く、これらの品目の一人あたり支出額は普通世帯の1.8〜2.1倍程度となっている。反面、外食への支出割合・支出額は低い。
 逆に高齢世帯の支出が少ないのが「被服及び履物」と「交通・通信」である。このうち「交通・通信」には「自動車等関係費」が含まれており、高齢世帯ではクルマの利用が少ないことが読み取れる。
 以上を総合した高齢者の消費スタイルの平均像は、「衣・食・住」のうち特に「食」にお金をかける反面、外食や衣料にはお金をかけず、クルマの利用も少ない、といったところだろうか。



「まちなか商業」を巡る競争
マックスバリュエクスプレス川口末広店

 このような消費スタイルを持つ高齢者のニーズに対応した商業―「まちなか商業」―の具体的なイメージとしては、徒歩あるいは自転車での来店を前提とした地域密着型の商圏設定のもと、価格よりも品質・鮮度・安全性を重視した食品を中心に、日用品・最寄品を主体とした品揃え、といった像が浮かんでくる。
 かつては商店街がこのまちなかにおける商業機能を担っていたのだが、その商店街の衰退によってまちなかに商業の「空白地帯」が生じているのが現状である。では、今後この空白地帯を埋めるのは誰だろうか。
現状もっとも有利なポジションにあるのはローカルな食品スーパーであろう。価格訴求の面では流通大手には及ばないものの、地域に密着しきめ細かく顧客ニーズをくみ上げるMD力では一日の長がある。
 とはいえ、流通大手もただ手を拱いているわけではない。イオングループは都市型小型スーパーの新業態「マックスバリュエクスプレス」の1号店を先頃川口市にオープンした。店舗面積は1,000m2弱、生鮮品や総菜などの食品の他、酒類・医薬品も扱う。
一方、拠点数に勝るコンビニもまた有力な存在である。例えばローソンでは、従来の若年男性中心の顧客層を主婦や高齢者にも広げるべく、生鮮品も扱う「ローソンプラス」の本格展開を開始している。
 もちろん、商店街の再生もあるだろう。高松丸亀町商店街に代表される商店街再生の成功事例(ベストプラクティス)が蓄積されつつあることに加え、政策支援メニューも充実してきているからだ。
 加えて、ネットショッピング、通販、宅配サービスといったいわゆる無店舗販売系の存在も忘れてはならない。生鮮食品も扱うネットスーパーは高齢者の利用も多い。
まちなか商業という空白地帯を巡って、さまざまな業態が入り乱れての競争が既に始まっているのである。
 高齢化と人口減少の進展に伴い、まちなかは郊外・都心商業地に次ぐ商業の第三の戦場となる。そしてそこでは、郊外における価格訴求とも都心商業地における高級志向とも異なる、まちなかならではの新たな戦略とビジネスモデルの構築が必要となるだろう。



辻田昌弘
(社)日本ショッピングセンター協会
『SC JAPAN TODAY』 2009年5月号掲載


 
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