S&E総合研究所 三井不動産 サイトマップ 三井不動産
情報発信

コラム

 

ストック余剰の時代

 

 東洋経済新報社の調査によれば、全国の店舗面積千u超の小売店舗(いわゆる大型小売店)の店舗面積の合計が今年初めて1億uを超えたそうである。一方、経済産業省の「平成19年商業統計」によれば小売業の売場面積の全国総計は約1.5億u。異なる統計で調査時期も異なるが、店舗面積ベースで見てざっと3分の2が大型小売店という勘定になる。

 

 経産省の別の調査によれば、大型小売店は過去10年間の平均で毎年約334万uが新設される一方で、毎年約47万uが廃業(撤退)している。大型小売店が商店街などの小規模小売店を侵食しつつ成長する時代から、大型小売店同士が競合する時代へと移りつつあるようだ。
 大型小売店の撤退は特に地方都市の中心市街地で発生するケースが多く、空き店舗や空地として長期間放置されることも少なくない。こうした状態が続くことは周辺住民の生活や商売に支障をきたすということもあって、地元自治体が空き店舗の再生・活用に乗り出すケースも見られる。群馬県前橋市の「前橋プラザ元気21」もそのひとつである。

 前橋プラザ元気21は04年に撤退した百貨店・西武の土地建物を前橋市が買い取って07年にオープンさせたもので、地階には周辺住民からの要望が強かった食品スーパーを誘致し、1階から上には市役所のサービス窓口や公民館、ホール、こども図書館、子育て広場などを配置し、住民向けサービスの提供と住民交流のための拠点として整備を進めてきた。またこの10月には別館の1階と地階に前橋市初となる市立美術館「アーツ前橋」=写真=をオープンさせたところである。
 アーツ前橋は地元ゆかりの芸術家から若手の現代作家まで多彩な作品の展示に力を入れており、オープン後1カ月の来館者数は延べ1万2千人と好調なスタートを切った(年間目標5万人)。
 アーツ前橋は地域の芸術文化の拠点であるとともに、まちのにぎわいを創出する役割も期待されており、1階をガラス張りにして建物外部から見えるところにカフェやショップ、アーカイブ(資料コーナー)などを配置し、さらに1階部分の展示室への入館を無料とするなど、歩行者が気楽に立ち寄れるような「開かれた」雰囲気を演出している。
 我が国の住宅の総数は既に世帯総数を大きく上回り、空き家の数は757万戸と住宅総数の13%に達しているが、住宅のみならず商業施設やオフィスビルなどの業務用不動産についても、特に地方都市では余剰感が強まりつつある。

 人口減少に加えて資源制約、環境制約、あるいは政府・自治体の財政制約などを踏まえるならば、従来のスクラップ・アンド・ビルド型ではなく、既存の建物をコンバージョン(用途転用)、リノベーション(改修)しながらこうした余剰建物を再活用する手法が、今後は増加するだろう。その際に芸術や文化が地域のにぎわい創出の起爆剤となりうるかどうか。アーツ前橋の今後が注目される。

 

 なお、余談ではあるが、「群馬名物カカア天下とからっ風」とよく言われるが、これは群馬の女性(奥さん)は気が強いという意味ではないらしい。群馬では昔から養蚕が盛んであり、養蚕の担い手が女性であったことから奥さんがけっこうな収入を稼いでいたそうで、「カカア天下」というのは「うちのカカアは天下一の働き者」という意味なのだそうだ。

 とはいえ、奥さんの稼ぎが多ければそれだけ家庭内での発言権も増すだけに、結局は同じことなのかもしれないが。



辻田昌弘
2013年12月12日 アンテナ(三友新聞)


 
 
調査研究報告
寄稿記事
刊行物
ケアデザインネット
あなたを想うことからページの先頭へ
copyright 2015 Mitsui Fudosan Co., Ltd. All Rights Reserved.
三井不動産のプロジェクト