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不動産経済ファンドレビュー グローバルレポート
SRI投資としてのマレーシア・イスラムREITと米国森林REIT


 マレーシアのREIT市場は、昨年末に15銘柄目となるPavilion RET(クアラルンプールの大型SCを資産とするREIT)が上場し、年末の時価総額は約4,000億円に拡大した。しかしながら隣接するシンガポールのREITと比べると1/5、香港REITの1/3と大きく市場規模で出遅れている。もともと人口の65%のマレー系民族がイスラム教を信仰するマレーシアでは、国家戦略としてイスラム金融を振興し、自国を「イスラム金融センター」とすべく様々な施策を講じてきており、REIT市場についてもこの例外ではない。イスラム金融はイスラム法に適った「利子の概念を用いない金融」として広く知られているが、ここマレーシアでは世界に先駆けてイスラム金融に沿ったREITの運用手法を定めた「イスラムREITガイドライン」を2005年に制定し、イスラムREITの上場を促進してきた。昨年、世界最大の上場イスラムREITとなるはずであったAxis Global Industrial REIT(ロジスティックス)が、組入れ予定資産の一部であった日本の物件が東日本大震災の影響を受けて延期になったことでも有名となった。


 イスラムREITとは、不動産の運用手法がイスラム教に遵っていなければならないREITである。マレーシアの証券取引市場であるブルサ・マレーシアが定めるこのガイドラインでは、REITが運用する不動産において、賃貸してはいけない企業・業界が定められている。これには有利子の金融機関、ギャンブル・ゲーム関連企業、酒造や養豚業者などが含まれている。既上場REITのうち、Al-‘Aqar KPJ REITについて記載すると、このREITは2006年8月より運用を開始した世界初のイスラム・ヘルスケアREITであり、医療機関への貸付を行っている。その事業内容が評価され、ドバイのIslamic Finance Newsにおいて、この年ディール・オブ・ザ・イヤーを受賞している。そのリリースによると、このREITが100%イスラムの教義・戒律であるシャリアに適合していて、投資商品としての収益性もさることながら、イスラムの視点としてSRI(社会的責任投資)に適っているという評価であり、すなわちREITへの投資がSRI投資として見なされているということである。


 イスラム金融では貸付・業務内容が、このシャリアに反していないことが必要であり、これがイスラム社会においての社会正義の基準となっている。金融事業を通してイスラム社会の発展に寄与することがイスラム金融の重要な目的となっており、イスラムREITもその運用手段の一つとして位置付けられ、定着してきているようである。


 このような視点は、成熟した米国のREIT市場でも一部当てはまる。米国の年金基金等ではその投資判断プロセスで、ESG(環境・社会・コーポレートガバナンス)要因が考慮されなければならず、一定割合でのSRI投資が実施されている。そのため米国の年金基金や大学基金などの機関投資家においてはポートフォリオ分散の一分野として、日本にはないアセットクラスである森林(Timberland)投資が近年定着している。この森林REITはNYSEに既に4社が上場済みであったが、サスティナブルな森林管理・計画植林を手掛けるREITが環境保護という観点からSRI投資の対象となってきている。我が国においても、SRI投資がREITの資産構成・運営方針に影響を与えるようになる日が訪れるかもしれない。




大竹 喜久
2012年7月15日 不動産経済ファンドレビュー グローバルレポート

 

 

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