S&E総合研究所 三井不動産 サイトマップ 三井不動産
情報発信

コラム

 

不動産経済ファンドレビュー グローバルレポート
TPPと不動産・建設産業


 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)については、先の衆議院議員総選挙においても争点の一つとして取り上げられたが、自民党に政権が代わった現時点においても日本政府による正式な参加表明の見通しは依然として不透明な状況である。

 TPP参加には様々な賛成・反対論が出ているが、不動産・建設産業においてはそれほど大きな議論とはなっていない。しかし関税撤廃などの自由貿易についての定めに限定される従来のFTA(自由貿易協定)と異なり、TPPはサービス貿易、投資、知的財産権、政府調達など21分野(日本政府の分類)にわたる包括的な協定であり、本業界においても影響を被る可能性は否定できない。また、日本政府が直接交渉に参加しているわけではないので、現在交渉の論点がどこにあるかも正確に掌握されているわけではない。

 この21項目の中で不動産業に最も関連しそうな分野は、投資分野であろう。これは内外投資家の無差別原則(内国民待遇、最恵国待遇)、投資に関する紛争解決手続き等について定める分野である。外資の出資規制の緩和・撤廃を求めたり、投資対象に対する政府による不当な扱い等に対してISDS(投資家対国家の紛争解決;Investor State Dispute Settlement)条項と呼ばれる問題解決手段を、あらかじめ定めることなどが議論されている。不動産業のグローバル展開においても、こういった投資にかかるグローバルスタンダードが策定されることは重要であろう。

 建設産業では、政府調達(公共工事発注)の問題が課題として認識されている。仮に我が国がTPPに参加した場合には、海外において日本企業の公共工事への参画が容易になることがありうる半面、国内公共工事にも影響を及ぼす可能性がある。しかし我が国の場合、海外からの建設業者の参入については既に、WTO(世界貿易機関)政府調達協定(GPA)に則って、一定額以上の公共工事を開放しているが、現実には海外建設業者の参入は限定的であるという状況である。海外での受注の幅が広がるメリットの方が大きいといえよう。

 また、サービス分野においても(1)越境サービス、(2)商用関係者の移動が関連する課題である。前者は国境を超えるサービスの提供(サービス貿易)に対する無差別待遇や数量規制等の貿易制裁的措置に関するルールを定めて、市場アクセスを改善するものである。不動産・建設業に関わるサービスの提供においても、内国事業者だけが参入できるといった非関税障壁が撤廃されることが予期される。また、後者の商用関係者の移動については貿易・投資等のビジネスに従事する人の入国及び一時的な滞在の要件や手続き等に関するルールを定めるものであり、グローバル化が進む中、人材のスムーズな交流が進むことで関連不動産ビジネスの活性化が進むものと思われる。また、一部懸念されている単純労働者の我が国への入国の問題については、TPPの問題というよりも入国管理法の問題であり杞憂と考えられる。

 不動産業はそもそも国内産業の景気の変動により業績が左右される産業である。特にオフィスビル事業においては、いわゆる「六重苦」にあえぐ製造業の海外移転が続けば、日本国内のオフィス需要の減少による市場悪化も想定される。こういった側面からも通商条件でイコールフィッティングを目指すTPPの動きには注視する必要があるだろう。




大竹 喜久
2013年2月15日 不動産経済ファンドレビュー グローバルレポート


 
 

調査研究報告
寄稿記事
刊行物
ケアデザインネット
あなたを想うことからページの先頭へ
copyright 2015 Mitsui Fudosan Co., Ltd. All Rights Reserved.
三井不動産のプロジェクト